
1. 歌詞の概要
「Who Can Say」は、イギリスのオルタナティブ・ロックバンドThe Horrorsが2009年にリリースした2ndアルバム『Primary Colours』に収録された楽曲である。このアルバムは、彼らの音楽性を劇的に進化させた作品として高く評価され、ポストパンクやシューゲイザー、クラウトロックの影響を色濃く反映している。「Who Can Say」は、その中でも特に印象的な楽曲の一つであり、The Jesus and Mary ChainやJoy Divisionを彷彿とさせるサウンドが特徴的だ。
歌詞の内容は、別れを告げる冷淡な視点と、そこに潜む内なる感情の葛藤を描いている。タイトルの「Who Can Say(誰が言えるだろう)」というフレーズは、未来の出来事や人の気持ちの移り変わりは予測できないというテーマを示唆している。
2. 歌詞のバックグラウンド
The Horrorsは、デビューアルバム『Strange House』(2007年)でガレージパンクやホラーパンク的なサウンドを展開していたが、2ndアルバム『Primary Colours』ではより洗練された音楽性へとシフトした。その中で「Who Can Say」は、80年代ポストパンクの影響を強く受けた楽曲として、特にThe Jesus and Mary Chainの「Just Like Honey」に似たリズムやサウンドが注目された。
プロデューサーにはPortisheadのGeoff Barrowが起用され、シューゲイザー的な要素を取り入れつつ、ダークで深みのある音作りが施された。「Who Can Say」は、アルバムの中でも比較的シンプルな構成を持ちながら、力強いビートとエモーショナルなボーカルが際立っており、ライブでも人気の高い楽曲となった。
3. 歌詞の抜粋と和訳
原歌詞(英語)
I never meant for you to get hurt
And how I tried, oh how I tried
和訳(日本語)
君を傷つけるつもりはなかった
そして俺は努力した、本当に努力したんだ
原歌詞(英語)
I have a love, but love is gone
I have a love, but it’s over now
和訳(日本語)
俺には愛があった、でもその愛は消えてしまった
俺には愛があった、でも今はもう終わった
このように、歌詞は別れの瞬間の冷淡な言葉と、そこに滲む感情のコントラストを描いている。特に「I have a love, but love is gone(俺には愛があった、でもその愛は消えてしまった)」というフレーズは、無情でありながらもどこか哀愁を感じさせる。
4. 歌詞の考察
「Who Can Say」の歌詞は、感情を押し殺しながらも、その裏に深い葛藤を抱えている人物の視点で描かれている。主人公は、「君を傷つけるつもりはなかった」と言いながらも、最終的には「愛はもう終わった」と冷たく突き放す。
この楽曲のハイライトは、後半に登場するスポークンワード(語りのパート)である。ここでは、次のようなセリフが語られる。
原歌詞(英語)
And when I told her I didn’t love her anymore
She cried
和訳(日本語)
そして俺が「もう君を愛していない」と言ったとき
彼女は泣いた
この部分は、まるで詩を朗読するようなスタイルで歌われ、シンプルな言葉でありながらも、感情的な重みを持っている。特に、「She cried(彼女は泣いた)」というフレーズは、短いながらも強烈な余韻を残し、楽曲全体のクールなトーンと対比を生み出している。
また、楽曲のタイトル「Who Can Say」は、「未来に何が起こるかは誰にも分からない」という不確定な状況を示唆しており、愛や関係性の移り変わりの儚さを象徴している。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Just Like Honey” by The Jesus and Mary Chain
「Who Can Say」と似たドラムパターンと、淡々とした語りのようなボーカルスタイルが特徴的なポストパンクの名曲。 - “Love Will Tear Us Apart” by Joy Division
愛の崩壊を描いた名曲で、冷淡なボーカルとメロディの対比が「Who Can Say」と共通する部分がある。 - “Under Control” by The Strokes
失われた愛をテーマにした楽曲で、クールなサウンドと感情的な歌詞が「Who Can Say」と通じるものがある。 - “Sometimes Always” by The Jesus and Mary Chain ft. Hope Sandoval
男女の別れを描いたデュエットソングで、「Who Can Say」のスポークンワードパートを彷彿とさせる要素がある。
6. 「Who Can Say」の影響と意義
「Who Can Say」は、The Horrorsの音楽的な進化を示す重要な楽曲の一つであり、バンドが単なるガレージパンクバンドから、より洗練されたポストパンク/シューゲイザー的なアプローチへと移行したことを象徴している。
特に、The Jesus and Mary ChainやJoy Divisionといった80年代ポストパンクの影響が色濃く感じられる楽曲でありながら、単なるオマージュではなく、The Horrorsらしいモダンなアレンジが施されている点が特徴的である。
また、スポークンワードのパートは、まるでニヒルな詩を語るかのようなスタイルで、感情を抑えたクールな語り口が楽曲の雰囲気を際立たせている。この手法は、1980年代のポストパンクやニューウェーブの影響を受けつつ、The Horrors独自のスタイルとして確立されている。
『Primary Colours』というアルバム自体が、The Horrorsのキャリアの中でも特に重要な作品であり、その中でも「Who Can Say」は、彼らの音楽的変遷を象徴する楽曲として、多くのリスナーに愛され続けている。
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