発売日: 1987年7月21日
ジャンル: ハードロック、ヘヴィメタル
欲望と破壊の美学——Guns N’ Rosesが放ったロックンロールの最終兵器
1987年、ロック史において最も危険で破壊的なアルバムのひとつが誕生した。Guns N’ Rosesのデビュー作『Appetite for Destruction』は、ロックンロールの持つ生々しさ、暴力性、セクシャリティ、そして退廃的な美学を完璧に詰め込んだ作品であり、今なお「史上最高のデビューアルバム」のひとつとして語り継がれている。
当時のロックシーンは、華美なグラム・メタルが台頭し、キラキラしたロックバンドがMTVを席巻していた。しかし、Guns N’ Rosesは違った。彼らはストリートの荒々しさ、ドラッグまみれの狂気、そしてロックの危険な側面をそのまま体現していた。 このアルバムは、まるで酔いどれたまま夜のハリウッドをさまようような感覚を覚えさせる。
音楽的には、AerosmithやRolling Stonesのブルース・ベースのロックに、Sex Pistolsのパンク精神、そしてメタリックなギターリフの重厚さが融合したスタイル。スラッシュのスライドギター、イジー・ストラドリンのタイトなリズムプレイ、ダフ・マッケイガンのパンキッシュなベースライン、スティーヴン・アドラーのスウィング感のあるドラム、そしてアクセル・ローズの唯一無二のシャウトが一体となり、ロックンロールの究極形が誕生した。
しかし、発売当初はそこまで大きな注目を集めなかった。転機となったのは、1988年に「Sweet Child O’ Mine」がシングルとしてヒットしたこと。これによりアルバムは全米1位を記録し、Guns N’ Rosesは一気にトップバンドへと躍り出た。
全曲レビュー
1. Welcome to the Jungle
アルバムの幕開けを飾る、まさにロックンロールの怪物。アクセルの「You know where you are? You’re in the jungle, baby! You’re gonna die!」という絶叫は、ロック史に残る名フレーズ。イントロのギターリフからすでに圧倒的なエネルギーを感じさせる。
2. It’s So Easy
ダフ・マッケイガンのパンキッシュな影響が色濃い楽曲。アクセルの低音ボーカルと、スラッシュの歪んだギターが特徴的で、アルバムの中でも特にダークな雰囲気を持つ。
3. Nightrain
ハードに駆け抜けるロックンロール・ナンバー。「Nightrain」とは、安価なワインの名前で、バンドがまだ無名時代に飲みまくっていたもの。歌詞はその破滅的な生活を描いている。
4. Out Ta Get Me
「俺を捕まえられるもんなら捕まえてみろ！」という挑戦的なテーマのパンク・ロック・チューン。アクセルの攻撃的なボーカルが炸裂する一曲。
5. Mr. Brownstone
ヘロイン中毒について歌った、ファンク・リズムが特徴的な楽曲。スラッシュとイジーの掛け合いギターが絶妙で、バンドの演奏力の高さが際立つ。
6. Paradise City
「Take me down to the paradise city, where the grass is green and the girls are pretty」というフレーズが象徴的な、アンセム的な楽曲。後半に向けての疾走感は、ライブでも最高の盛り上がりを生む。
7. My Michelle
ロックンロール的なストーリーテリングが秀逸な曲。実際にメンバーの友人だった女性をモデルにしており、ダークでリアルな歌詞が印象的。
8. Think About You
比較的ポップな雰囲気を持つ楽曲で、イジー・ストラドリンの影響が強い。疾走感のあるロックンロール・チューン。
9. Sweet Child O’ Mine
アルバム最大のヒット曲であり、ロック史に残るラブソング。スラッシュのイントロのギターリフは、もともとリハーサルの遊びの中で生まれたものだった。アクセルのエモーショナルなボーカルと、壮大なギターソロが融合し、時代を超えて愛される名曲となった。
10. You’re Crazy
元々はスローテンポのバージョンがあったが、本作では超高速のパンクロック・チューンとして収録。ライブでも定番の楽曲。
11. Anything Goes
レイドバックしたグルーヴが特徴的な一曲。セクシャルなテーマを扱っており、アルバム全体の破天荒な雰囲気を補完している。
12. Rocket Queen
アルバムの最後を飾る楽曲で、前半と後半で曲調が大きく変わる構成が特徴。歌詞には、バンドが抱える野心や苦悩が滲んでいる。後半の「I see you standing, standing on your own」というフレーズは、まるで大団円のように響く。
総評
『Appetite for Destruction』は、ロックンロールのエッセンスを凝縮した、完璧なアルバムである。グラムメタルの華やかさが支配していた80年代のロックシーンに、ストリートのリアリティを叩きつけることで、Guns N’ Rosesは一気に時代の寵児となった。
アクセル・ローズのカリスマ性、スラッシュの伝説的なギタープレイ、そしてバンド全体のダーティで危険なエネルギーが、このアルバムを「歴史的名盤」へと押し上げた。 これは単なるヒット作ではなく、ロックンロールの持つすべての魅力を詰め込んだ一枚であり、リリースから30年以上経った今でも、その衝撃は色褪せることがない。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Aerosmith – Rocks（1976年）
Guns N’ Rosesに多大な影響を与えたハードロックの名盤。 - AC/DC – Highway to Hell（1979年）
シンプルでパワフルなロックンロールの極致。 - Mötley Crüe – Shout at the Devil（1983年）
L.A.メタルの象徴的アルバム。 - The Rolling Stones – Exile on Main St.（1972年）
ガレージ的な荒々しさとブルースロックの融合。 - Velvet Revolver – Contraband（2004年）
スラッシュとダフが再び組んだ、Guns N’ Rosesのスピリットを受け継ぐ作品。
『Appetite for Destruction』は、ロックンロールの「破壊」と「欲望」を象徴する、永遠の名盤である。
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