アルバムレビュー：Degüello by ZZ Top

アルバムレビュー

2025.04.19

発売日: 1979年11月19日
ジャンル: ハードロック、ブルースロック、ニューウェイヴ・ブギー

概要
全曲レビュー
総評
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概要

『Degüello』は、ZZ Topが1979年に発表した6作目のスタジオ・アルバムであり、70年代の泥臭く骨太なサザン・ブギーから、より洗練されたスタイルへとシフトした“転換点”として知られている。
タイトルの「Degüello（デグエロ）」はスペイン語で“首をかき切る”という過激な意味を持ち、テキサスの戦い（アラモの戦い）でメキシコ軍が吹いたとされるラッパの合図にも由来する。
つまり本作は、バンドが過去と決別し、新たな時代に挑むという“宣戦布告”のような意味を秘めている。

前作『Tejas』での実験性を経て、本作では新たにホーン・セクションやファンクの要素を導入し、ニューウェイヴ以降の感覚を取り入れながらも、ZZ Topらしいグルーヴとユーモアを維持。
このバランス感覚が、1980年代の大成功作『Eliminator』へと続く布石となっている。

全曲レビュー

1. I Thank You

サム＆デイヴのソウル・クラシックをZZ Top流にアレンジしたカバー。
原曲のグルーヴを残しつつ、ギターリフとビリー・ギボンズのヴォーカルが南部風味を加えている。
本作の冒頭にふさわしい“モダン・ブルースソウル”。

2. She Loves My Automobile

ファンキーかつ軽快なスウィング・チューン。
“彼女は俺の車が大好き”というユーモラスなテーマに、ホーンのリフと跳ねるベースが華を添える。

3. I’m Bad, I’m Nationwide

ZZ Topらしいクールなスロー・ブギー。
“俺はワルで全米規模”というタイトル通り、ラフな自信とスタイルをにじませたロック賛歌。
ビートの間の“余白”が極めて気持ち良く、ドライブミュージックとしても人気。

4. A Fool for Your Stockings

ミッドテンポのブルース・バラード。
“ストッキングに夢中な愚か者”というセクシャルでセンチメンタルな語りが、ギターの泣き節と共にじわじわ沁みる。
本作中もっとも“夜の色気”を感じさせる楽曲。

5. Manic Mechanic

エフェクト加工されたロボットボイスとノイジーなギターが交錯する、ZZ Top流“サイバネティック・ファンク”。
“マニアックな整備士”という奇妙な語りと演奏が融合し、バンドの変化志向を象徴する異色曲。

6. Dust My Broom

エルモア・ジェイムスのブルース・スタンダードをZZ Top流にカバー。
原曲のスライドギターをヘヴィな音像でリメイクし、伝統と革新の橋渡し的役割を果たす。

7. Lowdown in the Street

ファンキーなベースとホーンセクション、そして粘り気のあるギターが絡む、都会的かつ泥臭いブギー。
“街の底辺”という視点で描かれる歌詞が、ブルースとR&Bの文脈を再構築する。

8. Hi Fi Mama

まさに“ハイファイ時代のママ”をテーマにした、ノリ重視のパーティーチューン。
スピーディでカラフルなサウンドは、ZZ Topが1980年代を目前にアップデートされていることを実感させる。

9. Esther Be the One

本作を締めくくる、メロウでややサイケなロック・バラード。
“エスター”という女性をテーマに、愛と祈りが交差するような浮遊感のあるアレンジが印象的。
バンドの叙情性が静かに結実する佳曲。

総評

『Degüello』は、ZZ Topがブルースとロックの境界線上に立ちつつ、1970年代の遺産と1980年代の未来を接続しようとした重要なアルバムである。
ギターリフ中心のブギー・ロックに、ホーン、エフェクト、ファンク、ニューウェイヴ的要素を大胆に取り入れたその手腕は、“進化するバンド”としてのZZ Topを確立するきっかけとなった。

その結果、本作は音楽的な冒険とキャッチーさが共存するバランスの良い仕上がりとなり、ファン層を広げることにも成功した。
“男臭さ”“遊び心”“都会的な洗練”が共存したこのアルバムは、ZZ Topの柔軟性とポップセンスの高さを証明する一枚であり、まさに“変わらぬ芯を持ちつつ、形を変える”という南部流の進化論が体現されている。