
楽曲の概要
「23’s A Baby」は、Sabrina Teitelbaumによるソロ・プロジェクトBlondshellが2025年に発表した楽曲で、2作目のアルバム『If You Asked For A Picture』に収録されている。アルバム発売に先駆けて4月3日に公開され、Partisan Recordsは本曲をアルバムの「metaphorical beating heart(比喩的な心臓部)」と紹介した。プロデュースと録音は、2023年のデビュー作『Blondshell』から引き続きYves Rothmanが担当している。
演奏にはTeitelbaumのボーカル、Sam Stewartのギター、Bosh Rothmanのドラムとパーカッション、Joe Kennedyのベース、ギター、オルガン、チェレスタなどが使われている。Blondshellらしい1990年代オルタナティヴ・ロックのギターを土台にしながら、この曲では1960年代のガール・グループ、とりわけThe Ronettesを意識したポップなコーラスが加わる。親から子へ問題が引き継がれるという重いテーマを、あえて覚えやすく明るい曲にしたことが重要である。
歌詞の概要
歌詞が扱っているのは、若くして親になった人物と、その子どもとの複雑な関係である。タイトルの「23歳なんてまだ子どもだ」という考えは、単に若すぎる出産を批判するためのものではない。Teitelbaum自身はこの曲について、20代はまだ自分自身を理解し、過去の傷を処理している途中なのに、その時期に子どもを持てば「子どもが子どもを育てる」ような状態になり、未解決の問題が次の世代へ引き継がれていくことがあると説明している。
語り手は親に対してかなり強い怒りを抱えている。相手の悪い習慣によって傷つけられ、その人物が語る過去についても信用していない。それでも完全に関係を断ち切ることはできず、まだ相手を必要としている。この「傷つけられたのだから嫌いになればいい」という単純な結論へ進めないところが重要である。親への怒りと、親を必要とする子どもの感情が同じ場所に残っている。
曲の後半では、身体的特徴や幼い頃の記憶まで親子の関係へ入り込んでくる。自分の身体の一部に相手との共通点を見つけることで、語り手は親を拒絶したくても、自分自身の中からその人物を完全には取り除けないことに気づく。そこで問題になるのは、誰が悪かったかを決めること以上に、傷つけられた側もまた相手から何かを受け継ぎ、同じ間違いを繰り返す可能性があるということだ。
制作背景・時代背景
Blondshellは2023年のセルフタイトル作でデビューし、1990年代オルタナティヴ・ロックを思わせる大きなギターと、依存、恋愛、自己嫌悪などを率直に扱うTeitelbaumの歌詞によって注目を集めた。『If You Asked For A Picture』ではその方向を維持しつつ、より大きなロック・サウンドやバラード、異なる時代のポップスまで使える範囲を広げている。Teitelbaumは制作期にR.E.M.などをよく聴き、大きなロックソングと静かな曲の両方を作ることへの自由を感じたと語っている。
「23’s A Baby」では、意外にもThe Ronettesの「Be My Baby」が制作上の参照点になった。Teitelbaumによれば、Yves Rothmanとプロダクションを考える中で、タイトルに「Baby」が入っていることもあって「Be My Baby」のような音にしようという方向が生まれた。これまでBlondshellではあまり使ってこなかったモータウンや1960年代ガール・グループ的な発想を、オルタナティヴ・ロックへ取り込んでいる。
Teitelbaumはまた、曲の内容が重いため、音楽には童謡のような感覚を持たせ、制作そのものを楽しいものにしたかったと説明している。この判断によって「23’s A Baby」は告白的な暗いバラードにならなかった。親から受けた傷を歌いながら、子どもでも覚えられそうな単純な言葉とメロディを使う。その形式自体が、曲の中に「子ども」という視点を残しているのである。
歌詞の抜粋と和訳
この曲では「23歳」「baby」という言葉に加え、親の悪い習慣、受け継いだ身体的特徴、幼少期の記憶、敵か味方かを決められない感覚が重要なモチーフになっている。タイトルでは「baby」が、23歳という若い親と、その親が産んだ実際の赤ん坊という二つの意味を結びつける。
特に重要なのは、語り手が相手を「敵」と断定しないことだ。傷つけられたという認識は明確なのに、その人物をどう位置づけるべきかはまだ決められない。怒りを持つことと、相手の未熟さを理解することが両立する。その曖昧さが、この曲を単純な親への告発から一段複雑なものにしている。
サウンドと歌詞の考察
「23’s A Baby」の最大の仕掛けは、歌詞の重さに対して音楽が驚くほど親しみやすいことである。テンポは軽快で、ドラムは曲を前へ押し、ギターもBlondshellの初期作品にある重いグランジ的な歪みだけには頼らない。そこへ明るいコーラスが重なるため、最初に受ける印象はむしろ爽快なギターポップに近い。親子関係の傷や世代間の問題を扱う歌とは思えないほど、身体的には気持ちよく進んでいく。
特にサビは意図的に単純である。短い問いを繰り返すだけなので、一度聴けばすぐ覚えられる。その作りにはTeitelbaumが言う「nursery rhyme=童謡」の感覚があり、複雑な家庭の問題を子どもでも口ずさめそうな形式へ落とし込んでいる。この単純さは歌詞を軽くするのではなく、むしろ不気味な効果を生む。「なぜそんなに若くして子どもを持ったのか」という人生規模の問いが、子どもの素朴な疑問のように何度も返ってくるからである。
The Ronettes的なガール・グループの影響も、このサビで特に強く感じられる。バック・ボーカルが一枚の壁のように重なり、Teitelbaumのリードを包むことで、個人的な告白が大きなポップソングへ変わる。ただし1960年代のガール・グループがしばしば恋愛への憧れを劇的に歌ったのに対し、ここで歌われるのは家族の中で受け継がれる傷である。甘く懐かしい音楽の形式へ、その形式が本来想定していなかったような現代的な心理を入れている。
ヴァースではサビよりもギターとリズム隊の輪郭がはっきりし、Teitelbaumの言葉を前へ出す。彼女の歌唱は感情を大げさに演じるのではなく、かなり会話に近い。これはBlondshellの作詞方法とも関係しており、Teitelbaumは自分の歌詞について、普段なら友人や家族に言えないことを会話のような言葉で書くと説明している。「23’s A Baby」でも文学的な比喩を大量に使うより、本人へ直接ぶつけるような短い文章が中心になる。
その直接性に対して、曲が進むほど感情は単純ではなくなっていく。最初は親の失敗を指摘する歌に聞こえるが、語り手自身も同じ間違いを繰り返す可能性を認め、身体には相手から受け継いだ特徴があることにも気づく。ここで「あなたが悪い、私は被害者だ」という境界が崩れる。Teitelbaum自身、この曲を「finding compassion」、つまり相手への理解や思いやりを見つけることについての歌だと説明している。
ただし、その「思いやり」は親を免罪することではない。曲中の語り手は、自分が受けた傷について怒る権利も手放していない。相手も若く、未熟で、傷を抱えていたと理解することと、その相手によって自分が傷つけられたことを認めるのは別の問題である。「23’s A Baby」が感情的に強いのは、この二つをどちらか一方へ整理しないからだ。理解したから許す、傷ついたから憎む、という簡単な結論を避けている。
この曖昧さは『If You Asked For A Picture』全体の方向ともつながっている。Teitelbaumは2作目について、人間関係を以前ほど白黒で見なくなったことを語っている。「23’s A Baby」では、その変化が家族という逃げにくい関係に持ち込まれる。恋人なら別れることができても、親から受け継いだ身体や記憶、行動の癖は簡単には捨てられない。だから曲は怒りを爆発させて終わるのではなく、同じサビへ戻り続ける。
その反復もテーマに合っている。世代間の傷は、一度原因を理解しただけでは消えない。親が若い頃に抱えていた問題が子へ渡り、その子が大人になって同じ行動を取る可能性がある。曲が同じ問いを明るいメロディで何度も繰り返すことは、その循環を思わせる。しかし音楽自体には閉塞感より楽しさがあるため、完全な悲観にもならない。問題を認識し、怒りと理解の両方を持てること自体が、同じ循環から少し外へ出る可能性として聞こえるのである。
この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
「What’s Fair」 by Blondshell
同じ『If You Asked For A Picture』で家族関係を扱った曲。「23’s A Baby」が親の未熟さへの理解まで進もうとするのに対し、こちらでは母親との関係に残る怒りや矛盾がより鋭いギターロックとして表れる。
「Joiner」 by Blondshell
デビュー作から、Blondshellの基本となる1990年代的なオルタナティヴ・ロックと大きなポップ・フックを味わえる曲。重い心理を扱いながら、サビでは一気に開けるTeitelbaumの作曲感覚が共通している。
「Be My Baby」 by The Ronettes
「23’s A Baby」のプロダクションでTeitelbaumとYves Rothmanが参照した曲。大きなリズムと重層的なコーラスによって恋愛感情を巨大化する1960年代ポップの方法が、Blondshellでどう変形されたかを比較できる。
「Seether」 by Veruca Salt
1990年代オルタナティヴ・ロックの歪んだギターと、驚くほどキャッチーな女性ボーカルを組み合わせた代表曲。荒々しい音とポップなメロディを対立させずに使う点でBlondshellにつながる。
「Kyoto」 by Phoebe Bridgers
親との複雑な関係を扱いながら、音楽は軽快で明るく進んでいく曲。怒り、愛情、失望を一つの感情へ整理しない点でも「23’s A Baby」と近く、暗い題材をアップテンポなサウンドへ変換する方法を比較できる。
まとめ
「23’s A Baby」の中心にあるのは、親から傷つけられた経験を理解することと、その親自身も若く未熟だったと理解することは両立する、という複雑な視点である。23歳の親を「まだ子ども」と呼ぶタイトルは批判であると同時に、世代間の傷がなぜ繰り返されるのかを考える入口にもなっている。Blondshellはその重さを暗いバラードにはせず、The Ronettesを参照したガール・グループ風のコーラス、軽快なリズム、童謡のように単純なサビへ変換した。怒りを消さずに相手への理解を増やすという歌詞の変化を、親しみやすいポップソングの中で成立させた、『If You Asked For A Picture』の中心的な一曲である。
参照元
- Partisan Records「Blondshell’s newest single」
- Blondshell公式「23’s A Baby」リリックビデオ/オーディオ・クレジット
- FLOOD Magazine「Blondshell Breaks Down the Heavy Themes of Her Second Album, If You Asked for a Picture」
- The Line of Best Fit「Nine Songs: Blondshell」
- Qobuz Magazine「Blondshell: Echoes Of A Bygone Era」
- Women In Pop「Interview: Blondshell – If You Asked For a Picture」

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