アルバムレビュー：0200 AM by Phoebe Green

発売日: 2016年6月10日
ジャンル: インディーポップ、ベッドルームポップ

概要

『02:00 AM』は、Phoebe Greenが2016年に自主リリースした初期作品であり、彼女の音楽的原点を色濃く映し出すアルバムである。

マンチェスター出身のPhoebe Greenは、本作のリリース当時まだ10代でありながら、すでに驚くほど成熟したソングライティングと、繊細な感情表現を見せていた。
本作は、後年の洗練されたポップサウンドとは異なり、より生々しく、DIY的な温もりに満ちたベッドルームポップの趣を持つ。

制作は、主に彼女自身の手によるものであり、ギターとボーカルを中心にしたシンプルなアレンジが多い。
そのため、リスナーは彼女の純粋な声と、当時の等身大の心情に直接触れることができる。

『02:00 AM』というタイトルは、深夜の孤独と、心の内に湧き上がる複雑な感情を象徴している。
まだ完成されていない、だからこそ美しい「未完成の自分」をまっすぐに捉えたこの作品は、Phoebe Greenというアーティストの本質を知るうえで欠かせない一作となっている。

シンプルなアコースティックギターと囁くようなボーカル。
若さゆえの不安と希望を、夢見るように綴ったオープニングトラックである。

理想と現実のギャップを描いたナンバー。
メロディラインにはどこかほろ苦い郷愁が漂う。

経済的な不安をテーマにしながらも、ユーモラスなタッチを忘れない。
ベッドルームポップらしい手作り感が魅力的である。

自己犠牲的な愛を皮肉交じりに歌い上げる楽曲。
エマ・フォスターのボーカルには、すでに鋭い感情のひだが刻まれている。

恋愛の失敗を淡々と受け止める、静かなバラード。
簡素な編曲が、逆にリリックの痛みを際立たせている。

心の内をストレートに吐露するナンバー。
ざらついたギターと素朴なリズムが、深夜の独白のようなリアリティを生んでいる。

タイトル通り、不安定な自己認識を率直に表現。
飾らないリリックと、ぎこちないほど正直なボーカルが胸を打つ。

アルバムタイトル曲。
孤独と焦燥を包み隠さず吐露するこの曲は、アルバムのエモーショナルな核となっている。
静寂の中に浮かぶ小さな叫びのような、深い余韻を残す一曲である。

『02:00 AM』は、Phoebe Greenというアーティストの「始まり」の瞬間を切り取った、極めて純粋なアルバムである。
派手なプロダクションも、洗練されたアレンジもない。
しかしだからこそ、彼女の生の感情と、アーティストとしての根源的な衝動がストレートに響いてくる。

10代特有の不安、憧れ、孤独、怒り。
それらを飾ることなく、しかし時折ユーモアを交えながら歌う姿には、後の『Lucky Me』で見せるような自己認識の萌芽がすでに感じられる。

音楽的な完成度では後年の作品に及ばないかもしれない。
だが、『02:00 AM』には、完成された音楽では得難い、「不完全であることの美しさ」が確かに宿っている。

本作は、Phoebe Greenのファンはもちろん、すべての「夜中の感情を知っている」リスナーに、一度は耳を傾けてほしい作品である。

『02:00 AM』は、Phoebe Green自身による自主制作であり、リビングルームや小さなスタジオを中心にレコーディングされた。
多くの楽曲は、ほぼ一発録りに近い形で収録され、後からの編集や修正は最小限に留められている。

使用された機材も、ごく基本的なものであり、ギター、シンプルなミキサー、そして家庭用マイクロフォン程度であったという。
しかし、こうした限られた環境が逆に、アルバムに独特の親密さと生々しさを与える結果となった。

Phoebe自身は後年、「当時は完璧じゃなかったけど、それが私にとってすごく大事だった」と語っており、本作が彼女にとっても特別な意味を持つ作品であることが伺える。