
1. 歌詞の概要
「With You」は、イギリスのインディーロック・バンド The Subways(ザ・サブウェイズ)が2005年にリリースしたデビュー・アルバム『Young for Eternity』に収録されたバラード寄りの楽曲であり、同作の中でもひときわ感情の深さと誠実さが際立つラブソングである。
疾走感と衝動に満ちた「Rock & Roll Queen」や「Oh Yeah」とは異なり、「With You」は抑制されたテンポとメロディアスな展開のなかで、恋人との時間がもたらす静かな喜びと切実な願いを描いている。タイトルの「With You(君と一緒に)」が示すとおり、この曲の主題は“共にいること”、それ自体の尊さである。
語り手は、恋人と過ごす何気ない時間、共有する沈黙、ささやかな日々に対して深い愛着を抱いており、その感情は過去ではなく現在に根差している。しかしそこには、未来への不安や、永遠ではないことへの予感も潜んでおり、“いまこの瞬間がすべて”という切実な感情が全編に漂っている。
2. 歌詞のバックグラウンド
The Subwaysは、当時の恋人同士だったフロントマンのビリー・ランとベーシストのシャーロット・クーパーの関係性を作品に反映させることが多く、「With You」もその例に漏れない。
この曲は、派手な情熱ではなく、日々の中で育まれる穏やかな愛情を描くものであり、バンドの持つ“若さの爆発力”とは異なる一面を示している。
『Young for Eternity』というアルバムタイトルが暗示するように、この作品全体が“永遠に若くあること”への願いをテーマとしており、「With You」はその中で最も時間の流れと感情の儚さを意識した楽曲である。
また、ビリーとシャーロットのリアルな恋人関係があったからこそ、この曲に込められた“同じ時間を生きることの奇跡”は、決してフィクションではなく、実感としてリスナーの胸に響くものとなっている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
I’m in love with you
君に恋をしてるんだ
直球でありながら、それだけで十分に伝わるこの一節。語り手の感情の核心が、飾らずに、静かに語られている。
I always want to be right by your side
いつだって君のそばにいたいんだ
このラインには、未来への誓いや永遠の約束ではなく、“いま”を生きる決意が込められている。“そばにいたい”という願いは、同時に“離れたくない”という不安の裏返しでもある。
Stay with me, don’t go
そばにいてくれ 行かないで
“行かないで”という言葉には、語り手がどれだけ相手を必要としているか、どれだけ不安を抱えているかが如実に現れている。恋の幸福と不安が同時に語られる瞬間だ。
All I want is to be with you
ただ君と一緒にいたい それだけなんだ
この一節こそ、タイトルとテーマの凝縮。“君”がいれば他には何もいらないという、若く純粋な愛の最終形がここにある。
※引用元:Genius – With You
4. 歌詞の考察
「With You」は、The Subwaysが持つ爆発的エネルギーの裏側にある、繊細でまっすぐな感情を描いた一曲である。
この曲では、語り手が恋人と過ごす日々に満足しながらも、どこかでそれが壊れてしまうのではないか、終わってしまうのではないかという**“時間に対する漠然とした不安”**を抱えていることが感じられる。
そしてその不安を乗り越える方法は、**ただ“君と一緒にいること”**だけである、という結論に至るのがこの歌だ。
それは、未来を語ることよりも、“いま”という瞬間を守ることに全力を尽くそうとする姿勢であり、刹那的であると同時に、真摯な愛の在り方でもある。
また、言葉の少なさ、反復の多さ、そしてシンプルなメロディは、むしろ語り手の感情の深さを強調する。言葉を重ねずとも、“一緒にいたい”というたった一つの願いが、あらゆる感情を包括している。
これは、若者の恋愛における究極の純度を描いた作品とも言える。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- First Day of My Life by Bright Eyes
恋人といることの幸福を静かに噛みしめるインディーフォークの名曲。 - Maps by Yeah Yeah Yeahs
愛と距離、そして葛藤をミニマルに描いた切実なロックバラード。 - Lua by Bright Eyes
時間の流れと孤独の中で生きるふたりの儚い関係性を描くアコースティックナンバー。 - Such Great Heights by The Postal Service
遠距離恋愛の不安と希望を同時に抱く、エレクトロ・インディーポップ。 - All I Want by Kodaline
喪失と願いをストレートに描いた、現代ラブソングの傑作。
6. “そばにいる”という奇跡――With Youが教えてくれる愛の原点
「With You」は、愛という感情の中でも**最も普遍的で、最も難しい“共にいること”**をテーマにした楽曲である。
そこには大きな物語も、劇的な展開もない。ただ、“君がそばにいてくれること”の幸せを、語り手は全力で守ろうとしている。
そしてこの歌が美しいのは、**その幸せがいつまでも続くとは限らないことを、語り手が知っているからこそ生まれる“切なさ”**があるからだ。
恋愛は、確信ではなく願いによって支えられている。その願いを歌うこと、それ自体が、ひとつの誠実な愛のかたちなのだ。
「ただ君と一緒にいたい」――このシンプルな想いが、どんな詩よりも心に届く。
『With You』は、愛の本質を真っ直ぐに射抜いた、若くも真摯なラブソングである。
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