発売日: 2011年7月12日
ジャンル: チルウェーブ、ドリームポップ、エレクトロニカ
Washed OutのデビューアルバムWithin and Withoutは、2011年にリリースされ、チルウェーブのムーブメントを牽引する作品として高い評価を得た。EPLife of Leisureで確立されたレトロで浮遊感のあるサウンドを引き継ぎつつ、より洗練されたプロダクションと緻密なアレンジを取り入れた本作は、アーネスト・グリーンの音楽的な成熟を示している。
本作では、夢幻的なシンセサウンド、反復的なビート、柔らかなヴォーカルが織りなす壮大なサウンドスケープが展開される。その一方で、親密で感情的なトーンがアルバム全体を支配しており、リスナーを深い没入感へと誘う。プロデューサーのベン・アレン(Animal Collective、Deerhunter)の手腕もあり、DIY的な感覚を残しつつ、より広がりのある音楽世界を作り上げている。
トラック解説
1. Eyes Be Closed
アルバムの幕開けを飾る壮大なトラック。広がりのあるシンセと優しいヴォーカルが心地よい浮遊感を生み出し、夢の中に引き込まれるような感覚を与える。バイクの風を切るようなビートと柔らかなメロディが印象的。
2. Echoes
リズムセクションが前面に出た、躍動感のあるトラック。シンプルなメロディが楽曲全体を引き締め、繰り返しの多い構成がトランス状態を生み出す。歌詞は抽象的ながらも感情的な深みを持つ。
3. Amor Fati
キャッチーでポップな要素が強いこの曲は、アルバムの中でも特に親しみやすい一曲。タイトルはラテン語で「運命を愛せ」という意味を持ち、歌詞には前向きなメッセージが込められている。軽快なビートが心を躍らせる。
4. Soft
タイトル通り、柔らかな音色とメランコリックな雰囲気が特徴の楽曲。シンセの繊細なレイヤーとアーネストの囁くようなヴォーカルが、楽曲に温かみと親密さを与えている。
5. Far Away
ノスタルジックでメロディックなトラック。広がりのあるサウンドスケープと繊細なリズムが、遠く離れた記憶や感情を呼び起こすような効果を生む。静けさと動きが絶妙に交錯する。
6. Before
ミニマルなリズムと反復的なシンセが楽曲を支える。歌詞には時間や関係性に対する内省的な視点が込められており、アルバム全体のテーマとリンクしている。浮遊感と緊張感が同時に感じられる一曲。
7. You and I
アルバム唯一のフィーチャリングトラックで、Caroline Polachek(Chairlift)がゲストボーカルとして参加。二人の声が溶け合い、楽曲に親密さと優美さを与えている。愛と繊細な感情をテーマにした美しいデュエット。
8. Within and Without
アルバムタイトル曲であり、本作の核心を担う一曲。静かに始まり、徐々に高まるビートとシンセが壮大なクライマックスを作り上げる。歌詞には自己の内面と外界の関係性を探るテーマが込められている。
9. A Dedication
アルバムのラストを飾る穏やかなバラード。ピアノとシンプルなアレンジが際立ち、アーネストのヴォーカルが静かに感情を伝える。アルバム全体のテーマを静かに締めくくる感動的な一曲。
アルバム総評
Within and Withoutは、Washed Outの音楽的進化を見事に示すデビューアルバムである。DIY感覚の残るLife of Leisureに比べ、プロダクションの質が大幅に向上し、緻密に作り込まれたサウンドが際立つ。それでも、夢幻的でノスタルジックなサウンドスケープは失われることなく、リスナーを深い感情の世界へと引き込む力を持つ。
特に「Eyes Be Closed」や「Amor Fati」のような楽曲は、チルウェーブの枠を超えた普遍的な魅力を持ち、Washed Outが単なるジャンルの代表にとどまらないアーティストであることを証明している。アルバム全体の流れが滑らかで、一つのまとまった作品としての完成度が非常に高い。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Toro y Moi – Underneath the Pine
チルウェーブの先駆者による作品で、Washed Out同様にレトロで浮遊感のあるサウンドが楽しめる。
Beach House – Teen Dream
ドリーミーで美しいメロディと広がりのあるサウンドが、Within and Withoutの雰囲気と共通する。
Neon Indian – Era Extraña
ノスタルジックなエレクトロサウンドと幻想的な雰囲気が、Washed Outの作品に共鳴する。
Tycho – Awake
エレクトロニカとアンビエントの要素が融合し、Within and Withoutのリスナーにぴったりの一枚。
M83 – Hurry Up, We’re Dreaming
壮大なサウンドスケープと感情的な楽曲が、Washed Outの世界観に近い魅力を持つ。
コメント