アルバムレビュー:Mister Mellow by Washed Out

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2017年6月30日

ジャンル:Chillwave / Psychedelic Pop / Electronic / Plunderphonics

概要

Washed Outことアーネスト・グリーンの3作目のスタジオ・アルバム『Mister Mellow』は、初期チルウェイヴの柔らかなシンセ・ポップを保ちながら、サンプリングと細かな編集を大幅に増やした作品である。前作『Paracosm』では生楽器を交えた豊かなサイケデリック・ポップへ広がっていたが、本作は再びコンピューター上で音を切り貼りする制作へ比重を移している。Stone Throw Recordsへの移籍後初のアルバムで、短い曲やインタールードを連続させ、全体を約30分にまとめている。

中心にあるのは、ぼんやりとした夢のようなサウンドと、日常生活への倦怠感の組み合わせだ。ジャズやソウルを思わせる断片、声のサンプル、ドラム・ループ、柔らかなシンセ、グリーン自身の霞んだ歌声が次々と入れ替わり、ラジオや古いテレビのチャンネルを切り替えているように曲が進む。一方、歌詞では退屈、先延ばし、現実逃避、時間を無駄にしている感覚が繰り返し現れる。心地よい音楽を「癒やし」として提示するだけでなく、その心地よさの中に閉じこもってしまう危うさまで描いたところに、『Mister Mellow』の独特な苦味がある。

全曲レビュー

1. 「Title Card」

30秒ほどの短い導入で、通常の楽曲というより映像作品のタイトル画面に相当する役割を持つ。加工された声や古いメディアを思わせる音が現れ、最初からアルバムを一続きのコラージュとして聞かせる準備をする。明確なメロディを提示する前に、現実とは少し異なる音の空間へ聴き手を移動させるインタールードである。

2. 「Burn Out Blues」

軽快なドラム・ループ、ソウルやジャズを思わせるサンプル、霞んだボーカルが折り重なり、華やかなのに力の抜けたグルーヴを作る。タイトルが示すのは疲れ切った状態で、歌詞でも意欲を失い、日々を何となくやり過ごす感覚が中心にある。普通なら暗くなりそうな題材を明るいリズムで包むことで、現実逃避そのものが気持ちよく感じられる矛盾を作っている。本作のテーマと制作方法を最初にまとめて示す曲だ。

3. 「Time Off」

短いインタールードで、会話や環境音を思わせる断片がコラージュされる。「休み」という題名も、アルバム全体に流れる労働や日常から離れたい気分につながるが、ここでは物語を詳しく説明しない。前曲のビートをいったん止め、次の場面へ移る編集点として働く。曲と曲の間の無音まで別の素材で埋めることで、本作特有の途切れない流れを作っている。

4. 「Floating By」

細かなパーカッションと柔らかなシンセが反復され、タイトル通り何かが目の前を漂って通り過ぎるように進む。グリーンの声は前面へ出ず、楽器やサンプルと同じ高さで混ざるため、歌詞より全体の感触が先に伝わる。時間を積極的に使うのではなく、ただ流されるまま過ごしてしまう感覚が心地よいリズムへ変換されている。短い構成も、つかまえる前に消えてしまう午後の記憶のような印象を強める。

5. 「I’ve Been Daydreaming My Entire Life」

題名だけで『Mister Mellow』の中心テーマをほとんど言い表した短いトラックである。夢想することを創造性や自由として称える一方、その状態が「人生ずっと」続いていると考えれば、現実へ参加できない人物像も浮かぶ。加工された声と断片的なサウンドが現れてすぐ消える構成も、集中が別の方向へ滑っていく感覚に近い。次の本格的な楽曲へ向けた心理的な接続部分になっている。

6. 「Hard to Say Goodbye」

ディスコやソウルを思わせる軽快なビートと反復するボーカル・サンプルを使い、本作でも特にダンス・ミュージックへ近づく。グリーンの柔らかな声がその上を滑り、別れを受け入れられない気持ちを大げさな悲劇ではなく、抜け出せない反復として表現する。曲が進むにつれて細かな音が入れ替わるため、基本のグルーヴは同じでも景色は少しずつ変わる。サンプリング中心の制作とポップなメロディが最も自然に結びついた一曲である。

7. 「Down and Out」

短い断片ながら、タイトルは気分の落ち込みや行き詰まりを直接示している。音は深刻なバラードにはならず、古いレコードから切り取ったような質感を利用して、感情さえもコラージュの一部として通過させる。『Mister Mellow』ではこうした短いトラックを挟むことで、一つの感情を長時間掘り下げず、気分が次々と切り替わる生活の感覚を表現している。

8. 「Instant Calm」

柔らかな鍵盤とビートが現れ、題名通り即効性のある安らぎを提供するように始まる。しかし「instant」という言葉には、根本的な問題を解決するのではなく、一時的に気分を落ち着かせるだけというニュアンスもある。短時間で気持ちよい音へ入り、すぐ次へ移る構成そのものが、娯楽や消費によって不快感を一瞬だけ忘れる行為に似ている。アルバムの心地よさを少し疑ってみせる重要な小品だ。

9. 「Zonked」

ぼんやりした声とサイケデリックな音響が重なり、意識が半分眠っているような状態を作る。「zonked」という題名も、疲れ切った状態や正常な集中を失った感覚を示す。リズムやメロディを明瞭に展開するより、音の断片を漂わせることを優先しており、アルバム前半から続いてきた倦怠感がここではほとんど意識の麻痺へ近づく。短さゆえに夢の一場面のように通過していく。

10. 「Get Lost」

ジャズやラウンジ・ミュージックを思わせる軽やかな素材とダンス・ビートを組み合わせ、アルバム中盤以降でも特に鮮やかな色を持つ。タイトルは道に迷うことだけでなく、日常から意識的に消えてしまいたい欲求としても読める。グリーンのボーカルは細かなサンプルの中へ溶け込み、歌手を中心に伴奏が付く一般的なポップとは逆に、巨大なコラージュの中から歌が一瞬姿を見せる。現実逃避を音そのものの楽しさへ変えた曲である。

11. 「Easy Does It」

短く柔らかなインタールードで、慌てず力を抜くというタイトルの感覚をそのまま音にしたような役割を持つ。前後の曲を明確に切り離すのではなく、サンプルや加工音によって滑らかにつなぎ、アルバムを一続きのミックスとして維持する。こうした小品が多いことで、『Mister Mellow』では「曲を一つずつ聴く」感覚より、30分間の音響空間を通過する感覚が強くなる。

12. 「Million Miles Away」

柔らかなシンセと穏やかなビートを使い、心理的にも物理的にも遠く離れている状態を描く。距離は必ずしも苦痛としてだけ扱われず、現実から何百万マイルも離れられたら楽になるという逃避の願いにも聞こえる。グリーンの声には感情的な爆発がなく、すでに遠い場所から自分自身を眺めているような静けさがある。コラージュ色の強い作品の中で、比較的メロディの輪郭をつかみやすい曲でもある。

13. 「Freaky Country」

カントリーという題名を掲げながら、素直なルーツ音楽へ移行するわけではなく、そのイメージを歪んだサンプルの一部として扱う。ジャンルの断片を自由に切り取り、元の文脈から離して配置する本作の制作思想がよく表れた短いトラックである。古いレコードやテレビから偶然聞こえてきた音を、そのまま夢の中へ持ち込んだような奇妙さがある。

14. 「Mister Mellow」

タイトル曲は短いインタールードとして置かれ、アルバムが描いてきた「mellow」な人物像を凝縮する。穏やかであることは一見理想的だが、ここまでの流れを踏まえると、無気力や現実からの撤退とも紙一重である。加工された音声と短いサンプルがその曖昧さを残し、主人公を具体的な人物として説明しない。アルバム名を解説するのではなく、さらに意味をぼかす使い方が面白い。

15. 「Small Talk」

声の断片を中心に、日常の何気ない会話が音楽の素材へ変換される。深いコミュニケーションではなく「small talk」と名づけることで、人と接していても本質的には孤立している状態を連想させる。アルバム全体が扱う退屈さは、一人でいる時間だけの問題ではなく、人との表面的なやり取りにも存在する。短い会話をコラージュとして処理することで、その空虚さを説明せずに伝えている。

16. 「Disco Ball」

終盤ではディスコ的なリズムときらめく音色が戻り、停滞していた身体をもう一度動かす。ミラーボールという題名も、光を自分で生み出さず周囲へ反射する物体であり、本作のサンプリング中心の方法とどこか重なる。華やかな音の中にもグリーン特有の霞みが残るため、完全なパーティーにはならない。楽しさと現実逃避の境界を最後まで曖昧にしたまま、アルバムを終幕へ導く。

17. 「Ten Years Gone」

最後は時間の経過を強く意識させるタイトルを置き、それまでの退屈な一日という感覚をより長い尺度へ広げる。何もしない時間はその瞬間には心地よくても、振り返れば何年もの空白になり得るという、本作の裏側にあった不安が浮かぶ。サウンドは最後まで柔らかく、劇的な覚醒や解決には向かわない。夢から完全に目覚めることなく、時間だけが過ぎていたという余韻を残して作品を閉じる。

総評

『Mister Mellow』は、Washed Outの代名詞だったチルウェイヴの「心地よさ」を、自分自身で疑い直した作品である。柔らかなシンセ、霞んだボーカル、ノスタルジックなサンプルは確かに快適だが、歌詞では疲労、退屈、先延ばし、現実逃避が繰り返される。リラックスすることと、何もできなくなることの境界はどこにあるのか。本作はその問いに答えを出さず、むしろ聴いていて気持ちよい音を鳴らすことで境界をさらに分かりにくくしている。

制作方法もそのテーマに合っている。『Paracosm』では生楽器を含む豊かなアレンジを広げたのに対し、ここでは既存の音の断片を切り、加工し、短いループとして再配置する方法が中心になる。ジャズ、ソウル、ディスコ、ラウンジなどの記憶が一瞬ずつ現れるが、どれか一つのジャンルへ定着することはない。過去の文化を鮮明に再現するのではなく、記憶の中で混ざった断片として扱うため、ノスタルジーにもどこか不確かさがある。

17トラックという数字に対して約30分しかない構成も重要だ。一般的なアルバムなら独立した曲へ発展させそうなアイデアを、数十秒のインタールードとしてそのまま残している。その結果、「Hard to Say Goodbye」や「Get Lost」のようなまとまった曲も、独立したシングルというより長いコラージュの一場面として聞こえる。反面、一曲ごとの作曲をじっくり味わうという点では『Within and Without』や『Paracosm』より弱く、断片性を魅力と感じられるかどうかで評価が分かれやすい。

Washed Outは2009年前後のチルウェイヴを代表する存在の一人だったが、『Mister Mellow』では初期スタイルをそのまま復活させなかった。ぼやけた音、過去への憧れ、日常から逃れる感覚を残しながら、それらをサンプル主体の落ち着かない編集へ変えている。だから本作の「mellow」は、単純な安らぎを意味しない。何もしない午後の快楽と、そのまま人生まで過ぎてしまう不安を同じ音の中に閉じ込めたことが、この短く奇妙なアルバムの個性である。

おすすめアルバム

Within and Without by Washed Out

2011年のデビュー・アルバム。霞んだシンセと柔らかなボーカルを、よりまとまりのある楽曲として聞かせる。『Mister Mellow』の断片的な編集と比べることで、Washed Outの制作方法の変化がよく分かる。

Paracosm by Washed Out

2013年の前作。生楽器や豊かなシンセを重ね、架空の楽園へ入り込むようなサイケデリック・ポップを作っている。本作と同じ逃避感を持ちながら、より有機的で開放的な音を目指した対照的な一枚だ。

Since I Left You by The Avalanches

無数のサンプルをつなぎ、一枚全体を絶えず姿を変える音の旅として構成した2000年作。規模や密度は異なるが、『Mister Mellow』の短い断片を連続させる方法を理解するうえで重要な比較対象になる。

Person Pitch by Panda Bear

2007年作。声とサンプルのループを幾重にも重ね、ポップソングとサイケデリックな音響の境界を曖昧にしている。反復によって夢のような時間感覚を作る方法が『Mister Mellow』と強く響き合う。

Causers of This by Toro y Moi

2010年作。チルウェイヴの霞んだシンセとR&B的なリズムを、細かく切断されたサンプル感覚と結びつけている。『Mister Mellow』より早い時期の作品だが、チルウェイヴとコラージュ的なビート制作が接近する地点として比較できる。

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