White Rabbit by Jefferson Airplane（1967）楽曲解説

1. 歌詞の概要

“White Rabbit“は、**Jefferson Airplane（ジェファーソン・エアプレイン）**が1967年にリリースしたアルバム『Surrealistic Pillow』に収録された、サイケデリック・ロックを代表する名曲です。

この楽曲は、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の世界観をモチーフにしながら、ドラッグ体験や精神的な覚醒を暗示していることで知られています。特に、「アリスが白うさぎを追いかけて幻想的な世界に迷い込む」という物語が、1960年代のカウンターカルチャーやLSD体験の比喩として描かれています。

歌詞のトーンはミステリアスで暗示的であり、クライマックスに向けて徐々に高揚する構成が特徴的です。これは、楽曲全体が**「トリップ（精神的高揚）」の過程を音楽的に表現している**とも解釈できます。

2. 歌詞のバックグラウンド

“White Rabbit”は、グレース・スリック（Grace Slick）によって書かれた楽曲で、彼女が元々所属していたバンドThe Great Society時代から演奏されていました。その後、ジェファーソン・エアプレインに加入した際に、この曲が再アレンジされ、より完成度の高い形でアルバム『Surrealistic Pillow』に収録されました。

1960年代のサンフランシスコは、LSDをはじめとするサイケデリック・ドラッグ文化が広まりつつある時代であり、その影響が音楽、アート、ライフスタイルにも強く反映されていました。特に、ヒッピー・ムーブメントの中心地である**ヘイト＝アシュベリー（Haight-Ashbury）**地区では、音楽とドラッグによる意識の拡張が重要なテーマとなっていました。

グレース・スリック自身も『不思議の国のアリス』に影響を受けており、彼女は「子どもの頃に読んだこの物語は、後にLSDの体験と完全に一致した」と語っています。そのため、この曲は単なるファンタジーの話ではなく、当時のサイケデリック文化や意識の拡張に関する強いメッセージが込められているのです。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Lyrics:
“One pill makes you larger, and one pill makes you small”
和訳：
「ひとつの薬は君を大きくし、ひとつの薬は君を小さくする」

Lyrics:
“And the ones that mother gives you, don’t do anything at all”
和訳：
「でも母親がくれる薬は、何の効果もない」

Lyrics:
“Go ask Alice when she’s ten feet tall”
和訳：
「アリスに聞いてごらん、彼女が3メートルになったときに」

Lyrics:
“And if you go chasing rabbits, and you know you’re going to fall”
和訳：
「もし君が白ウサギを追いかけるなら、落ちることを知っているはずだ」

Lyrics:
“Remember what the Dormouse said: ‘Feed your head, feed your head'”
和訳：
「ヤマネの言葉を思い出して、『頭を満たせ、頭を満たせ』」

この歌詞には、『不思議の国のアリス』の象徴的なシーンが多く引用されています。特に「One pill makes you larger, and one pill makes you small」というフレーズは、アリスが飲む不思議な薬の話を基にしており、それがLSDやその他の幻覚剤を暗示していると広く解釈されています。

また、「Go ask Alice」というラインは、アリスの視点を象徴しつつ、リスナーに向けた問いかけのようにも感じられます。ラストの「Feed your head」というフレーズは、「精神を満たせ」「意識を広げろ」といった意味で、これはドラッグによる覚醒や知識の拡張を促すメッセージとも言われています。

（※歌詞の引用元: LyricsFreak）

4. 歌詞の考察

“White Rabbit”は、単なるサイケデリック体験の描写ではなく、「教育」や「社会的洗脳」に対するメタファーとも解釈できます。

例えば、歌詞の中で**「母親がくれる薬は何の効果もない」**というラインは、社会が押し付ける常識や価値観が、実際には精神的な成長には役立たないことを示唆しているとも考えられます。

また、クライマックスに向かって高揚する曲調は、まるでトリップのピークを迎えるかのような感覚をリスナーに与えます。この「徐々に盛り上がり、解放される」音楽的構成は、まさに当時のサイケデリック・ロックの典型的な手法でもあります。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

“Somebody to Love” by Jefferson Airplane
- 『Surrealistic Pillow』収録のもう一つの代表曲で、激しいボーカルとサイケデリックなサウンドが特徴。
“Purple Haze” by Jimi Hendrix
- サイケデリック・ロックの象徴的な楽曲で、LSD体験を暗示した歌詞が特徴的。
“A Whiter Shade of Pale” by Procol Harum
- 幻想的なオルガンサウンドと哲学的な歌詞が”White Rabbit”と共鳴する。
“Lucy in the Sky with Diamonds” by The Beatles
- タイトルの頭文字（L・S・D）が示唆するように、サイケデリックなビジュアルが展開される名曲。
“Light My Fire” by The Doors
- サイケデリックなジャムセッションと詩的な歌詞が、”White Rabbit”と同じ時代の雰囲気を持つ。

6. 『White Rabbit』のユニークな特徴

この曲は、単なるロックソングではなく、当時の社会背景、ドラッグ文化、サイケデリックムーブメントを象徴する楽曲です。

✅ 1分足らずの静かなイントロから、徐々に高揚していく音楽構成
✅ エスニックな影響を感じさせるスパニッシュ風のコード進行
✅ グレース・スリックの圧倒的なボーカルと不気味な歌詞のコントラスト
✅ 「不思議の国のアリス」を通じた社会批判と意識拡張のメッセージ

結論

“White Rabbit“は、1960年代のカウンターカルチャーを象徴する名曲であり、音楽的にも文学的にも深いメッセージを持つサイケデリック・ロックの傑作です。グレース・スリックのカリスマ的なボーカルと、徐々に高揚するドラマチックな展開は、聴く者を幻想的な世界へと誘い、時代を超えて多くのリスナーに影響を与え続けています。