
発売日: 2008年12月16日
ジャンル: ポップ・パンク、パワー・ポップ、オルタナティヴ・ロック
成熟したサウンドと広がるスケール感——The All-American Rejectsの新たな挑戦
2008年にリリースされたWhen the World Comes Downは、The All-American Rejectsがポップ・パンクの枠を超え、より壮大で洗練されたロックサウンドへと進化した作品である。本作では、前作Move Along(2005年)で確立したキャッチーなメロディとエモーショナルな歌詞を軸にしながらも、シンフォニックなアレンジや、ストリングスを取り入れた楽曲など、より多様な音楽的アプローチを試みている。
プロデューサーには、Green DayやMy Chemical Romanceの作品を手掛けたエリック・ヴァレンタインを迎え、バンドの持つポップな側面をさらに磨きつつ、サウンドの奥行きを深めるプロダクションが施されている。
本作からは、「Gives You Hell」「I Wanna」「The Wind Blows」などのシングルがリリースされ、特に「Gives You Hell」はバンド史上最大のヒット曲となり、彼らの代表作として広く知られるようになった。
全曲レビュー
1. I Wanna
アルバムのオープニングを飾るアップテンポなナンバー。キャッチーなメロディとシンプルなギターリフが際立ち、「I wanna, I wanna, I wanna touch you」というフレーズが中毒性のある一曲。
2. Fallin’ Apart
軽快なリズムとパワー・ポップ的な要素を持つ楽曲。恋愛の破綻をテーマにした歌詞が、ポップなメロディと対比を成している。
3. Damn Girl
グルーヴィーなギターリフと、タイソン・リッターのエモーショナルなボーカルが特徴的。バンドの持つ遊び心が感じられる一曲。
4. Gives You Hell
本作最大のヒット曲であり、バンドの代表曲のひとつ。シンプルながらも力強いギターリフと、シニカルな歌詞が特徴的で、「When you see my face, hope it gives you hell」というフレーズが強烈な印象を残す。メロディのキャッチーさと、攻撃的な歌詞のバランスが絶妙な一曲。
5. Mona Lisa (When the World Comes Down)
アルバムタイトルを冠した楽曲で、シンフォニックなアレンジが施された壮大なバラード。ストリングスとピアノが楽曲に深みを加え、バンドの新たな試みを感じさせる。
6. Breakin’
疾走感のあるロックナンバー。シンプルなギターリフと、リズミカルなボーカルが印象的。ライブ映えするエネルギッシュな一曲。
7. Another Heart Calls (feat. The Pierces)
女性ボーカルユニットThe Piercesをフィーチャーした楽曲で、男女のコール&レスポンスが特徴的なバラード。シリアスな雰囲気を持つ楽曲で、アルバムの中でも異彩を放っている。
8. Real World
ポップ・パンク的なアップテンポな楽曲で、青春の焦燥感を感じさせる歌詞が特徴的。ギターリフとシンセのバランスが絶妙。
9. Back to Me
アコースティックギターを主体とした楽曲で、シンプルながらも温かみのあるメロディが魅力的。リラックスした雰囲気を持つ一曲。
10. Believe
ピアノの旋律が美しいバラード。希望と自己肯定をテーマにした歌詞が印象的で、バンドの成長を感じさせる楽曲。
11. The Wind Blows
アルバムのラストを飾る壮大なバラード。ストリングスとピアノのアレンジが印象的で、アルバム全体のテーマである「変化と成長」を象徴する一曲。
総評
When the World Comes Downは、The All-American Rejectsがポップ・パンクの枠を超え、より壮大で洗練されたロックサウンドへと進化した作品である。
前作Move Along(2005年)と比較すると、楽曲のバリエーションが増え、より実験的でドラマティックな要素が強まっている。特に「Gives You Hell」のようなキャッチーなロックアンセムから、「Mona Lisa」や「The Wind Blows」のようなシンフォニックなバラードまで、アルバム全体のダイナミクスが豊かになっている。
この作品を通じて、The All-American Rejectsは単なるポップ・パンクバンドではなく、より幅広い音楽性を持つバンドへと進化したことを証明した。本作は、キャッチーなメロディとエモーショナルな歌詞を求めるリスナーにとって、必聴のアルバムであり、バンドの成長を感じられる一枚である。
おすすめアルバム
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The All-American Rejects – Move Along(2005)
本作の前作で、よりポップ・パンク色が強いが、キャッチーな楽曲が多い。 -
Fall Out Boy – Folie à Deux(2008)
ポップ・パンクとオルタナティヴ・ロックの融合が秀逸な作品。 -
Jimmy Eat World – Chase This Light(2007)
エモとポップ・ロックを融合させた美しいメロディが魅力的な作品。 -
Paramore – Brand New Eyes(2009)
ポップ・パンクとオルタナティヴ・ロックのバランスが取れた名盤。 -
Weezer – Red Album(2008)
キャッチーなメロディと実験的なアレンジが特徴的で、本作の多様性に通じる要素が多い。
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