
1. 歌詞の概要
「What a Waste」は、イギリスのシンガーソングライター**イアン・デューリー(Ian Dury)と彼のバンドザ・ブロックヘッズ(The Blockheads)**が1978年にリリースしたシングルで、彼のキャリアの中でも特に人気の高い楽曲のひとつです。
この曲のテーマは、「人生において様々な選択肢があったが、最終的にミュージシャンになった」というストーリーをユーモアたっぷりに描いたものです。歌詞では、主人公が**「自分はパイロット、船長、政治家などになれたのに、なぜか音楽業界で働いている」とぼやきながらも、結局は「それも悪くない、素晴らしいことだ」**と締めくくる流れになっています。
タイトルの「What a Waste(なんて無駄なんだ)」は、一見すると人生を無駄にしてしまったかのように聞こえますが、実際には**「無駄なんてない、これでよかったんだ」という逆説的な意味を持っている**ことがポイントです。
2. 歌詞のバックグラウンド
この曲は、1978年にアルバム『New Boots and Panties!!』の成功に続くシングルとしてリリースされ、UKシングルチャートで9位を記録しました。
当時、イアン・デューリーはパンクやニューウェーブのアーティストとして人気を獲得していたものの、彼の音楽スタイルはよりファンクやジャズ、ロカビリーなどを取り入れた独特のものでした。「What a Waste」も、ファンキーなリズムと皮肉の効いた語り口が特徴的な楽曲となっており、彼のユーモラスな作詞センスが光る作品となっています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「What a Waste」の歌詞の一部を抜粋し、日本語訳を添えます。
原文:
I could be the driver in an articulated lorry
I could be a poet, I could be a teacher
和訳:
俺は大型トラックの運転手になれたかもしれない
詩人にも、教師にもなれたかもしれない
原文:
I could be the ticket man at Fulham Broadway Station
What a waste, what a waste
But I don’t mind
和訳:
フラム・ブロードウェイ駅の改札係にもなれたかもしれない
なんて無駄なんだ なんて無駄なんだ
でも 気にしてないさ
(※「Fulham Broadway Station」はロンドンの地下鉄駅。)
原文:
I could be a lawyer with strategical plans
I could be a doctor with prescriptions for a man
和訳:
俺は弁護士になって 戦略的な計画を立てられたかもしれない
医者になって 処方箋を書いていたかもしれない
原文:
I could be the catalyst that sparks the revolution
I could be an inmate in a long-term institution
和訳:
俺は革命の火付け役にもなれたかもしれない
もしくは 長期刑務所の囚人になっていたかもしれない
歌詞の完全版は こちら で確認できます。
4. 歌詞の考察
この曲の歌詞は、人生における様々な選択肢をユーモアと皮肉を交えて語りながらも、最終的に「今の人生も悪くない」と肯定する構成になっています。
特に「**What a waste, what a waste, but I don’t mind(なんて無駄なんだ、なんて無駄なんだ、でも気にしてないさ)」**というフレーズは、タイトルとは裏腹に、実は自分の人生を受け入れ、楽しんでいることを示唆しています。
また、「革命の火付け役になれたかもしれないし、長期刑務所の囚人になっていたかもしれない」というラインは、人生の可能性がいかに広く、予測不能であるかを示しており、それを笑い飛ばすようなデューリーの視点が感じられます。
彼の楽曲はしばしば労働者階級の視点を持ち、社会の不条理や矛盾を皮肉たっぷりに描くのが特徴ですが、この曲もまさに**「どんな職業に就こうとも、それぞれに意味がある」というメッセージを含んでいる**と考えられます。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Hit Me with Your Rhythm Stick” by Ian Dury & The Blockheads
ファンキーなリズムとユーモアたっぷりの歌詞が共通するヒット曲。 - “Reasons to Be Cheerful, Part 3” by Ian Dury & The Blockheads
楽観的なリスト形式の歌詞が特徴の楽曲。 - “Pump It Up” by Elvis Costello & The Attractions
ニューウェーブとファンキーなビートが融合した楽曲。 - “Cool for Cats” by Squeeze
イギリス的なユーモアとリズミカルな歌詞が魅力のニューウェーブソング。 - “Life’s What You Make It” by Talk Talk
人生の選択肢についてポジティブに考える楽曲。
6. 「What a Waste」の影響と評価
「What a Waste」は、イアン・デューリーのユニークな作詞スタイルと、彼の音楽的なセンスを示す代表曲のひとつとして評価されています。
リリース当時、UKシングルチャートで9位を記録し、彼の人気を決定づける曲のひとつとなりました。その後、彼のバンド「ザ・ブロックヘッズ」と共に制作する「Hit Me with Your Rhythm Stick」(1978年)や「Reasons to Be Cheerful, Part 3」(1979年)などの楽曲と共に、パンク/ニューウェーブ時代の代表的なアーティストとしての地位を確立しました。
また、この楽曲のメッセージは、ミュージシャンだけでなく、あらゆる職業の人々に共感される内容となっており、「どんな仕事でも、それぞれに価値がある」という普遍的なテーマを持つ楽曲として今なお愛されています。
まとめ
「What a Waste」は、イアン・デューリーのユーモアと皮肉が光る楽曲で、人生の選択肢を振り返りながらも「どんな道を選んでも、それでいい」と前向きに受け入れるメッセージを持つ。ファンキーなリズムとキャッチーなメロディが特徴で、1970年代のUKニューウェーブ/ポストパンクシーンにおいて重要な位置を占める名曲である。」
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