発売日: 2009年6月5日
ジャンル: サイケデリック・ロック、オルタナティブ・ロック、エレクトロ・ロック
West Ryder Pauper Lunatic Asylumは、カサビアンの3作目のアルバムで、彼らの音楽的な野心と実験精神が詰まった作品である。アルバムタイトルが示すように、精神病院を舞台にしたコンセプトアルバムとして構成されており、サイケデリックで奇妙な雰囲気が漂う。カサビアンは、ここでエレクトロロックに加え、60年代のサイケデリアやゴシック、映画音楽のようなアレンジを取り入れ、新しい音楽的境地を探求している。プロデュースにはデンジャー・マウスが参加し、アルバム全体のサウンドにダークでシネマティックな質感を加えた。
本作は、前作Empireの攻撃的なエッジを残しながらも、より深い物語性と独自のビジュアル世界を展開しているのが特徴で、ロックファンだけでなく、映画音楽やサイケデリックミュージックを好むリスナーにも刺さる内容だ。West Ryder Pauper Lunatic Asylumは、バンドにとって重要な転換点となり、リリース直後に全英アルバムチャートで1位を獲得するなど、カサビアンの存在感を確立する作品となった。
トラックごとの解説
1. Underdog
アルバムの幕開けを飾るエネルギッシュなロックナンバーで、力強いギターリフとドラムが圧倒的な迫力を放つ。歌詞には反骨精神が込められ、ライブでもファンの盛り上がりを誘うアンセム的な一曲。
2. Where Did All the Love Go?
ゆったりとしたビートとサイケデリックなメロディが融合した楽曲で、物憂げなムードが漂う。社会への疑問と空虚感が歌詞に込められており、メッセージ性が強い。
3. Swarfiga
インストゥルメンタルのトラックで、サイケデリックなサウンドとリズムが異様な雰囲気を作り出している。短いながらも、アルバム全体のトーンを引き立てる重要な一曲。
4. Fast Fuse
パワフルで疾走感のあるロックトラックで、激しいギターとビートが特徴。トム・ミーガンの攻撃的なボーカルが、エネルギーに満ちた一曲としてアルバムに勢いを与えている。
5. Take Aim
西部劇風のギターと緊張感のあるリズムが印象的で、物語性の強いトラック。サイケデリックと映画的なアレンジが相まって、アルバムの異世界的なムードをさらに強調する。
6. Thick as Thieves
フォーク調のイントロから始まるメロウな楽曲で、友情や裏切りのテーマが歌われている。穏やかなリズムと歌詞が心に残り、アルバム全体に一瞬の安らぎを与える。
7. West Ryder Silver Bullet
女優のロージー・ハンティントン＝ホワイトリーをゲストに迎えたデュエット曲で、ダークでムーディーなムードが漂う。エコーのかかったギターとシンセが、幻想的で幻想的な空間を生み出している。
8. Vlad the Impaler
重低音のベースラインとダンサブルなリズムが特徴の一曲で、サイケデリックで攻撃的な雰囲気が強い。タイトルの通り、ヴラド・ツェペシュ（ドラキュラ）をモチーフにしており、スリリングで強烈な一曲として人気が高い。
9. Ladies and Gentlemen, Roll the Dice
浮遊感のあるサウンドと、リズムが変化する構成がユニークなトラック。ダークで不穏なメロディが印象的で、アルバム全体に独特の流れを与えている。
10. Secret Alphabets
サイケデリックなアレンジが施された一曲で、エフェクトの効いたギターが幻想的に響く。ミステリアスなムードが漂い、リスナーを夢中にさせる。
11. Fire
アルバムのハイライトともいえるナンバーで、イントロの静けさから一気に盛り上がるドラマティックな構成が魅力。カサビアンの代表曲としても知られており、ファンにとっては欠かせない一曲。
12. Happiness
アコースティックなサウンドが基調のトラックで、アルバムを穏やかに締めくくる。アルバムの中で異彩を放つ、平和と安らぎをテーマにした楽曲で、終わりを告げるような静かな余韻を残す。
アルバム総評
West Ryder Pauper Lunatic Asylumは、カサビアンがサイケデリック・ロックの要素を本格的に取り入れ、新たな音楽的領域を切り開いた作品である。奇妙でシネマティックな世界観が、各トラックに渡って丁寧に描かれており、リスナーはアルバム全体を通して一つの物語を体験するような感覚を味わうことができる。特に「Underdog」や「Fire」などのシングル曲は、カサビアンのダークでエネルギッシュなスタイルを象徴しており、サイケデリックなサウンドが融合した完成度の高い作品となっている。West Ryder Pauper Lunatic Asylumは、カサビアンの音楽的な成熟を感じさせ、バンドの創造力がピークに達した名盤である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Demon Days by Gorillaz
デーモン・アルバーン率いるGorillazによるサイケデリックでダークなアルバム。シネマティックなサウンドとエレクトロニックな要素が、カサビアンのファンにも楽しめる。
Our Love to Admire by Interpol
ゴシックで暗い雰囲気を持つアルバムで、ポストパンクとサイケデリックなアレンジが特徴。West Ryder Pauper Lunatic Asylumのダークな美しさに共通する魅力がある。
Screamadelica by Primal Scream
サイケデリックロックとエレクトロの融合が楽しめる一枚で、カサビアンのサイケデリックな一面が好きなリスナーにぴったり。
Amorica by The Black Crowes
サザンロックにサイケデリックな要素を加えたアルバムで、幻想的なサウンドと独特の世界観が楽しめる。アルバム全体のテーマ性を重視するリスナーにおすすめ。
Origin of Symmetry by Muse
ドラマティックなサウンドとサイケデリックな要素が強いアルバム。壮大な音楽性がカサビアンの作品と共通しており、ロックの冒険心を感じられる。
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