1. 歌詞の概要
「Way Out(逃げ道)」は、The La’s(ザ・ラーズ)が1990年にリリースした唯一のアルバム『The La’s』に収録された、アルバム冒頭を飾るエネルギッシュなナンバーである。
この楽曲は、わずか2分足らずという短い尺の中で、逃避と渇望、社会への違和感、そして「出口」を求める衝動を、一気に駆け抜けるように歌い上げている。
タイトルの「Way Out」は直訳すれば「出口」「脱出路」だが、ここで語られているのは物理的な出口ではなく、“閉塞感から抜け出したい”という精神的な希求である。
抑圧された環境から逃れようとする心情は、都会の退屈な日常、社会規範への反発、自分自身への失望など、様々な文脈で読み取ることができる。
リー・メイヴァースの声が、まるで壁に向かって叫ぶように響き渡るこの曲は、アルバム全体に流れる“若さの葛藤”を強く象徴している。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Way Out」は、バンドの中心人物リー・メイヴァース(Lee Mavers)が書いた初期の楽曲で、The La’sがインディーシーンで活動していた頃からライヴで披露されてきた一曲である。
1987年にはデモ録音もされ、のちに1988年にバンドの初シングルとしてリリースされた。アルバム版はその再録音で、音質やアレンジが異なるが、どちらもパンキッシュでラフなエネルギーをそのまま封じ込めたかのような勢いを持っている。
この曲は、「There She Goes」のような甘く切ないラブソングとは対照的に、The La’sの持つ“生々しい衝動性”を前面に押し出した作品であり、彼らが単なる一発屋でも、優雅なポップバンドでもないことを示している。
90年代初頭のイギリスで“ギターの逆襲”と呼ばれたインディー・リバイバルの空気を、もっとも原始的な形で伝える曲のひとつである。
3. 歌詞の抜粋と和訳
「Way Out」の歌詞はシンプルで直接的でありながら、叫びのような言葉の裏に深い疲弊や焦燥が感じられる。
“I don’t know which way to go / I can’t find the way out”
「どっちに行けばいいか分からない / 出口が見つからないんだ」
“Way out is what I need / I’m looking for a way out”
「逃げ道が欲しいんだ / とにかく抜け出したいんだ」
“I can’t stay here anymore / I’ve had enough of this town”
「もうここにはいられない / この街にはうんざりだ」
“Gotta break away / Find another day”
「ここから抜け出して / 別の時間を見つけなきゃ」
歌詞全文はこちらで確認可能:
The La’s – Way Out Lyrics | Genius
4. 歌詞の考察
この曲で描かれているのは、典型的な“若者の逃避願望”とも言える。
進むべき道が見えず、今いる場所には満足できず、でもどこに行けばいいかも分からない。
その“どうにもならなさ”を、The La’sは甘美にではなく、切迫した声で叫びとして吐き出している。
「I can’t stay here anymore」というラインには、単なる場所への不満だけではなく、“今の自分”を捨てたいという根源的な衝動が読み取れる。
この街、この生活、この自分――すべてが“出口のない箱”のように感じられて、どうにかしてそこから飛び出したいという気持ちが膨れ上がっている。
しかしその一方で、「どこへ行けばいいのか分からない」という絶望も同時に描かれている。
それは、逃げ出すことで解決できる問題ではないと、どこかで分かっていながらも、それでも「逃げたい」と思ってしまう――そんな葛藤のリアルさが、この短くも濃密な曲に詰まっている。
音楽的には、シンプルなコード進行と荒削りなギターリフ、疾走感のあるリズムが、“思考よりも感情が先に動く”ような衝動性を見事に表現している。
「完璧じゃなくていい、今すぐこの場を壊したい」――その無骨なエネルギーが、聴き手の体にも直接響いてくる。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- I Wanna Be Adored by The Stone Roses
存在証明への渇望をサイケデリックに描いた、マッドチェスター時代の金字塔。 - Teen Age Riot by Sonic Youth
若者の怒りと知的暴力を叩きつけるように構築した、オルタナの聖典的存在。 - This Charming Man by The Smiths
人生の“出口”を探す感覚を、シニカルかつ軽やかに描いたギター・ポップの名作。 - She’s in Fashion by Suede
「居場所のなさ」と「外の世界への憧れ」が同居する美しい逃避ソング。 -
Movin’ On Up by Primal Scream
音楽の力で自由と解放を手に入れようとする、90年代ロックの祝祭。
6. “衝動のままに、出口を探す”
「Way Out」は、The La’sというバンドのもうひとつの顔――つまり、繊細なポップソングの裏にある“どうしようもない苛立ち”と“出口なき若さの衝動”を体現した楽曲である。
それは、「There She Goes」のように優しくはない。でも、人生のどこかで“このままではいけない”と叫びたくなったことがある人にとっては、この曲こそが心の代弁者となるだろう。
「Way Out」は、理屈も美学も超えて、“抜け出したい”という一点にすべてを注ぐ、痛々しいほどに純粋な衝動のロックンロールである。
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