Water by Martika（1988）楽曲解説

楽曲レビュー

2025.06.30

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. 特筆すべき事項：癒しの象徴としての水

1. 歌詞の概要

「Water」は、マルティカのデビューアルバム『Martika』（1988年）に収録されたバラードであり、彼女の内面性や精神的な探求が静かに滲み出る楽曲である。タイトルの「水」は、この楽曲全体を貫く象徴的なモチーフであり、流動性、癒し、生命、そして感情の浄化を意味するものとして機能している。

歌詞は、人生の痛みや葛藤、内的な疲れに対して「水のような存在」が癒しを与える、あるいは自分自身がその「水」となって誰かを癒したいという、二重の視点で構成されている。マルティカの力強くも繊細なボーカルによって、この“水”のイメージは静かながらも強いエネルギーを持ち、リスナーに優しく寄り添う。

アップビートなシングル曲とは対照的に、この楽曲ではしっとりとしたトーンと詩的なメタファーを通じて、彼女の成熟した表現力が垣間見える。10代でこのような内省的な楽曲を表現することは決して容易ではないが、マルティカはそれを堂々とやってのけている。

2. 歌詞のバックグラウンド

アルバム『Martika』はポップアイコンとしての彼女の魅力を前面に出しながらも、「Water」などの楽曲においては精神的な深みを持った側面を見せている。当時のポップ界では珍しかった“内面の癒し”や“感情の浄化”といったテーマを取り上げている点で、この楽曲は異色の存在と言えるだろう。

マルティカ自身が作詞作曲に関わったこの曲では、彼女の個人的な哲学や精神性がうかがえる。彼女は若くしてショービジネスに身を置いており、外側の華やかさと内側の静けさ、あるいは孤独との間で葛藤していたと語られている。「Water」は、そうした二重性のなかで見出された“静かな場所”なのかもしれない。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Water cleanses me inside
水は私の内側を洗い流してくれる

It makes the pain subside
痛みが、少しずつ消えていく

It heals the wounds I hide
隠していた傷も、そっと癒されていく

Like water, you soothe me
あなたはまるで水のように、私をなだめてくれる

引用元：Genius Lyrics – Martika / Water

4. 歌詞の考察

「Water」の歌詞は、極めて比喩的でありながら、リスナーに直感的な安心感と親密さを与える。水は清めの象徴であると同時に、命そのものの源でもある。この曲において、語り手にとって「あなた」は水そのものであり、その存在が彼女の傷を癒し、心を洗い流してくれる。

また、この楽曲では「痛み」や「傷」といった語が繰り返し登場するが、それは単なる恋の傷というよりも、自分の存在そのものにまつわる深い孤独や不安に由来しているようにも思える。そこに寄り添う“水のような存在”は、恋人、友人、あるいは内なる自己かもしれない。

さらに興味深いのは、この曲が「自分が水になりたい」という願望にもつながっている点である。つまり、癒される側だけでなく、癒す側になることで、自分の存在意義を見出そうとする姿がそこにある。これは、マルティカの他の作品と比べてもより精神的な次元に踏み込んだ表現であり、彼女のアーティストとしての深化を感じさせる。