アルバムレビュー:Upside Down in Heaven by Crocodiles

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 2023年4月7日
ジャンル: ノイズポップ、パワーポップ、ガレージロック、ドリームポップ


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概要

『Upside Down in Heaven』は、Crocodilesが2023年に発表した8作目のスタジオ・アルバムであり、
彼らのキャリアの中でも特に**甘さ・鋭さ・儚さ・享楽性がバランスよく融合した“ノイズポップの美的完成形”**ともいえる作品である。

アルバムタイトル「天国で逆さまに」には、
快楽や救済と見えるものが実は欺瞞であり、地獄と天国が表裏一体であるというCrocodilesらしい皮肉が込められており、
彼らがデビュー以来追求してきたテーマ――愛/暴力、信仰/堕落、希望/虚無といった二項対立――を、
本作では**よりキャッチーなポップの形式に包みながら描き切っている。

過去作のようなアングラ的な荒々しさは抑えつつ、
パワーポップやジャングリーなギター、青春パンク的な明快さが全面に出ており、
シンプルな“歌”の力に軸足を置いた
内容に仕上がっている。

これはCrocodilesによる、**“死と祈りとポップのアルバム”**である。


全曲レビュー

1. Love Beyond the Grave

冒頭を飾るタイトルにふさわしく、死後にも続く愛というテーマが哀しくも希望に満ちて歌われる。
ノスタルジックなギターのリフと淡いメロディにより、初期Jesus and Mary Chain的な霊性のポップ感を感じさせる。

2. Forever Walk Alone

どこか“ユルく”も切実なパンクポップ。
タイトルは「You’ll Never Walk Alone」のパロディとも取れるが、孤独を肯定する明るさが印象的。
Crocodilesにしては異例の“前向き”なエネルギーを放つ。

3. Deadbeat Guitar

役立たずのギター=鳴らすことでしか存在価値のない自分自身を象徴する、パーソナルで皮肉な楽曲。
ラフでガレージライクな演奏と、甘く切ないコード進行が対照的。

4. Victim

「被害者でいること」に対する批評的な視線を、シンプルなビートに乗せて展開。
歌詞では自己憐憫と社会構造のどちらにも踏み込んでおり、ポップな装いの中に鋭さが宿る

5. Love Is the Drug That I Can’t Quit

本作のエモーショナルな核の一つ。
中毒としての愛――その快楽と破滅の両義性が、反復されるサビと高揚感のあるコード進行で表現される。
まさにCrocodiles的テーマの総決算。

6. Sweet Like Blood

タイトルの通り、甘さと血のイメージを重ねたサイケ・ラブソング
軽快なテンポと陰りのあるメロディがせめぎ合い、夢と死の境界に揺れるポップソングとして成立している。

7. Upside Down in Heaven

タイトル曲は中盤に配置され、アルバムの世界観を象徴する存在。
“天国で逆さま”というフレーズには、宗教的な空虚さや、現代の道徳の倒錯を感じさせる。
ドリーミーなサウンドと反復的なリリックが心に残る。

8. Neon Jesus

鮮烈なタイトルにふさわしく、信仰と偶像化、消費文化の混濁を皮肉ったダンサブルなトラック。
80sニューウェイヴやThe Rapture的なディスコ・パンクの系譜にも通じる。

9. Moral Injury

戦争後のトラウマや精神的損傷を意味する“モラル・インジャリー”という硬派な言葉を用い、
日常の中にある倫理的損壊=愛することで傷つく構造そのものを静かに語る。
抑えた展開がむしろ痛々しさを際立たせる。

10. Alien

最終曲は、“自分は地球外の存在だ”と感じる疎外と自由の歌
メロディは軽やかだが、Crocodilesらしい永遠のアウトサイダー感覚が結晶化した佳曲である。
幕引きにふさわしい哀愁と解放感が共存している。


総評

『Upside Down in Heaven』は、Crocodilesこれまで築いてきた美学の“もっともポップな形での総括”とも言える作品である。
ノイズは控えめになったが、その代わりにメロディ、リリック、構成すべてにおいて精度が高く、
“歌うことそのもの”の強さに回帰したアルバム
となっている。

“ポップとは刹那であり、救済であり、欺瞞であり、そして祈りである”という、
彼らの一貫したスタンスが、今作では鋭さよりも親密さ、破壊よりも共感を通して届けられている。

Crocodilesは『Upside Down in Heaven』で、
世界がどれほど歪んでいても、愛とロックンロールはまだ何かを信じられると、小さくも強く歌っている。


おすすめアルバム(5枚)

  1. The Jesus and Mary ChainMunki (1998)
     ノイズとメロディの最終到達点。兄弟的テーマ性。

  2. The Pains of Being Pure at Heart – Belong (2011)
     甘く切ないノイズポップの王道。Crocodilesのポップ面と共鳴。

  3. Black Rebel Motorcycle Club – Wrong Creatures (2018)
     ロックの死と再生をテーマにした後期傑作。

  4. The Raveonettes – Observator (2012)
     崩壊寸前の美しさを音にしたノイズポップ。

  5. Girls – Father, Son, Holy Ghost (2011)
     信仰と愛、アウトサイダーの哀しみを“美しく”描いた感情の記録。

歌詞の深読みと文化的背景

『Upside Down in Heaven』では、“天国”“神”“愛”“罪”“血”“祈り”といった宗教的・倫理的イメージが繰り返し登場する。
しかしCrocodilesはそれらを信仰の肯定としてではなく、むしろ現代における信仰の空虚さや倒錯を照らし出す比喩として用いている。

特に「Neon Jesus」や「Upside Down in Heaven」では、
消費される神、機能不全の天国、見せかけの倫理といった主題が、明るい音像と裏腹に描かれている。

この作品は、ポップミュージックの形式でありながら、
**現代人のモラル的崩壊や愛の再定義に鋭く切り込む“歌による社会批評”**でもあるのだ。

Crocodilesはこのアルバムで、
“信じたい”と“信じられない”のあいだに揺れる私たちの時代に、
それでもポップを鳴らすことの意味と覚悟
を、静かに、しかし力強く提示している。

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