1. 歌詞の概要
「Up Around the Bend」は、クリーンなエネルギーと希望に満ちたCCRのロックナンバーである。
歌詞は、ある地点から“その先”へと続く道――文字通り「カーブの先(Up Around the Bend)」に向かって歩いていこうという、ポジティブな呼びかけから始まる。それは新たな地平、新しい人生の局面、あるいは未踏の自由を象徴しているとも受け取れる。
この曲に登場する語り手は、特定の誰かを「さあ、一緒に来よう」と誘い、そこに待っている“何か良いこと”を信じて進もうとする。歌詞の中では「楽しい時間を過ごそう」「夜通し過ごそう」といった呼びかけがあり、それは単なる遊びではなく、日常の憂さを吹き飛ばす“生の歓び”そのものだ。
軽やかで力強いギターリフ、シンプルながら疾走感のあるビート、そしてジョン・フォガティの力強いボーカルが交わるこの曲は、人生における「変化」や「旅立ち」を背中からそっと押してくれるような、前向きなエネルギーにあふれている。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Up Around the Bend」は1970年にリリースされたシングルで、同年発売のアルバム『Cosmo’s Factory』にも収録されている。
この曲は、ジョン・フォガティがある日、ほんの2時間ほどで書き上げたと言われている。ギターリフが先に浮かび、その後で急速に歌詞とメロディを組み立てたというエピソードからも、インスピレーションに満ちた即興性がこの曲に宿っていることがわかる。
当時CCRは、アメリカで最も成功していたバンドのひとつでありながら、徹底した“反セレブ志向”を貫いていた。彼らは都会や流行から距離を置き、“ルーツ回帰”の姿勢を崩さずにいたが、「Up Around the Bend」はそんな彼らにしては珍しく、明快でラジオフレンドリーなポップロックの側面が強い。
しかしその明るさこそが、多くの人々にとってこの曲を「聴くだけで元気になれるアンセム」として記憶させている要因である。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「Up Around the Bend」の印象的な歌詞の一部と日本語訳を紹介する。
引用元:Lyrics © BMG Rights Management
There’s a place up ahead and I’m goin’
― この先に場所があるんだ、そして俺はそこへ向かっている
Just as fast as my feet can fly
― 足の動く限りのスピードでね
Come away, come away if you’re goin’
― 行くつもりなら、一緒に来いよ
Leave the sinkin’ ship behind
― 沈みゆく船なんて置いていこう
Come on the risin’ wind,
― 上昇する風に乗ってこい
We’re goin’ up around the bend
― 僕らはカーブの先へ向かっているんだ
4. 歌詞の考察
「Up Around the Bend」において象徴的なのは、“bend(曲がり角)”という言葉が持つ多義性である。
それは物理的に「道の先」だけでなく、人生の分岐点や、新しい何かが待っている未来を示唆するメタファーにもなっている。語り手は「Come away」と何度も呼びかけており、それは聞き手に対する誘いであると同時に、自分自身への鼓舞にも感じられる。
また、「Leave the sinkin’ ship behind(沈みかけた船を後にして)」というラインは、何かを捨てて前に進む覚悟を象徴している。そこには、希望だけではなく「過去への決別」「変化の痛み」も感じ取ることができる。
それでも、楽曲全体を貫いているのは楽観的な空気だ。風が吹き上げるように、「新しい景色」がもうすぐ見えてくるはず――そんな予感が、この曲のサウンドと歌詞の両方に染み渡っている。
その意味で、「Up Around the Bend」は旅立ちの歌であると同時に、“転機”に寄り添う応援歌でもあるのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Ramble On by Led Zeppelin
「旅」をテーマにした軽快なロックナンバーで、現実とファンタジーの狭間を自由に行き来する精神性が近い。 - Running on Empty by Jackson Browne
ツアー中の孤独と前進する意志を描いたアメリカン・ロック。CCRとは違ったトーンながら、共通するロード感覚がある。 - Born to Be Wild by Steppenwolf
解放感と疾走感にあふれるロックアンセム。バイクで走り抜けるような爽快さが「Up Around the Bend」に通じる。 - Go Your Own Way by Fleetwood Mac
新しい道を進む決意と、その背後にある葛藤を描いたナンバー。男女の関係に重ねた人生の選択がテーマ。
6. 特筆すべき事項:ライヴでの人気とサウンドの切れ味
「Up Around the Bend」は、CCRのライヴセットでも定番中の定番として演奏され、多くの観客を一気に巻き込むエネルギーを持つ楽曲であった。
イントロのギターリフは、フォガティの創作の中でも特に印象的で、ひとたび鳴ればその曲だとすぐにわかる。まるで合図のように空気が変わる瞬間をつくり出す、ロック史に残る“開幕”の一つである。
また、フォガティのボーカルはこの曲で一層シャープさを増しており、まるで風に向かって声を張り上げるような解放感がある。彼のシャウトは、ただの演奏以上の“説得力”を帯びており、聴く者に「本当に新しい場所へ行けるかもしれない」という気持ちを与えてくれる。
「Up Around the Bend」は、どこかへ向かっていく人、変わりたいと思っている人、何かを終えて次の扉を開こうとしている人にとって、今なお特別な意味を持ちうる曲である。それはCCRの中でも、希望の光が最も明るく差し込む瞬間なのかもしれない。
コメント