
1. 歌詞の概要
「Turn」は、イギリスのインディー・ロックバンド、The Wombatsが2018年にリリースした4作目のアルバム『Beautiful People Will Ruin Your Life』に収録された、成熟した恋愛の矛盾と魅力を静かに描いたラブソングである。
この曲で語られるのは、“理不尽だけど抗えない愛”の姿である。語り手は、恋人の性格や行動に対して理解不能だと感じながらも、その謎めいた性質に惹かれ、どこか依存的にすらなっている。恋人が彼を理解せず、時に傷つけるようなことをしても、それでも一緒にいたいという想いがにじみ出ており、まさに**“好きになってしまったら負け”という感情の混沌**を描いている。
「Turn」という言葉は、文字通りの「向きを変える」だけでなく、相手の些細な行動が自分の心を一瞬で揺さぶってしまうという意味にも取れる。つまりこの楽曲は、“自分を振り回す存在”に夢中になってしまった恋の心理を、静かに、でも確実に突きつけてくる。
2. 歌詞のバックグラウンド
The Wombatsは、2007年のデビュー以来、皮肉やユーモア、軽妙なインディー・ポップのリズムで人気を築いてきたが、アルバム『Beautiful People Will Ruin Your Life』では、より感情の深みや内省的な視点を伴った作品が増えている。「Turn」はその代表格であり、**これまでの“若さの衝動”から一歩引いた“成熟と複雑さ”**が感じられる。
マシュー・マーフィーはインタビューで、この曲について「恋人に振り回されながらも、それが快感になっているような状態を描いた」と語っており、その語り口からも、愛に対する諦観と肯定の共存がうかがえる。
楽曲のミュージックビデオは、宇宙的なモチーフやCGを取り入れた幻想的な世界観が特徴で、歌詞にある「I like the way your brain works(君の思考回路が好きだ)」というフレーズを視覚的にも表現しており、恋の摩訶不思議さと、魅力の説明不可能性を美しく映し出している。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、「Turn」の印象的なフレーズと和訳を紹介する。
I jump from thought to thought like a flea jumps to a light
考えから考えへと飛び回ってる、まるで光に向かうノミみたいにYou could give an aspirin the headache of its life
君といると、アスピリンでさえ頭痛を起こしそうだMaybe it’s the crazy that I’d miss
君の“狂気”こそ、失ったら寂しくなるのかもしれないIt won’t get better than this
これ以上の恋なんて、たぶんもうないI like the way your brain works
君の思考回路が、なんだか好きなんだI like the way you try
君がもがく姿が、愛おしいTo run with the wolves
群れからはぐれながらも、狼と走ろうとする君が
引用元:Genius Lyrics – The Wombats “Turn”
4. 歌詞の考察
この曲の歌詞には、愛における“理屈じゃない部分”への愛着が強く現れている。語り手は、恋人の言動や性格を完全には理解できていない。むしろ「君といるとアスピリンが頭痛を起こしそう」という比喩にあるように、一緒にいることで混乱し、翻弄され、ストレスさえ感じている。だがその“面倒くささ”すらも、愛おしく感じている。
このような矛盾した感情の在り方は、単なる恋の初期衝動ではなく、**関係性の中で時間をかけて育まれた“慣れ”や“あきらめに近い愛”**とも言える。恋人の不可解な行動に戸惑いながらも、それを否定せず、「それでも一緒にいたい」と感じてしまうこの関係性は、多くの現代人の恋愛観にフィットするのではないだろうか。
また、「Maybe it’s the crazy that I’d miss(君の狂気こそが恋しいのかも)」という一節には、“自分を振り回す存在”がいることで、自分もまた存在を確認しているという依存的な要素も見え隠れする。これは恋愛における“快楽と混乱の中毒性”を静かに語るものであり、ポップなメロディに隠された深いメッセージが心を打つ。
※歌詞引用元:Genius Lyrics – The Wombats “Turn”
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Somebody Else by The 1975
相手の気持ちが離れていく中で、それでも忘れられない想いを描く。複雑な愛の構造が共通。 - Electric Feel by MGMT
恋の不可思議さをエレクトロニックに描いた楽曲。快楽と混乱の美学が似ている。 - Tokyo (Vampires & Wolves) by The Wombats
同じバンドによる都会と孤独、逃避願望をテーマにした疾走曲。心理描写の深さが近い。 - Right Down the Line by Gerry Rafferty
不器用な愛を繰り返し支え続ける様子を描いた70年代の名バラード。成熟した恋愛像が通じる。
6. “複雑さこそが恋の魅力”──不完全なふたりのリアル
「Turn」は、The Wombatsがこれまで築いてきた“皮肉屋の青春賛歌”から一歩進み、大人になった自分たちの、より深く、よりややこしい愛のかたちを描いた作品である。
誰かを理解することは難しい。でも理解できないからこそ惹かれるという逆説。翻弄されながらも、ふとした瞬間に「でも好きなんだよな」と呟いてしまうような感情のリアルが、この曲にはある。
「Turn」はそんな**“理屈じゃ割り切れない恋”を静かに肯定するバラード**であり、聴く人に「面倒くさいけど、愛してる。それでいいじゃないか」と語りかけてくれる。複雑で、不完全で、でも確かにそこにあるふたりの関係。その温度を感じさせる、The Wombatsの新たな代表曲である。
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