1. 歌詞の概要
「Try」は、P!nkが2012年にリリースした6作目のスタジオ・アルバム『The Truth About Love』に収録されたバラード調のロック・ナンバーであり、愛に傷つきながらもなお、もう一度挑戦しようとする強い意志を描いたエモーショナルな楽曲です。タイトルの「Try」は文字通り「試みる」「挑戦する」という意味であり、恋愛において繰り返し傷ついても、それでも愛することを諦めない――そんな人間の脆さと強さが同時に描かれています。
歌詞は、恋愛関係の中で起きる痛み、混乱、恐れ、そしてそれを乗り越えようとする意志を、P!nkならではの率直かつ感情的な言葉で綴っています。ただ単に「頑張れ」と励ますのではなく、「傷つくことを恐れずにもう一度信じよう」という、より成熟した愛の形を語っており、大人の恋のリアルと、そこにある希望を描いた作品として、多くのリスナーの共感を呼びました。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Try」は、プロデューサーのBusbee(2019年逝去)とBen Westによって書かれた楽曲で、P!nkがその歌詞に深く共鳴し、アルバム『The Truth About Love』の中でも特にパーソナルな1曲として位置づけられました。アルバム全体が「愛とは何か?」というテーマを多角的に描いている中で、この「Try」は、愛の継続性と困難さに真正面から向き合うというメッセージを象徴する楽曲です。
また、ミュージックビデオでは、ダンサーであり現在の夫Carey Hartとの複雑な関係を反映したような、愛と暴力、引力と破壊の交錯を身体表現によって描き出しており、映像美と歌詞のシンクロニシティでも大きな評価を受けました。P!nkとダンサーのColt Prattesが激しくぶつかり合いながらも惹かれ合う姿は、「Try」のテーマ――“たとえ痛みを伴っても、なお愛に挑む”――を視覚的に強く印象づけます。
3. 歌詞の抜粋と和訳
引用元:Musixmatch – P!nk / Try
“Ever wonder about what he’s doing? / How it all turned to lies?”
「彼が今何をしているか、ふと思うことはない?/すべてが嘘になってしまった理由は?」
“Sometimes I think that it’s better / To never ask why”
「理由なんて聞かない方がいいって、時々思うの」
“Where there is desire, there is gonna be a flame”
「欲望があるところには、必ず火がともる」
“Where there is a flame, someone’s bound to get burned”
「火があれば、誰かが火傷する」
“But just because it burns doesn’t mean you’re gonna die / You gotta get up and try, try, try”
「でも、火傷したからって死ぬわけじゃない/だから立ち上がって、また挑戦するのよ」
このサビの部分は、「愛には痛みがつきもの。でも、それでも前に進む価値がある」と訴える、まさにP!nkらしい強さと優しさの詰まったメッセージです。
4. 歌詞の考察
「Try」の最大の魅力は、愛することの“リスク”と“価値”の両方を描いている点にあります。恋愛は理不尽で、時に自分を傷つけ、壊すような体験にもなりうる。しかし、それでも人は愛することをやめられない――そして、そこにこそ人間の本質的な強さがあるのだと、P!nkは語っています。
「火があるところに火傷はつきもの」というメタファーは、愛の本質を端的に捉えた印象的な言葉であり、愛することに伴う痛みを恐れるのではなく、そのリスクを引き受けた上で、それでもなお歩き出すことが大切だと教えてくれます。
この曲はまた、女性の自立と自己回復というテーマにもつながっており、単に“男に裏切られた女の歌”ではなく、“傷ついたすべての人が再び立ち上がるための応援歌”としても多くの共感を得ています。P!nkが長年提示してきた「感情に正直に生きる」姿勢が、ここでも一貫して強く打ち出されています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Skyscraper” by Demi Lovato
崩れ落ちた後に自分を取り戻すというテーマが共通。 - “Fighter” by Christina Aguilera
傷つけられた経験を強さに変えるというメッセージソング。 - “Warrior” by Demi Lovato
痛みを乗り越えた後の自己肯定を描いたバラード。 - “Stronger (What Doesn’t Kill You)” by Kelly Clarkson
逆境を越えて成長する力を歌ったアップテンポなアンセム。 -
“Elastic Heart” by Sia
愛と痛み、再起のモチーフが交錯する力強いナンバー。
6. 愛することの痛みと誇り――“Try”が描く再生の物語
「Try」は、P!nkのキャリアの中でも特に多くの人々に“再び立ち上がる力”を与えた楽曲です。愛に破れた人、裏切られた人、自分を見失った人たちに向けて、「たとえ焼け焦げたとしても、また火を灯していい」と語りかけるこの曲は、自己回復のバラードとして、ロックバラード史に残る存在感を放っています。
感情を否定せず、過去を恥じることなく、それでも「Try=もう一度やってみる」ことを選ぶ――その選択の尊さと美しさを、P!nkはこの曲でまっすぐに表現しています。
「Try」は、痛みを知るすべての人に贈る、希望と勇気の再生バラード。壊れても、燃えても、なお愛を信じる――その姿こそが、人生の中で最も誇らしい“挑戦”なのだ。
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