Tossing Tears by Twin Peaks(2017)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

『Tossing Tears』は、Twin Peaksツイン・ピークス)が2017年にスタートさせたシングル連続リリース企画「Sweet ’17 Singles」の第一弾として発表された楽曲であり、彼らのディスコグラフィーの中でもとりわけソウルフルでエモーショナルな一曲である。バンドのギタリストでありボーカリストのColin Croomがメインボーカルを務め、彼の滑らかでどこか哀愁を帯びた歌声が、情熱と切なさを交錯させながらリスナーの胸に染み入る。

歌詞は、過去の恋愛における後悔と執着、そして“もう戻れない”と知りながらも感情を抑えきれない語り手の心情を描いている。「涙を投げつける(Tossing Tears)」という印象的な表現は、愛の終焉に直面した者のもがきや、自分の感情すら持て余す不安定な心理状態を象徴している。過ぎ去った関係の影に今なお囚われている自分を見つめつつ、その想いを断ち切ることもできない――そんな中間地点にいる語り手の揺れる想いが、淡々と、しかし激しく描かれる。

2. 歌詞のバックグラウンド

2017年、Twin Peaksは12インチレコードによる7か月連続のシングル・シリーズ「Sweet ’17 Singles」をスタートさせ、バンドの多面的な音楽性を見せる楽曲群を次々と発表していった。『Tossing Tears』はその第一作としてリリースされ、バンドがこれまでのガレージロック中心のスタイルから一歩踏み出し、より洗練されたアレンジや叙情的な楽曲構成を志向していることを明確に示した作品となった。

特にこの曲で注目されるのは、Colin Croomのソングライティングの深さと、彼がボーカルをとることで生まれるTwin Peaksの“別の顔”である。Croomはキーボード奏者として知られているが、ここでは70年代ソウルやAORを彷彿とさせるメロウで滑らかなヴォーカル・ラインを披露しており、従来のバンドの粗削りなガレージサウンドとは異なる成熟した空気感を演出している。

このように『Tossing Tears』は、Twin Peaksが“ノスタルジアと現代性”を両立させることに成功した楽曲であり、バンドとしての表現力の幅を大きく広げた転機となった。

3. 歌詞の抜粋と和訳

I’m tossing tears into the ocean
涙を海へと投げ込んでる

Trying to forget what you meant to me
君が僕にとってどれほど大切だったか、忘れようとしてる

「海に涙を投げる」というイメージは、個人的な痛みが広大な世界に溶けていく様を描いていると同時に、自分の想いが相手に届かない虚しさも感じさせる。

And now you’re gone and I’m still here
君はいなくなったけど、僕はまだここにいる

Waiting on a memory
ただ思い出にすがって待ち続けているだけ

“今”ではなく、“かつての記憶”に自分を留めてしまう感覚。進めない心と、過去に縛られる痛みが静かに語られる。

I don’t want to feel the same
もうこんな気持ちにはなりたくない

But you’re in every song I sing
でも、どの歌を歌っても、君がいる

音楽すらも忘れさせてくれない――愛の記憶がどこまでも追ってくる、その逃れられなさを象徴するフレーズ。

引用元:Genius – Twin Peaks “Tossing Tears” Lyrics

4. 歌詞の考察

『Tossing Tears』における最も印象的なテーマは、“感情の余熱”である。恋が終わったことを理解していながらも、その感情が完全に消えてくれるわけではない。むしろ、終わったあとにこそ、思い出は強く残り、それが今を生きる足かせになってしまう。この曲はそのもどかしさを、明確な物語ではなく、感情の断片で丁寧に描いている。

また、曲全体に流れる“甘いメロディ”と“くぐもった切なさ”のバランスが絶妙で、歌詞の悲しみが過剰にドラマティックに表現されることなく、むしろ淡々と、冷静に語られることで、リアリティと普遍性が生まれている。

“涙を投げる”という行為は、決して誰かに見せるためのものではない。むしろ、それは内面の儀式であり、自分自身と向き合うプロセスでもある。Twin Peaksはこの曲で、「失った愛をどう扱うか」という難題に対し、派手な答えではなく、“そのまま抱えていく”という静かな解決策を提示している。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • “These Days” by Nico
    喪失と記憶の狭間を静かに彷徨う、内省的なフォーククラシック。
  • “Blue Coupe” by Twin Peaks
    バンド自身の他の楽曲で、少年時代の愛と哀愁を丁寧に描いた名バラード。
  • “You and Your Friends” by Peach Pit
    失恋と友情が交錯する、夢のようなギター・ポップ。
  • “Angeles” by Elliott Smith
    静かなギターと囁くような歌声で語られる孤独と痛み。

6. “涙を投げる”という行為の意味

『Tossing Tears』というタイトルが示すように、この楽曲は「感情との折り合いのつけ方」そのものを描いている。泣き叫ぶでもなく、感情を爆発させるでもなく、涙をただ“投げる”という行為。それは、相手に届くことを期待しない、ある意味では一方的で、それゆえに誠実な感情の表出である。

Twin Peaksはこの曲で、“失恋のその先”にある感情の停滞と回復のプロセスを、ポエティックかつ音楽的に提示した。過去を手放すとはどういうことか、愛を忘れるとはどういうことか――その問いに明確な答えを与えるのではなく、ただ静かに“共にあること”を選んだその姿勢が、この曲の本当の美しさである。


歌詞引用元:Genius – Twin Peaks “Tossing Tears” Lyrics

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