Times Like These by Foo Fighters(2002)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Times Like These」は、Foo Fightersが2002年に発表した4thアルバム『One by One』に収録された楽曲であり、再生と自己受容をテーマにした、静かな希望を湛えたロックアンセムである。

曲の冒頭で繰り返される「It’s times like these you learn to live again(こういう時こそ、人はもう一度生き方を学ぶ)」というラインは、困難の中でこそ、自分自身の在り方を見つめ直すことができるというメッセージを力強く、しかし温かく提示している。

この曲は、“何かを失ったあと”の時間を歌っている。
壊れたものを嘆くのではなく、その破片を拾いながら前に進んでいく人間の姿を描いているのだ。
それは個人的な喪失体験にとどまらず、社会的な混乱や痛み、あるいはバンドとしての再構築の物語とも重なっている。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Times Like These」が生まれた背景には、Foo Fightersのバンドとしての危機的状況があった。
2001年、前作『There Is Nothing Left to Lose』の成功の後、メンバー間の摩擦やレコーディングへの不満から、一時期バンドは活動停止状態に陥っていた。

この曲は、その不安定な時期にDave Grohlが書いたものであり、バンドが再び集まって録音されたアルバム『One by One』の再出発を象徴する作品となった。
つまり「Times Like These」は、Foo Fightersというバンドそのものが“生き直す”ための楽曲だったのだ。

さらにこの曲は、2000年代初頭という**世界的に不安定な空気(特に9.11後のアメリカ)**とも重なり、多くの人々にとって“困難の中の支え”として機能した。
そのため、のちに災害支援やチャリティの文脈でもたびたび使用されるようになる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

引用元:Lyrics © BMG Rights Management

It’s times like these you learn to live again
― こういう時こそ、人はもう一度生き方を学ぶ

It’s times like these you give and give again
― こういう時こそ、人は繰り返し与えようとする

It’s times like these you learn to love again
― こういう時こそ、人はもう一度愛し方を学ぶ

It’s times like these time and time again
― こういう時は、何度でも、何度でもやって来る


I, I’m a new day rising
I’m a brand new sky to hang the stars upon tonight

― 僕は、新しく昇る一日
今夜、星を掲げる真新しい空なんだ

But I, I’m a little divided
Do I stay or run away and leave it all behind?

― でも、僕は少し揺れている
ここに留まるべきか、逃げ出すべきか

4. 歌詞の考察

「Times Like These」は、自己再構築の詩である。

人生がうまくいかない時、失敗した時、関係が壊れた時、世界が揺れている時――そんな“times like these”に、私たちは“また生きること”を学び直す。
そしてこの曲が優れているのは、そうした希望を、押しつけがましくないやさしさと誠実さで歌っていることである。

中でも「I’m a new day rising(僕は新しく昇る一日)」という表現は、自分自身が変化の主役であるという能動的な覚悟を象徴している。
そしてその直後に、「Do I stay or run away?(とどまるか、逃げるか?)」と問いかけることで、強さのなかにある弱さ、決意のなかにある迷いを隠さずに提示する。
そのバランスこそが、この曲にリアルな人間味を与えている。

また、「learn to love again」というラインには、単に恋愛という意味を超えた、**“世界を愛すること”“自分を再び信じること”**への呼びかけが込められている。
それは、愛することに疲れ、信じることに傷ついた者たちへの、静かで優しい手紙のようでもある。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Walk by Foo Fighters
     “歩き続けること”の大切さをテーマにした、再起と希望のロックソング。「Times Like These」の精神的続編のような存在。

  • Fix You by Coldplay
     喪失と再生をテーマにしたバラード。静かな慈愛と共に人を支えるようなトーンが共通している。

  • Run by Foo Fighters
     より激しく現実に立ち向かう姿勢を描いたロックチューン。困難の先にある決意を爆発させている。

  • Rise by Eddie Vedder
     内なる光と静かな強さを歌ったアコースティックバラード。人生の再出発を静かに祝福する曲。

6. 優しさを燃料にして、もう一度歩き出す歌

「Times Like These」は、Foo Fightersにとって**崩壊しかけた自分たちを再構築するための“救いの歌”**だった。
それは同時に、世界が混乱し、人々が孤独に陥るような時代に、“一人でもまた立ち上がろうとする者たち”への讃歌ともなった。

この曲が伝えてくるのは、“強さ”とは、決して完璧であることではないということ。
迷いながらでも歩き出すこと。信じられなくても、もう一度愛そうとすること。
そのすべてが、“生き直す”という行為なのだ。

「Times Like These」は、人生の崩れたページに、新しい文字を刻むための静かなリズムである。
それは燃えるような闘志ではなく、深く呼吸するような、自分自身との“再契約”の歌なのだ。

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