アルバムレビュー:The World from the Side of the Moon by Phillip Phillips

発売日: 2012年11月19日
ジャンル: フォークロック、ポップロック


アメリカン・アイドルからの飛躍——Phillip Phillipsのデビュー作

アメリカのシンガーソングライター Phillip Phillips が、2012年の『American Idol』シーズン11で優勝した直後にリリースしたデビューアルバム The World from the Side of the Moon は、彼の音楽的アイデンティティを確立した作品だ。

優勝シングル Home が大ヒットし、アメリカのポップロック界に新たなフォーク・ロックの風を吹き込んだ。Dave Matthews Bandの影響を強く受けたサウンドに、Phillipsのラフで温かみのあるボーカルが加わり、シンプルながらも力強い楽曲が並んでいる。

ポップロックの枠に収まりつつも、アコースティック楽器やストリングスを効果的に使い、オーガニックな雰囲気を醸し出しているのが特徴だ。デビュー作でありながら、洗練されたアレンジとキャッチーなメロディで、多くのリスナーを惹きつけた。


全曲レビュー

1. Man on the Moon

アルバムの幕開けを飾るエネルギッシュなトラック。ダイナミックなギターリフと力強いボーカルが、Phillipsの音楽スタイルを象徴している。

2. Home

彼の代表曲であり、アルバムのハイライト。シンプルながら心に響くメロディと、歌詞の持つ温かみが特徴。『アメリカン・アイドル』の優勝曲として発表された後、CMや映画にも使用され、世界的にヒットした。

3. Gone, Gone, Gone

Home に続くシングル曲で、アップテンポでエモーショナルなナンバー。ストリングスとアコースティックギターが織りなすサウンドが印象的で、愛と支え合いをテーマにした歌詞が心に響く。

4. Hold On

バラード調の楽曲で、Phillipsの感情豊かなボーカルが際立つ。ゆったりとしたテンポと美しいメロディが、リスナーを包み込む。

5. Tell Me a Story

シンプルなアコースティックギターから始まり、次第に広がりを見せる楽曲。人生のストーリーを語るような歌詞と、フォークの要素が融合している。

6. Get Up Get Down

ブルージーなリズムが特徴の軽快なナンバー。リズムのグルーヴ感が心地よく、ライブで盛り上がりそうな一曲。

7. Where We Came From

ノスタルジックな雰囲気を持つ曲で、故郷や過去への想いが込められている。ストリングスのアレンジが、エモーショナルな歌詞を引き立てている。

8. Drive Me

ロック色の強い楽曲で、ギターのリフとダイナミックなドラムが印象的。アルバムの中でも特にエネルギッシュなトラックの一つ。

9. Wanted Is Love

ややジャズの要素を感じさせるメロディが特徴的。Phillipsの多面的な音楽性が垣間見える楽曲。

10. Can’t Go Wrong

ポジティブな雰囲気を持つアップテンポな楽曲。リズミカルなギターとリフレインが心地よい。

11. A Fool’s Dance

アルバムの中でも特にアコースティックな色合いが強いバラード。フィンガーピッキングが際立ち、感情豊かなボーカルが胸に響く。

12. So Easy

アルバムの締めくくりにふさわしい、穏やかで優しい雰囲気の楽曲。彼の持つ親しみやすい音楽性が感じられる。


総評

The World from the Side of the Moon は、Phillip Phillipsのアーティストとしての出発点として申し分のないデビュー作であり、ポップロックとフォークの要素を融合させた、心地よいサウンドが特徴的だ。

特に HomeGone, Gone, Gone のような楽曲は、聴く者に安心感を与え、リリース当時のリスナーだけでなく、今もなお多くの人々に愛されている。全体的にアメリカン・フォークの伝統を受け継ぎながらも、ポップロックの洗練されたプロダクションを取り入れており、聴きやすく親しみやすい仕上がり となっている。

おすすめのリスナー:

  • American Idol 出身アーティストの音楽に興味がある人
  • フォークポップやポップロックが好きな人
  • 温かみのある歌詞とキャッチーなメロディを求める人

おすすめアルバム

1. Mumford & Sons – Babel (2012)

アコースティック主体のフォークロックで、Phillipsの音楽と共通する要素が多い。

2. Dave Matthews Band – Crash (1996)

Phillip Phillipsが影響を受けたバンドで、ジャムバンド的な要素が魅力的な作品。

3. The Lumineers – The Lumineers (2012)

シンプルなアコースティックサウンドとエモーショナルな歌詞が、Phillipsの音楽と相性が良い。

4. Vance Joy – Dream Your Life Away (2014)

同じくアコースティック主体のフォークポップ作品で、Phillipsのファンにおすすめ。

5. Ed Sheeran – x (2014)

シンガーソングライターとしてのストーリーテリングやアコースティックサウンドが共鳴する作品。


The World from the Side of the Moon は、Phillip Phillipsのシンプルながらも心に響く音楽の魅力が詰まったデビュー作だ。『American Idol』優勝者としての華々しいデビューながら、彼の音楽はより深く、温かみのあるストーリーテリングとサウンドで、多くの人々の心を捉えた。ポップロックの中にフォークの素朴さを感じさせるこの作品は、今なお聴く価値のある一枚だ。

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