発売日: 1971年11月1日
ジャンル: ファンク、サイケデリックソウル、サイケデリックロック
There’s a Riot Goin’ Onは、Sly & The Family Stoneが1971年にリリースしたアルバムであり、彼らの音楽的進化とともに、当時の社会状況に強く影響されたダークで内省的な作品である。1960年代後半の楽観的なムードから一転し、ファンクとサイケデリックソウルに深い陰影を加えたサウンドが特徴だ。前作Stand!が平等と希望を掲げた明るい作品だったのに対し、There’s a Riot Goin’ Onは、混乱と失望感に満ちた時代の空気を反映している。特に、当時のアメリカ社会における政治的・人種的緊張を背景に、Sly Stoneはより個人的かつ内向的な音楽を作り上げた。
このアルバムは、ファンク、サイケデリックソウル、ロックの要素を融合させながらも、独特の静謐さと不穏なエネルギーが漂う。タイトル自体が、60年代の抗議活動や公民権運動の終焉と、それに続く混乱を象徴している。
各曲ごとの解説:
- Luv N’ Haight
アルバムのオープニングを飾るファンキーなナンバーで、グルーヴィーなベースラインとSly Stoneの苦悩に満ちたボーカルが印象的。タイトルは「Love and Hate(愛と憎しみ)」の掛け言葉であり、歌詞も内面の葛藤を反映している。複雑な感情がファンキーなリズムに乗せられ、アルバム全体のトーンを設定している。 - Just Like a Baby
スローで感傷的なバラード。Sly Stoneの低く、囁くようなボーカルとミニマルなアレンジが、この曲を特別なものにしている。抑えたドラムとベースが、シンプルながらも重みのあるグルーヴを生み出している。 - Poet
短いながらも力強い楽曲で、Slyの内省的な歌詞と繰り返しが印象的。シンプルなリズムセクションに、ほのかにサイケデリックな要素が加わり、実験的なサウンドが楽曲に深みを与えている。 - Family Affair
アルバムの代表曲であり、Sly & The Family Stone最大のヒット曲の一つ。ファンキーでありながらも穏やかなトラックに、家族の絆とその複雑さを歌った歌詞が絡む。ビートは控えめながらも、ベースラインとエレクトリックピアノがしっとりとしたグルーヴを生み出している。Sly Stoneの冷静で内省的なボーカルが、楽曲全体に落ち着いた雰囲気をもたらしている。 - Africa Talks to You (“The Asphalt Jungle”)
ファンキーでありながらも、サイケデリックな要素が色濃く反映された大作。約8分にわたる楽曲の中で、社会問題と個人的なテーマが混ざり合い、複雑なリズムとメロディが展開される。力強いベースラインが曲全体を支え、Slyのボーカルが重くのしかかるように響く。 - There’s a Riot Goin’ On
タイトル曲だが、意図的に無音のトラックとなっている。これは、当時の抗議活動や社会的な激動を象徴し、音楽的な表現以上に、タイトルそのものがメッセージを伝えている。 - Brave & Strong
ファンキーでタイトなリズムセクションが特徴の楽曲。勇気と強さをテーマにした歌詞が、Sly Stoneの落ち着いたボーカルによって力強く伝えられる。ホーンセクションとエレクトリックギターが絡み合い、曲にエネルギーを与えている。 - (You Caught Me) Smilin’
明るさと軽やかさが感じられる曲で、ファンクグルーヴとソウルフルなメロディが心地よく融合している。Sly Stoneの優しいボーカルと、キャッチーなメロディが印象的な一曲だ。 - Time
スローテンポで内向的な雰囲気を持つ楽曲。時間の流れをテーマに、Slyの個人的な思いが歌詞に込められている。シンプルなリズムと控えめなアレンジが、曲に瞑想的な空気を与えている。 - Spaced Cowboy
カントリーミュージックとファンクを組み合わせたユニークな楽曲。Sly Stoneのヨーデル風のボーカルと、ファンキーなベースラインが絶妙に組み合わさり、実験的でありながらも楽しい一曲となっている。 - Runnin’ Away
アップテンポでありながら、歌詞には逃避や絶望感が漂っている。軽やかなメロディとは裏腹に、深いテーマを持った楽曲で、Sly Stoneのボーカルが微妙な感情の変化を見事に表現している。 - Thank You for Talkin’ to Me Africa
アルバムの締めくくりを飾るファンキーなトラック。彼らの代表曲「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」のリワーク版であり、より深みのあるファンクサウンドが展開されている。スローで重厚なリズムが、アルバム全体のダークで内省的なトーンを引き継いでいる。
アルバム総評:
There’s a Riot Goin’ Onは、Sly & The Family Stoneの音楽的な転換点を示すアルバムであり、社会的・個人的な不安を表現した深い作品だ。前作の楽観的で明るいサウンドとは異なり、ここではより内向的で暗いトーンが前面に出ている。ファンク、ソウル、サイケデリックが融合したサウンドは、時にミニマルでありながらも重厚で、当時のアメリカ社会における緊張感や混乱を映し出している。
このアルバムは、商業的にも成功を収め、Sly & The Family Stoneがファンクとサイケデリックソウルの巨匠であることを証明した。また、現代のアーティストにも多大な影響を与え、ファンクミュージックの進化に大きく貢献した一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- What’s Going On by Marvin Gaye
同じく1971年にリリースされた社会的テーマを扱うアルバム。Sly & The Family Stoneの内省的な音楽とマーヴィン・ゲイの叙情的なメッセージが共鳴する名作。 - Innervisions by Stevie Wonder
スティーヴィー・ワンダーが政治的・社会的メッセージを強く打ち出したアルバム。ファンクとソウルの要素が深く組み込まれており、There’s a Riot Goin’ Onと共鳴する。 - Fresh by Sly & The Family Stone
1973年にリリースされたこのアルバムは、より軽快なファンクとソウルを取り入れつつ、実験的なサウンドが楽しめる。Sly Stoneの多才な音楽性が際立つ作品。 - Curtis by Curtis Mayfield
カーティス・メイフィールドによるファンクとソウルの名盤。社会的メッセージと個人的な内省がテーマとなっており、Sly & The Family Stoneのファンにはおすすめの一枚。 - Superfly by Curtis Mayfield
同じくカーティス・メイフィールドの代表作で、映画『Superfly』のサウンドトラック。ファンクと社会的メッセージが融合した作品で、Slyの世界観に通じる部分が多い。
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