The Number of the Beast by Iron Maiden（1982）楽曲解説

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. 悪夢から生まれたメタルの黙示録

1. 歌詞の概要

Iron Maidenの「The Number of the Beast」は、1982年にリリースされた3rdアルバム『The Number of the Beast』のタイトル曲であり、バンドを一躍世界的成功へと導いた代表作である。歌詞は黙示録的な悪夢を描いており、「666＝獣の数字」という聖書『ヨハネの黙示録』の象徴をモチーフとしている。

主人公は夢の中で地獄の光景を目撃し、獣や悪魔に支配された世界に引き込まれていく。その恐怖と背徳的な魅力に翻弄されながらも逃れられない姿が描かれ、聖書的イメージとホラー映画的演出が融合している。曲全体を貫くのは「恐怖と陶酔の境界線」であり、聴き手をダークな幻想世界へと導く。

2. 歌詞のバックグラウンド

「The Number of the Beast」はスティーヴ・ハリス（ベース）が作詞作曲した楽曲で、彼が見た悪夢からインスピレーションを得たと言われる。その夢は映画『ダミアン／オーメン2』を観た後に見たもので、そこから黙示録的な恐怖のイメージを楽曲に昇華させた。

この曲を含むアルバム『The Number of the Beast』は、ブルース・ディッキンソンを新たにヴォーカルに迎えて制作された最初の作品であり、バンドのドラマティックでシアトリカルなスタイルを確立した。リリース当時、アメリカでは「悪魔崇拝的」として宗教団体から激しい批判を浴びたが、逆にその論争が話題を呼び、アルバムは全英1位を獲得し、Iron Maidenの国際的ブレイクスルーとなった。

ライブでは常に定番曲として演奏され、イントロのブルース・ディッキンソンの語りとともに、観客を熱狂させる「儀式」のような存在になっている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

（歌詞引用元：Iron Maiden – The Number of the Beast Lyrics | Genius）

Woe to you, oh earth and sea
災いあれ、大地と海よ

For the Devil sends the beast with wrath
悪魔は怒りを持って獣を送り込む

Because he knows the time is short
彼は時が短いことを知っているのだ

Let him who hath understanding reckon the number of the beast
理解ある者よ、その獣の数字を数えよ

For it is a human number
それは人間の数字であり

Its number is six hundred and sixty six
その数字は666である

この有名なイントロは聖書『黙示録』を引用したものであり、楽曲全体の不気味で神秘的な雰囲気を決定づけている。

4. 歌詞の考察

「The Number of the Beast」の歌詞は、単なる悪魔崇拝ではなく「恐怖の幻想」を描いたものである。主人公は獣や悪魔に取り囲まれた夢に囚われ、狂気と陶酔の境界で翻弄される。これは人間が抱える「禁忌への魅力」や「闇に惹かれる本能」を象徴している。

また、スティーヴ・ハリス自身が語っているように、この曲は実際の宗教的主張ではなく、夢や映画から得たイメージをシアトリカルに展開したものである。しかし、その強烈なイメージと「666」という象徴は、当時の宗教保守層にとって挑発的に映り、論争を呼んだ。結果的にIron Maidenは「悪魔崇拝バンド」というレッテルを貼られたが、それがバンドの反逆的イメージを強化し、ファンの熱狂をさらに煽った。

音楽的には、ギャロッピング・リズム、緊張感あるリフ、そしてディッキンソンの演劇的なボーカルが一体となり、曲全体を「黙示録的な叙事詩」として成立させている。メイデンの代表的様式である「物語性」「劇的展開」「スピード感」がここで完成しており、後の大作志向の基盤となった。