アルバムレビュー:The Lexicon of Love by ABC

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1982年6月21日
ジャンル: ニュー・ロマンティック、シンセ・ポップ、アート・ポップ


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概要

『The Lexicon of Love』は、ABCが1982年に発表したニュー・ロマンティックの代表作であり、煌びやかなオーケストレーションとシンセ・ポップの洗練が特徴となっている。

このアルバムは、80年代初頭の英国音楽シーンの華やかさと感傷を象徴する作品として高く評価されている。
ABCは当時、新たに登場したMTV世代に向けて、ヴィジュアルと音楽の両面でインパクトを与えることを意図していた。

本作のプロデュースを務めたのは、当時新進気鋭だったトレヴァー・ホーン。彼の手腕により、ストリングスやホーンセクションが大胆に導入され、豪奢なサウンドスケープが構築された。
ストリングス編曲にはアン・ダッドリーが参加し、のちにArt of Noiseのメンバーとしても知られることになる。

ロマンティックでありながらも自己批評的な歌詞、そして過剰なまでにスタイリッシュな演出は、ポスト・パンク以後のポップ・ミュージックにおける「知性と感傷」の新しい均衡点を示した。

ABCにとってはデビュー作でありながら、彼らの最大の成功作となり、イギリスではチャート1位を獲得。
「Poison Arrow」や「The Look of Love」などのヒット曲が連続して生まれ、バンドの地位を一気に確立した。

この時代は、ブリティッシュ・インヴェイジョンの第二波とも言えるMTV時代の幕開けでもあり、本作はその波に乗る形でアメリカでも一定の成功を収めた。
カルチャー・クラブやデュラン・デュランといった同時代のバンドとも共鳴しつつ、ABCはよりオーケストラルで演劇的な方向に舵を切った点がユニークである。


全曲レビュー

1. Show Me

アルバムの幕開けを飾るこの曲は、スウィープするシンセとダンス・ビートでリスナーを一気に非現実的なラブ・ドラマへと引き込む。
恋愛に対する焦燥感と期待が交錯する歌詞が、後の展開を予感させる導入部として機能している。

2. Poison Arrow

“あなたは毒矢を放った”という直喩は、愛の裏切りと未練をポップなメロディで包み込む。
ホーンの炸裂とコーラスのユニゾンが、感情の高まりを巧みに演出する代表曲のひとつである。

3. Many Happy Returns

ミッドテンポで進行する本曲は、過ぎ去った愛を皮肉とともに回想する構成。
“Happy Returns”という言葉が持つ二重の意味が、過去と現在を交差させる。

4. Tears Are Not Enough

アルバム以前にシングルとして先行リリースされた本曲は、よりニュー・ウェイヴ色が濃く、ギターのカッティングやスラップ・ベースが印象的。
涙だけでは足りない、という主張が感情の複雑さを浮き彫りにする。

5. Valentine’s Day

タイトルが示す通り、恋愛の儀式化された側面を皮肉るような内容。
浮遊感のあるストリングスと、ダンサブルなリズムのコントラストが心地よい。

6. The Look of Love (Part One)

アルバムのハイライトにして最大のヒット曲。恋のときめきと苦悩を、煌びやかなポップ・アレンジで包み込む。
“Who broke my heart?” という問いかけから始まるリリックが、感情の渦を鮮やかに描き出す。

7. Date Stamp

電子音とホーンが絡み合うサウンドで、恋愛の消費主義的側面を批評。
愛情すらも商品化される社会への鋭い風刺が込められている。

8. All of My Heart

本作の中で最もエモーショナルなバラード。別れを受け入れる過程での誠実な葛藤が、シンプルなメロディに乗せて描かれる。
アン・ダッドリーによるピアノのアレンジも秀逸である。

9. 4 Ever 2 Gether

ユーモラスなタイトルとは裏腹に、関係の儚さと持続への願望を語るナンバー。
コーラスとシンセが織りなす軽快なグルーヴが、軽妙さを演出する。

10. The Look of Love (Part Four)

同名曲のインストゥルメンタル・リプライズ。幕を閉じるにふさわしい、余韻を感じさせる締めくくりとなっている。


総評

『The Lexicon of Love』は、ABCが一枚目にして到達した完成形とも言えるポップ・アルバムである。

その音楽性は単なる商業的成功を超えて、80年代ポップの美学を再定義した存在として重要である。
愛という普遍的なテーマを、シニカルな視線と劇的なサウンドで描き出すこの作品は、聴く者に「感情とは演出である」という一種の覚悟を突きつける。

トレヴァー・ホーンのプロデュースが持ち込んだ“シネマティック・ポップ”の感覚は、後のPet Shop Boysやティアーズ・フォー・フィアーズといったアーティストたちにも大きな影響を与えた。

ABCが描いた愛の辞典(Lexicon)は、決して甘くはない。むしろ失恋や傷心、孤独や後悔といったネガティブな感情を、美しくパッケージしてリスナーに差し出す。
その大胆さ、そして知的な構築性は、ポップ・ミュージックがただの娯楽にとどまらないことを示している。

今日においてもそのサウンドとテーマ性は色褪せず、愛について語る上での“教本”のような存在なのかもしれない。


おすすめアルバム(5枚)

  1. Duran Duran – Rio (1982)
     同時代のニュー・ロマンティック代表作。ABCとは異なる方向で映像美とサウンドを融合。

  2. Roxy MusicAvalon (1982)
     成熟したロマンティシズムと洗練されたアレンジが共鳴する。

  3. Spandau Ballet – True (1983)
     ソウルとニュー・ウェイヴをブレンドした感傷的なポップスの好例。

  4. Pet Shop Boys – Actually (1987)
     ABCの知的ポップ路線をさらに発展させたエレクトロ・ポップの名盤。

  5. Tears for FearsSongs from the Big Chair (1985)
     感情と哲学をポップに昇華した代表作として、ABCの系譜を感じさせる。


制作の裏側(Behind the Scenes)

本作のサウンドの根幹を支えたのは、伝説的プロデューサー、トレヴァー・ホーンの斬新な手法である。
録音はロンドンのSarm East Studiosで行われ、デジタル技術と生演奏の融合が試みられた。

とりわけ注目すべきは、アン・ダッドリーによるオーケストラ・アレンジと、ルイス・ジャーディンによるドラムプログラミング。
このクラシカルとテクノロジーの融合が、唯一無二のドラマ性を生み出している。

『The Lexicon of Love』は、ただのポップ・アルバムではない。
音の一つひとつが“演出”として緻密に配置された、視覚的とも言える音楽体験なのだ。

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