アルバムレビュー：The Christmas Present by Robbie Williams

アルバムレビュー

2025.05.19

発売日: 2019年11月22日
ジャンル: クリスマス・ポップ、スウィング、ジャズ、トラディショナル・ポップ

概要
全曲レビュー（主要曲中心に抜粋）
総評
おすすめアルバム（5枚）
ビジュアルとアートワーク

概要

『The Christmas Present』は、Robbie Williamsが2019年にリリースした初の本格クリスマス・アルバムであり、2枚組・全28曲というボリュームで構成された“超大作”である。
このアルバムは「Past（過去）」と「Present（現在）」の2部構成となっており、前半にはスタンダードなクリスマス・クラシックのカバーが並び、後半にはオリジナル曲が多くを占めるという構成。
プロデュースは長年のパートナーGuy Chambersが担当し、スウィング、ジャズ、ソウル、ポップスを横断するロビーらしい贅沢なエンターテイメント作品に仕上がっている。

ゲストにはJamie Cullum、Rod Stewart、Bryan Adams、Tyson Furyらが参加し、多彩な音楽性とキャラクターが交差する“クリスマス・キャバレー”のような世界観が展開。
商業的にも成功を収め、UKチャートでは1位を獲得。「クリスマス＝懐かしさと今をつなぐ記憶の祭典」というテーマを、自身の人生と重ねながら描いた深みのある祝祭作品である。

全曲レビュー（主要曲中心に抜粋）

【Disc 1 – The Christmas Past】

1. Winter Wonderland

軽快なスウィングアレンジが心地よい定番クリスマスソングのカバー。
Robbieのショーマンシップが全開で、まるで映画のオープニングのように幕を開ける。

3. Merry Xmas Everybody (feat. Jamie Cullum)

Sladeの名曲をジャジーかつグルーヴィに再構築。
Jamie Cullumとの掛け合いが楽しく、原曲のエネルギーを残しつつ新鮮に蘇らせている。

4. Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!

Frank Sinatra調の柔らかなアレンジで、夜の暖炉のような温もりを感じさせる一曲。
ヴィンテージなロビーの魅力が滲み出る。

5. The Christmas Song (Chestnuts Roasting on an Open Fire)

正統派ジャズバラードで歌い上げる、珠玉のクラシックカバー。
センチメンタルなムードが、ロビーの成熟したヴォーカルにぴったりと重なる。

7. It’s a Wonderful Life (feat. Poppa Pete)

父Pete Conwayとの親子デュエット。
“家族と祝うクリスマス”というテーマが、まさにこのアルバムの核心を象徴する温かな一曲。

【Disc 2 – The Christmas Future】

1. Time for Change

オリジナル曲としてアルバムの後半を開くエモーショナルなバラード。
「変わるときが来た」――というリリックが、年の終わりと新たな希望を重ね合わせる。

2. Idlewild (feat. Jamie Cullum)

クリスマスの街を舞台にした、スモーキーで哀愁漂うジャズ・ポップ。
Cullumのピアノとロビーの語りが、映画のワンシーンのような空気感を生む。

3. Merry Kissmas

ユーモアとキャッチーなコーラスが光る、“ポップ版・恋するクリスマス”。
陽気で明るく、誰もが口ずさめる新定番になりうる楽曲。

5. Bad Sharon (feat. Tyson Fury)

ヘビー級ボクサーTyson Furyとの異色デュエット。
酔っ払いの男女がクリスマスパーティーで大暴れするというコミカルでドラマ仕立ての楽曲。

8. Rudolph

あの赤鼻のトナカイをテーマにしつつ、孤独や愛情を寓話的に歌うミディアム・ソング。
ロビーらしい優しさと遊び心が共存。

13. Snowflakes

静けさと純粋さを描いた終盤のバラード。
雪の降る夜に聴きたくなる、ロビー流の“静かな夜”。

総評

『The Christmas Present』は、単なるホリデー・アルバムではない。
これはRobbie Williamsが、“家族、記憶、祝祭、そして未来への希望”を音楽という形で結晶化させたパーソナルな贈り物である。
全体を通してユーモアと涙、伝統と現代性が見事に融合し、“音楽によるクリスマス映画”のような構成になっている。

スウィングやクラシック・ポップのフォーマットを活かしながらも、あくまで“いまのロビー”として歌っている点に誠実さがあり、ショービズに生きた男の人生が滲む年末の音楽ドラマだといえる。
“自分にとってのクリスマス”を誰かと分かち合いたくなったとき、自然と手が伸びるアルバムである。