発売日: 1996年4月23日
ジャンル: インディーロック、ポストパンク
『Telephono』は、Spoonのデビューアルバムであり、彼らの初期のポストパンクやインディーロックに根ざしたサウンドが色濃く表れた作品だ。ブリット・ダニエルの尖ったヴォーカルとジム・イーノのシャープなドラムが、シンプルながらも力強い楽曲を支えている。PixiesやWireからの影響が色濃く感じられるこのアルバムは、ラフでエネルギッシュなサウンドが特徴的で、バンドの荒削りな魅力が詰まっている。後に見せるポップな側面や洗練されたサウンドとは異なり、『Telephono』では直感的で生々しいロックが全面に押し出されている。
各曲ごとの解説:
- Don’t Buy the Realistic
オープニングトラックは、突き刺さるようなギターリフとブリット・ダニエルの荒々しいヴォーカルが印象的。ポストパンク的なエッジが効いており、エネルギッシュでシンプルながらも引き込まれる一曲。 - Not Turning Off
アップテンポでノイジーなギターサウンドが際立つトラック。反復的なリフとダニエルの叫ぶようなヴォーカルが、楽曲に攻撃的な勢いを加えている。 - All the Negatives Have Been Destroyed
シングルカットされたこの曲は、キャッチーなメロディとポストパンク的なリズムが融合している。ダニエルのヴォーカルは力強く、楽曲のスピード感が心地よい。Spoonの初期代表曲と言える。 - Cvantez
不協和音とシンプルなリズムが重なり合い、ポストパンクの影響を強く感じる。曲全体に漂う不安感と緊張感が、Spoonの初期サウンドを象徴している。 - Nefarious
軽快なギターワークとダニエルのテンポの良いヴォーカルが特徴の曲。パンキッシュなエネルギーが強く、短くもインパクトのあるナンバーだ。 - Claws Tracking
スローなテンポで進行する曲で、重たいリズムと低く唸るようなギターが楽曲に深みを加えている。ダニエルのヴォーカルは抑えめながらも感情が込められており、静かに展開される緊張感が印象的。 - Dismember
アップテンポなパンク調の曲で、速いギターリフと力強いドラムが曲を引っ張っている。エネルギッシュな演奏が、初期Spoonの荒々しい魅力を凝縮している一曲。 - Idiot Driver
ミッドテンポで展開するこの曲は、繰り返されるギターフィギュアが心地よく、ポストパンク的な雰囲気が漂う。ダニエルのヴォーカルも、曲全体のメロディと調和している。 - Towner
緊張感のあるイントロから始まるこの曲は、控えめなヴォーカルとギターサウンドが静かな焦燥感を醸し出している。全体にシンプルでありながらも、内面的な深みを感じさせる。 - Wanted to Be Your
歪んだギターと反復的なリズムが特徴的なこの曲は、ノイズロック的な要素が色濃い。ヴォーカルも荒々しく、初期Spoonのエネルギーを存分に感じさせる一曲だ。 - Theme to Wendel Stivers
アルバムを締めくくるこの曲は、シンプルなギターワークとダニエルの静かなヴォーカルが印象的なミッドテンポの曲。全体的に抑制されたエネルギーが、アルバムの締めとしてふさわしい穏やかな終わりを迎える。
アルバム総評:
『Telephono』は、Spoonが後に見せる洗練されたサウンドとは対照的な、粗削りでエネルギッシュなデビューアルバムだ。ブリット・ダニエルのヴォーカルと、ポストパンクに影響を受けたギターサウンドがアルバム全体を通して貫かれており、荒削りながらも強烈な個性が感じられる。特に「Don’t Buy the Realistic」や「All the Negatives Have Been Destroyed」といった楽曲は、Spoonの初期のスタイルを象徴しており、後の作品との対比を楽しむことができる。『Telephono』は、Spoonがどのようにしてそのサウンドを築いていったのかを探るうえで、重要な作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Pink Flag by Wire
シンプルでパンキッシュなサウンドが特徴のポストパンクの名盤。『Telephono』の荒々しいエネルギーやミニマリズムが好きなリスナーにおすすめ。 - Surfer Rosa by Pixies
ノイズロックとキャッチーなメロディを融合させたアルバムで、Spoonに影響を与えた作品。ラフなサウンドとエネルギーが共通している。 - Fever to Tell by Yeah Yeah Yeahs
ポストパンクリバイバルの代表作で、荒削りなサウンドとパワフルなヴォーカルが魅力。Spoonの初期サウンドが好きなリスナーに響くだろう。 - Is This It by The Strokes
洗練されたインディーロックの代表作だが、シンプルでエネルギッシュな演奏が印象的。『Telephono』のラフな魅力を楽しんだ人におすすめ。 - Slanted and Enchanted by Pavement
インディーロックの名盤で、Spoonと同様にラフでDIY的なアプローチが魅力。ポストパンク的な要素とキャッチーなメロディが融合している。
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