アルバムレビュー：Superorganism by Superorganism

発売日: 2018年3月2日
ジャンル: インディーポップ / サイケデリックポップ

Superorganismのセルフタイトルデビューアルバム「Superorganism」は、音楽の多国籍コレクティブとしての彼らのユニークなスタイルを詰め込んだ作品である。エクスペリメンタルでありながらポップな感覚を持ち、キャッチーなメロディにサイケデリックなサウンドやサンプルを散りばめたトラックが特徴的だ。大胆で奇抜な音作りと、ボーカルのOronoの無気力な声が、他のインディーアクトと一線を画す新鮮なエネルギーを放っている。

各曲ごとの解説:

1. It’s All Good

アルバムのオープニングトラックは、エネルギッシュなサウンドと明るいサンプリングが特徴。音の断片が絶えず変化し、ポップと実験音楽の間を行き来する楽曲だ。Oronoの気だるいボーカルが軽やかに流れる一方で、バックのサウンドはカラフルで豊かだ。

2. Everybody Wants to Be Famous

このトラックは、ポップカルチャーと名声の追求についての風刺的な内容をテーマにしている。シンプルなビートにのせて、Oronoの無機質なボーカルが有名になることの空虚さを描写。中毒性のあるリフレインとキャッチーなメロディが、リスナーを惹きつける。

3. Nobody Cares

「Nobody Cares」は、無関心さや自己中心的な態度をユーモラスに表現した曲。サイケデリックなサウンドが続き、リズミカルで繰り返しの多いビートが印象的だ。歌詞の遊び心が際立ち、日常的な無関心さを皮肉たっぷりに描いている。

4. Reflections on the Screen

現代のデジタル時代をテーマにした曲で、スクリーン越しの関係性や疎外感について歌っている。ミニマルなエレクトロニックビートに、エフェクトが多用されたOronoのボーカルが不思議な雰囲気を醸し出している。メロディも静かでありながら引き込まれる力がある。

5. SPRORGNSM

奇抜でリズミカルなこの曲は、実験的なサウンドと様々なサンプルが混在したカオス的な構成。タイトルからも分かる通り、Superorganismの持つユニークな感性が全面に押し出されている。サイケデリックなポップの典型ともいえるトラック。

6. Something for Your M.I.N.D.

シングルとしてリリースされ、多くのリスナーを引きつけた「Something for Your M.I.N.D.」は、ドリーミーなサウンドとキャッチーなメロディが特徴。Oronoの低めのボーカルが、奇妙なリズムとシンプルなビートの上で心地よく響く。トラックの中で繰り返されるフレーズが印象的で、何度もリピートしたくなる曲だ。

7. Nai’s March

このトラックは、サイケデリックなエレクトロニカの要素が強く、ミッドテンポで進行していく。バックトラックに重ねられた様々なサウンドエフェクトが、実験的かつ聴きやすいポップソングに仕上がっている。グルーヴィーな展開が心地よい。

8. The Prawn Song

「The Prawn Song」は、ミニマルで奇抜なビートと、不思議な歌詞が特徴的な曲。特にリズムパターンが目まぐるしく変化し、Oronoの脱力感のあるボーカルがそのカオスをまとめている。ユニークな音楽スタイルが強調されたトラックだ。

9. Relax

タイトル通り、リラックスしたムードが漂う楽曲。サウンドはシンプルでメロディアスだが、その裏に潜む細やかなエフェクトやノイズがサイケデリックな要素を付加している。ゆったりとしたビートの中にも、独自のアプローチが光る。

10. Night Time

アルバムのラストを飾る「Night Time」は、夢のようなサウンドスケープが広がる一曲。夜の静けさと幻想的な雰囲気が漂い、アルバム全体を通じての旅を締めくくるにふさわしい穏やかなエンディングだ。エフェクトを多用した音作りが秀逸。

アルバム総評:

「Superorganism」は、ポップミュージックの枠を超えた実験的かつユーモア溢れる作品だ。大胆なサウンドアプローチと、遊び心のある歌詞、そして何よりもOronoの個性的なボーカルがアルバム全体を通じて強い印象を与える。インディーポップの枠を広げたこの作品は、リスナーにとって驚きと楽しさを提供する、唯一無二の存在感を放つ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

Merriweather Post Pavilion by Animal Collective
サイケデリックポップの金字塔とも言える作品。Superorganismの実験的な音作りと共通する、カラフルでリズミカルなサウンドを楽しめる。
In Colour by Jamie xx
エレクトロニックとポップが融合した作品で、奇抜なサウンドスケープが「Superorganism」と共通点が多い。クラブ向けのビートとポップな感覚が特徴。
Hot Chip by Made in the Dark
ダンサブルなエレクトロニックサウンドとポップなメロディが特徴。Superorganismのユニークなビートとポップの要素が好きな人には最適。
Fever Ray by Fever Ray
独特のボーカルスタイルとサイケデリックなサウンドが共鳴する作品。実験的でありながらリスナーを惹きつける力を持つアルバム。
Plunge by Fever Ray
シンセとエレクトロニカの要素が満載のアルバムで、奇抜なサウンドがSuperorganismのファンに響くだろう。