発売日: 1988年5月3日
ジャンル: シンセポップ、ニューウェーブ、バラード
アルバム全体のレビュー
a-haの3作目となるアルバムStay on These Roadsは、シンセポップからさらに深化し、バラード主体の感情的な作品として完成された。前作Scoundrel Daysのダークで内省的なトーンを継承しつつ、全体的にメランコリックな雰囲気が強調されている。収録曲の多くは映画のサウンドトラックや、壮大なバラードとして際立っており、Morten Harketの卓越したヴォーカルがアルバム全体をドラマチックに彩っている。
本作にはタイトル曲「Stay on These Roads」や、映画『007 リビング・デイライツ』の主題歌「The Living Daylights」などの重要曲が含まれている。Paul Waaktaar-Savoyの緻密なソングライティングと、Magne Furuholmenの洗練されたシンセアレンジはさらに熟成され、a-haが単なる80年代のシンセポップバンドではなく、アーティスティックな方向へ進化していることを示している。全体を通じて、希望と切なさが交錯する詩的な世界観が魅力だ。
各トラックレビュー
1. Stay on These Roads
アルバムのタイトル曲で、繊細なメロディと感情豊かな歌詞が際立つバラード。冷たさと温かさが同居するようなサウンドが、人生の旅路における希望と不安を表現している。特にHarketのヴォーカルが、この曲の持つメランコリックな魅力を最大限に引き出している。
2. The Blood That Moves the Body
緊張感のあるビートとドラマチックな展開が特徴のトラック。曲全体に漂う不穏さとエネルギッシュなシンセサウンドが、アルバムの中でも特に印象的だ。
3. Touchy!
アルバムの中で最も軽快でポップな楽曲。明るいメロディとユーモラスな歌詞が特徴で、全体のバランスを保つ役割を果たしている。ダークなトーンの多い本作の中で、リスナーに一息つかせるような一曲だ。
4. This Alone Is Love
詩的で静かなバラード。繊細なアレンジとミニマルなサウンドが、Harketの歌声を際立たせる。愛の深さとその孤独感を描いた歌詞が心に残る。
5. Hurry Home
軽やかさの中にも切なさを感じさせるメロディが特徴的なトラック。アルバム全体に流れるテーマである「旅路」と「帰る場所」を象徴する一曲だ。
6. The Living Daylights
映画『007 リビング・デイライツ』の主題歌としても有名な楽曲で、壮大なスケール感が印象的。Bondシリーズにふさわしいスリリングなメロディラインと重厚なシンセサウンドが際立つ。シングル版からわずかにリアレンジされており、アルバム全体の流れにも調和している。
7. There’s Never a Forever Thing
アコースティックギターが主軸の、a-haにしては珍しいシンプルな構成のバラード。人生の儚さや愛の一瞬の輝きを静かに歌い上げており、アルバムの中でも特に感動的な一曲だ。
8. Out of Blue Comes Green
エピックな構成が特徴の長めの楽曲。再生や希望をテーマにした歌詞が、メロディと見事に調和している。アルバムの中でも特にストーリーテリング性が強い楽曲だ。
9. You Are the One
ポップなシングル曲で、明るいリズムとキャッチーなメロディが耳に残る。恋愛をテーマにした親しみやすい内容だが、アルバム全体の中ではやや軽めの印象。
10. You’ll End Up Crying
アルバムを締めくくる短いトラック。控えめで静かなエンディングが、アルバム全体の余韻を深めている。シンプルながらも印象的な一曲だ。
アルバム総評
Stay on These Roadsは、a-haの音楽的成熟を象徴する作品であり、彼らの得意とするメランコリックな美学が全開となったアルバムである。ポップな要素と感情的な深みがバランスよく融合しており、80年代を代表するサウンドと共に、リスナーを感動的な旅へと誘う。シンセポップファンだけでなく、ドラマチックな音楽が好きなすべての人に響く作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Savage by Eurythmics
感情的なバラードとシンセサウンドが融合し、メランコリックな雰囲気が共通している。
Songs of Faith and Devotion by Depeche Mode
ダークで感情的なテーマが特徴で、シンセポップとロックが融合した名作。
Hats by The Blue Nile
穏やかで洗練されたバラードが中心のアルバムで、a-haファンに強くおすすめしたい。
Actually by Pet Shop Boys
メロディアスなシンセサウンドと感情豊かなリリックが、a-haの作品と響き合う。
Quartet by Ultravox
ドラマチックなサウンドと洗練されたシンセポップが楽しめる一枚で、Stay on These Roadsのファンにぴったり。
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