発売日: 2000年5月16日（米国）
ジャンル: ポップロック、アコースティック・ポップ、ティーンポップ、ソフトロック
概要
『Sooner or Later』は、英国出身の3人組ポップロックグループBBMak（ビー・ビー・マック）が2000年にリリースしたデビュー・アルバムであり、2000年代初頭の“アコースティック回帰ブーム”を象徴する重要なポップ作品である。
グループ名はメンバーの頭文字（Mark Barry、Christian Burns、Stephen McNally）を組み合わせたもので、スーツを着たクリーンなイメージと、アコースティックギターを主体としたサウンドが特徴。
バックストリート・ボーイズやNSYNCといった同期のボーイバンドとは一線を画し、BBMakは“バンド的手触り”と“シンガーソングライター的誠実さ”を武器に、ティーンポップ全盛のアメリカ市場で異例のヒットを飛ばした。
特にシングル「Back Here」は、全米ビルボードTop 20入りを果たし、UKからの逆輸入的成功例として注目を集めた。
本作には、メロディアスなポップセンスとバンドとしての実演力、そして青春特有の切なさとロマンスが凝縮されており、“ポップバンドとしての誠実なデビュー”という理想形のひとつである。
全曲レビュー
1. Back Here
BBMakの代表曲にして、今なお多くのファンを持つ名バラード。別れた恋人への思いを爽やかかつ感傷的に歌い上げ、アコースティックギターと切なげなボーカルの調和が光る。
2. Still on Your Side
鼓動のようなビートとリフレインが印象的なアップテンポナンバー。友情と愛情の間を揺れ動く感情が繊細に描かれる。
3. Next Time
ポップロックらしい疾走感が気持ちよく、コーラスワークの美しさが際立つ。失恋後の再起をテーマにした歌詞も前向きで印象的。
4. I Can Tell
恋に落ちた瞬間の直感を歌った、甘酸っぱい青春ポップ。どこかサーフロック風の軽やかさもあり、ドライブにもぴったりな楽曲。
5. Again
ややスローで内省的なミディアムバラード。別れの“繰り返し”を通じて人が学ぶものを静かに描く。
6. Can You Feel It?
ダンサブルでキャッチーなポップロック・トラック。ステージ映えしそうな高揚感があり、ライブ定番曲としても親しまれた。
7. Miss You More
喪失とその後の空虚を、非常にパーソナルな語り口で綴ったバラード。ボーカルの感情表現が際立つ楽曲。
8. Emily’s Song
特定の“彼女”をモチーフにした物語的なアプローチが新鮮。ジャングリーなギターサウンドが90年代後半UKポップの香りを残す。
9. Ghost of You and Me
ピアノ主体の美しいバラードで、失恋後の“残像”に苦しむ心情を丁寧に描いている。エモーショナルな展開に注目。
10. Love Is Leaving
アルバム後半のハイライト。別れの“兆し”に気づいた瞬間の胸騒ぎを描いた楽曲で、歌詞の抑制された表現が逆に心に刺さる。
11. Love Is Unpredictable
締めくくりにふさわしい穏やかで哲学的なポップ・チューン。愛の不確かさと、それを受け入れて生きることの肯定が感じられる。
総評
『Sooner or Later』は、2000年代初頭にあって、“バンド演奏するボーイバンド”という希少な立ち位置を貫いたBBMakの魅力を凝縮したアルバムである。
サウンドは、アコースティックギターを軸にしつつ、適度にエレクトロニクスやストリングスを取り入れたナチュラルかつ洗練されたポップロック。
それぞれの楽曲が、“恋を知り始めたばかりの若者”のまなざしと、“喪失や変化を受け止める”という成熟との狭間で描かれており、非常に瑞々しい。
メンバー全員が演奏・作曲・歌唱をこなしていることも、BBMakを“製品”ではなく“アーティスト”として際立たせる要因となった。
『Sooner or Later』は、いわゆるティーンポップブームの中にあって、控えめながら確かな誠実さと完成度で評価されるべき作品であり、今なお色褪せない“青春ポップの清涼剤”のような一枚である。
おすすめアルバム（5枚）
- Five for Fighting『America Town』
ピアノを中心にしたポップバラード中心のアルバム。BBMakの叙情性と親和性が高い。 - Lifehouse『No Name Face』
同時期に活躍したポップロック・バンド。感傷とギターサウンドのバランスが近い。 - Savage Garden『Affirmation』
ロマンティックで緻密なサウンドがBBMakに通じる。声の魅力も共通点のひとつ。 - The Calling『Camino Palmero』
“青春ロック”という文脈で比較されがちなバンド。よりラウドだがエモーショナルな側面は共鳴。 - Hanson『This Time Around』
ボーイバンド的イメージを超えてミュージシャンとしての信頼を得た好例。BBMakと似た進化の系譜。
ビジュアルとアートワーク
『Sooner or Later』のジャケットは、過剰に飾り立てず、アコースティックギターと素朴な表情が印象的な写真を用いており、BBMakの“音楽で勝負する”姿勢を象徴している。
3人のメンバーは、流行のボーイズファッションを身につけながらも、どこか内省的な佇まいで、ルックス売りに偏ることなく“等身大の音楽家”としての誠実さを打ち出していた。
このバランス感覚が、当時のティーンファンから“心に寄り添ってくれるバンド”として長く愛された理由でもある。
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