スモール・フェイセス(Small Faces)は、1960年代のイギリスを代表するモッズバンドで、R&B、ソウル、そしてサイケデリックロックを融合した独特のサウンドで知られています。彼らの音楽は、キャッチーでエネルギッシュなメロディと、若者文化の象徴であるモッズ・スタイルを反映したファッション性が特徴です。特にスティーヴ・マリオットの強力なボーカルと、バンド全体のタイトな演奏で、多くのファンを魅了し、60年代の英国ロックにおいて重要な位置を占めました。
バンドの背景と歴史
スモール・フェイセスは、1965年にロンドンで結成されました。メンバーはスティーヴ・マリオット(ボーカル/ギター)、ロニー・レイン(ベース)、ケニー・ジョーンズ(ドラム)、ジミー・ウィンストン(キーボード)という構成で、彼らはモッズスタイルに身を包み、R&Bやソウルの影響を色濃く受けた音楽を演奏しました。結成当初からイギリスの若者文化、特にモッズムーブメントと強く結びつき、そのファッションやライフスタイルは音楽だけでなく、当時のモッズカルチャー全体に影響を与えました。
1965年にデッカ・レコードと契約し、同年にデビューシングル「Whatcha Gonna Do About It」をリリース。この曲はすぐにチャート入りし、スモール・フェイセスは瞬く間に人気バンドとしての地位を確立しました。ジミー・ウィンストンの脱退後、イアン・マクレガン(キーボード)が加入し、クラシックなラインアップが完成しました。
音楽スタイルと影響
スモール・フェイセスの音楽スタイルは、R&Bやソウルに強く影響を受けており、その後のサイケデリックロックへと進化していきました。特にスティーヴ・マリオットの力強いボーカルと、バンド全体の緻密でエネルギッシュな演奏が特徴的です。彼らはモッズムーブメントを象徴するサウンドを作り出し、シャープなビートとファンキーなベースラインが際立つ楽曲が多く、当時のモッズたちに絶大な支持を受けました。
1966年のシングル「Sha-La-La-La-Lee」は、スモール・フェイセスにとって初の大ヒット曲であり、ポップチャートを賑わせました。この曲は、キャッチーなメロディと、シンプルながらもエネルギッシュなサウンドが魅力で、バンドの代表的な作品の一つです。
代表曲の解説
「Itchycoo Park」 (1967年)
スモール・フェイセスの代表曲の一つとして広く知られているのが「Itchycoo Park」です。この曲は、彼らがサイケデリックロックへと移行していく過程を示す作品で、エフェクトを駆使したサウンドやドリーミーな雰囲気が特徴です。歌詞には、当時のカウンターカルチャー的な自由な精神が表れており、若者たちの心を掴みました。特に、フェイザーエフェクトを用いたドラムサウンドは、1960年代のサイケデリックムーブメントを象徴する技術革新として知られています。
「Lazy Sunday」 (1968年)
「Lazy Sunday」は、1968年にリリースされた彼らのシングルで、ユーモアと日常生活を描いた軽快なナンバーです。この曲は、スティーヴ・マリオットのコックニー訛りのボーカルと、コミカルな雰囲気が特徴的で、バンドの柔軟な音楽性を示しています。意図せずリリースされたこの曲は、当時のイギリスのリスナーに広く受け入れられ、チャートの上位にランクインしました。
「Tin Soldier」 (1967年)
「Tin Soldier」は、スモール・フェイセスの最もパワフルな楽曲の一つで、スティーヴ・マリオットの情熱的なボーカルが際立っています。この曲は、激しいロックサウンドと感情的な歌詞が融合しており、バンドのエネルギーとダイナミズムを最大限に引き出しています。スモール・フェイセスのライブでの定番曲としても知られ、彼らの技術的な精度と情熱を感じさせる一曲です。
アルバムごとの進化
スモール・フェイセスのアルバムは、彼らの音楽的進化を鮮明に表しています。モッズバンドとしてスタートした彼らは、次第にサイケデリックロックや実験的な音楽に移行していき、その過程で数々の名作を生み出しました。
「Small Faces」 (1966年)
デビューアルバム「Small Faces」は、彼らの初期のエネルギッシュなR&Bとソウルの影響が強く反映された作品です。キャッチーなメロディと力強い演奏が特徴で、モッズ文化を象徴するサウンドが詰まっています。「Sha-La-La-La-Lee」や「Whatcha Gonna Do About It」といったヒット曲が収録され、彼らの初期の成功を支えました。
「Ogden’s Nut Gone Flake」 (1968年)
彼らの音楽キャリアにおける最高傑作とされるのが、サイケデリックなコンセプトアルバム「Ogden’s Nut Gone Flake」です。このアルバムは、A面にポップでキャッチーな楽曲を、B面にはファンタジー色の強い物語と音楽を組み合わせたサイドを収録し、実験的な作品として高く評価されています。「Lazy Sunday」や「Afterglow」など、サイケデリックロックの時代を象徴する楽曲が詰まっています。
影響を受けたアーティストと音楽
スモール・フェイセスは、アメリカのR&Bアーティストやソウルミュージックから大きな影響を受けており、特にマーヴィン・ゲイやオーティス・レディングといったアーティストの影響が強く表れています。また、ローリング・ストーンズやキンクスといった同時代のイギリスのロックバンドとも共鳴し、彼らと共に60年代のロックシーンを牽引しました。
影響を与えたアーティストと音楽
スモール・フェイセスは、後に多くのアーティストに影響を与えました。特に、フロントマンのスティーヴ・マリオットは、後にハードロックバンド「ハンブル・パイ」を結成し、ロック界にさらなる影響を与えました。また、彼らのサイケデリックロックのスタイルは、70年代のグラムロックやブリットポップに繋がる重要な要素となり、後にオアシスやブラーなどのバンドに多大な影響を与えています。
まとめ
スモール・フェイセスは、60年代のモッズ文化を代表するバンドとして、音楽的な革新を続けました。彼らの音楽は、R&Bやソウルからサイケデリックロックに至るまで、多彩なジャンルを融合し、時代を超えて多くのアーティストに影響を与え続けています。特にスティーヴ・マリオットのボーカルと、バンド全体の一体感あるサウンドは、今でも多くのリスナーに愛され続けているのです。
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