1. 歌詞の概要
「Slam Dunk (Da Funk)」は、イギリスのボーイバンドFive（ファイヴ）のデビューシングルとして1997年にリリースされた楽曲であり、彼らのセルフタイトルアルバム『Five』にも収録されている。この曲は、当時のティーン・ポップ界に登場した新人グループとしては異色の、エネルギッシュでストリート色の強いサウンドとメッセージで、衝撃的な印象を残した。
歌詞の主軸は、自己紹介と自信に満ちたグループの主張である。サビで繰り返される「Slam dunk da funk, put it up, if you got that feelin’」というフレーズには、“ノッてる奴は手を挙げろ”“俺たちのビートに身体を任せろ”という強烈な煽りが込められており、リスナーに身体で音楽を感じるよう促してくる。これは単なるパーティ・ソングではなく、Fiveというグループの「俺たちは今までとは違う」という宣言でもあった。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Slam Dunk (Da Funk)」は、プロデューサーのジェイク・シュルツァーとデニス・インゴルズビーによって制作され、当時人気絶頂だったBackstreet BoysやNSYNCなどのアメリカ型ボーイバンドとは一線を画した、よりアグレッシブで“UK的なやんちゃさ”が全開のスタイルを提示している。
そのサウンドは、90年代後半におけるUKガレージ、ラップ、そしてアメリカ西海岸のヒップホップの影響が混ざり合ったもので、デビュー曲とは思えないほどの完成度を誇っている。また、タイトルにもある「スラムダンク」という言葉が象徴するように、バスケットボール文化と音楽が一体となった“スポーツ×音楽”という当時のトレンドも反映している。
興味深いのは、この楽曲が後にNBAの公式プロモーションにも使用され、Fiveがスポーツとの結びつきでも注目を浴びる存在になったという点だ。ダンスミュージックとストリート文化が交差する地点に位置づけられたこの楽曲は、Fiveの方向性を端的に示す記念碑的なデビュー作であった。
3. 歌詞の抜粋と和訳
Slam dunk da funk
スラムダンクでかまそうぜPut it up (if you got that feelin’)
その気があるなら手を挙げろJump up to the ceiling
天井まで飛び跳ねてみなSlam dunk da funk
スラムダンクで気分をブチ上げろLet the boys be boys
俺たちのやんちゃっぷりを見せてやるThrow your hands in the air
手を空高く掲げろよ‘Cause if ya don’t care
気にするな、ただ音に乗るだけでいい
引用元: Genius Lyrics – Five / Slam Dunk (Da Funk)
4. 歌詞の考察
この楽曲は、リリックのひとつひとつが“挑発”でできている。デビュー曲にして「俺たちの名前を覚えろ」と堂々と宣言するその姿勢は、当時のポップシーンにおいては珍しく、むしろラッパーやヒップホップグループの初登場を思わせる攻撃性と自己主張が光っている。
「Slam dunk da funk」というキャッチーなサビは、単なる言葉遊びにとどまらず、“ファンク（=グルーヴや魂）をスラムダンクする”という大胆な比喩によって、音楽への熱意やフィジカルな躍動感を同時に表現している。
また、「let the boys be boys（男たちを野放しにさせろ）」というラインには、当時のボーイバンドに課されがちだった“清潔で甘いアイドル像”への反逆の意思がにじむ。彼らは“いい子”ではなく、ルールを壊していく“悪ガキ”としてのアイデンティティを明確に打ち出しているのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Get Down (You’re the One for Me)” by Backstreet Boys
初期BSBの中でも比較的ヒップホップ色が強く、テンションの高いダンスナンバー。 - “No More (Baby I’ma Do Right)” by 3LW
女性ヴォーカルだが、同様にストリート寄りのR&Bポップが楽しめる。 - “Summer Girls” by LFO
ヒップホップとポップの融合という意味では共通するスタイル。 - “Step by Step” by New Kids on the Block
ポップとファンクが交錯する初期ボーイバンドの名作。 - “Keep On Movin’” by Five
Five自身の楽曲の中でも、よりポジティブな方向に舵を切った一曲としての対比が面白い。
6. “衝撃のデビュー、そして音楽的反乱の号砲”
「Slam Dunk (Da Funk)」は、Fiveの音楽キャリアの出発点でありながら、すでに彼らの方向性と野望が明確に刻まれた楽曲である。この曲が与えたインパクトは、“ただの新人ボーイバンド”という枠を超え、“新しいタイプのポップグループ”としての認知を広める力を持っていた。
彼らが掲げたのは、“音楽でぶちかませ”というストリート・スピリットそのものであり、同時に“俺たちはアイドルではなく、音で勝負する存在だ”という挑戦的なメッセージでもあった。それゆえにこの曲は、1990年代後半のUKポップスの中でも、強烈に異彩を放つ存在として今も語り継がれている。
時代を超えてなお、“Slam dunk da funk”という一節が流れれば、そこには変わらぬ熱量と爆発的な勢いが宿る。それは、音楽が本来持つ“衝動”という感情の再発見であり、Fiveというグループが最初に投じたロックのような一撃なのだ。
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