発売日: 2020年11月18日
ジャンル: ラテンポップ、R&B、レゲトン、バチャータ
カリ・ウチスの2作目のスタジオアルバムSin Miedo (del Amor y Otros Demonios)は、彼女のアーティストとしての新たな挑戦とラテンルーツへの回帰を示す一作である。本作は全編スペイン語またはスペイン語と英語のミックスで構成され、タイトルからも分かるように、愛とその複雑な側面を探求している。「Sin Miedo」とは「恐れなし」という意味で、この言葉に込められた精神がアルバム全体を貫いている。
音楽的には、レゲトン、バチャータ、ラテンソウル、そしてクラシックなボレロまで幅広いスタイルを取り入れつつ、カリの個性的なボーカルがアルバムを一つのまとまりとしている。前作『Isolation』で見せた多様性をさらに発展させ、本作ではよりラテン音楽に根ざしたアプローチが取られている。リスナーは、彼女の大胆な冒険心と感情豊かな表現力に魅了されるだろう。
トラックごとの解説
1. La Luna Enamorada
アルバムの冒頭は、美しいボレロスタイルの楽曲。古典的なラテン音楽のエレガンスを感じさせるこの曲は、アルバム全体のテーマを予感させる。
2. Fue Mejor (feat. PARTYNEXTDOOR)
スローテンポのR&Bとラテンのエッセンスが融合した一曲。カリとPARTYNEXTDOORの声が滑らかに絡み合い、失恋後の自己肯定を歌っている。特に「Fue mejor(それで良かった)」というフレーズが耳に残る。
3. Aguardiente y Limón
アップテンポで遊び心のある楽曲。レゲトンビートとカリの軽やかなボーカルが合わさり、リスナーを踊りたくさせるエネルギーが溢れている。
4. Vaya Con Dios
切なくも美しいバラード。別れの中での愛と感謝を描いた歌詞が心に響く。「Vaya con Dios(神と共に行きなさい)」というフレーズに、別れの儀式的な感覚が感じられる。
5. Que Te Pedí//
クラシックなラテンバラードにオマージュを捧げた楽曲。ボーカルの感情表現が際立ち、愛の苦悩を強烈に伝えている。
6. Telepatía
アルバム最大のヒット曲。ドリーミーなサウンドとセクシーな歌詞が印象的で、遠距離恋愛のテレパシー的なつながりをテーマにしている。この曲のミニマルなビートと滑らかなメロディは、カリのポップセンスの高さを示している。
7. No Eres Tú (Soy Yo)
タイトル通り、「君のせいじゃない、私のせい」と語る軽快な曲。リズミカルなトラックが恋愛における責任を軽やかに表現している。
8. De Nadie
自立した女性像を描いたアンセム。「私は誰にも属さない」というメッセージが力強く、トロピカルなビートが気分を盛り上げる。
9. Quiero Sentirme Bien
楽観的で明るいトラック。幸せを求める人間の普遍的な願いを描いており、カリのボーカルがリスナーに元気を与える。
10. Aquí Yo Mando (feat. Rico Nasty)
エネルギッシュなレゲトンビートとヒップホップが融合したトラック。Rico Nastyとのコラボレーションが、曲全体に攻撃的で自信に満ちた雰囲気を加えている。
11. Te Pongo Mal (Préndelo) [feat. Jowell & Randy]
パーティートラックとしての要素が強い楽曲。レゲトンのベテランアーティスト、Jowell & Randyとの共演が楽曲に熱を加えている。
12. La Luz (Fín) [feat. Jhay Cortez]
アルバムを締めくくるトラック。ミステリアスでムーディーなビートとJhay Cortezのラップが、夜をテーマにした独特の雰囲気を作り出している。
アルバム総評
Sin Miedo (del Amor y Otros Demonios)は、カリ・ウチスがアーティストとしてさらなる進化を遂げたアルバムだ。ラテン音楽への回帰が明確に表れ、彼女の個性とルーツが強く反映された作品となっている。「Telepatía」のような世界的なヒット曲を生み出しながらも、アルバム全体に統一感と芸術性を持たせている点が印象的だ。ラテンポップ、R&B、ヒップホップといった多様なジャンルが巧みに融合され、カリの唯一無二の音楽性が際立つ。
このアルバムは、ラテンミュージックの伝統を守りつつ、現代的なアプローチを取り入れた大胆で自信に満ちた作品である。カリ・ウチスのファンはもちろん、ラテン音楽やR&Bに興味のある人々にとっても、新たな発見と魅力を提供してくれるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
“El Mal Querer” by Rosalía
フラメンコと現代ポップの融合が特徴のアルバム。カリのラテンルーツに共感する人にぴったり。
“Colores” by J Balvin
レゲトンの伝統を現代的にアレンジしたカラフルなアルバム。特にリズム重視のトラックが好きな人におすすめ。
“Isolation” by Kali Uchis
本作の前作にあたり、ジャンルを超えた多様性と実験精神が共通する。
“YHLQMDLG” by Bad Bunny
ラテンポップとレゲトンを大胆に進化させたアルバム。エネルギッシュなラテンビートが特徴。
“Visions of a Life” by Wolf Alice
ラテン要素は少ないが、多ジャンルに挑戦するアーティストの姿勢と、実験的なサウンドが共通している。
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