
発売日: 2018年12月14日
ジャンル: エレクトロポップ、オルタナティブ・ポップ、フューチャーベース
ダークで内省的な世界観へとシフトした新境地
The Chainsmokersの2ndフルアルバムSick Boyは、2016年のCollage、2017年のMemories…Do Not Openとは大きく異なり、よりダークで内省的なテーマを前面に押し出した作品である。
本作では、彼らのトレードマークだった明るくエモーショナルなEDMサウンドから一歩踏み出し、社会的な不安、自己アイデンティティの喪失、名声と孤独の狭間にある葛藤といった、よりシリアスなトピックが歌詞に盛り込まれている。サウンド面でも、フューチャーベースやオルタナティブ・ポップ、ロック的なアプローチが増え、シンプルなシンセドロップを多用した過去の作品とは異なる印象を与える。
シングル「Sick Boy」や「Everybody Hates Me」では、彼らの有名人としての経験やSNS時代の孤独感が反映されており、以前の恋愛や青春をテーマにした楽曲とは異なる深みがある。この新しい方向性は、The Chainsmokersが単なるEDMデュオではなく、アーティストとして進化していることを示す重要な一歩となった。
全曲レビュー
- This Feeling (feat. Kelsea Ballerini)
- カントリーとエレクトロポップを融合させた楽曲。
- Kelsea BalleriniのボーカルとTaggartの掛け合いが印象的で、キャッチーなメロディが心に残る。
- Beach House
- インディーポップ的なアプローチを持つ楽曲。
- サマーソングらしい軽快なサウンドが特徴的だが、歌詞には自己反省的な要素も含まれている。
- Hope (feat. Winona Oak)
- ミニマルなビートと繊細なシンセが美しいバラード調のトラック。
- Winona Oakの幻想的なボーカルが楽曲の雰囲気を引き立てる。
- Somebody (feat. Drew Love)
- フューチャーベースとオルタナティブR&Bの要素を融合させた楽曲。
- 「成功を手に入れても、何かが足りない」というテーマが歌詞に込められている。
- Sick Boy
- アルバムのタイトル曲であり、新しいThe Chainsmokersの方向性を示す楽曲。
- 社会への不満やSNS時代のアイデンティティ危機を描いた歌詞が特徴的。
- ダークなピアノリフとエモーショナルなビートが印象的。
- Everybody Hates Me
- セルフアイロニーに満ちた歌詞が話題になった楽曲。
- 名声と孤独のジレンマをテーマにしており、「自分は嫌われ者かもしれないが、それでも気にしない」といったメッセージが込められている。
- You Owe Me
- オルタナティブ・ロックの影響が強いミッドテンポの楽曲。
- シリアスな歌詞とメロディアスなサウンドが融合し、The Chainsmokersの新しい一面を見せる。
- Save Yourself (with NGHTMRE)
- NGHTMREとのコラボによる、ハードなフューチャーベーストラック。
- 他の楽曲よりもアグレッシブなドロップが特徴的で、クラブ向けのサウンドになっている。
総評
Sick Boyは、The Chainsmokersが単なるEDMプロデューサーから、よりアーティスティックなアプローチを追求するアーティストへと成長したことを示すアルバムである。
過去の作品と比べると、明るくキャッチーなEDMポップの要素は減り、よりシリアスでダークなテーマが増えたことで、音楽的な深みが増している。一方で、リスナーによっては「以前のThe Chainsmokersのような楽曲を期待していたが、違う方向性に進んでしまった」と感じるかもしれない。
特に、「Sick Boy」や「Everybody Hates Me」では、名声を手に入れたアーティストとしての孤独感や社会への不信感が歌詞に反映されており、Andrew Taggartのボーカルも以前よりも感情的で力強いものになっている。
また、プロダクション面でもオルタナティブ・ポップやロック、R&Bの要素を取り入れることで、The Chainsmokersが幅広いジャンルを探求していることが感じられる。EDMにとどまらず、ポップ・ロックやオルタナティブに興味があるリスナーにとって、新鮮な驚きを与えるアルバムとなっている。
おすすめアルバム
- Twenty One Pilots – Trench (2018)
- The Chainsmokersのダークなテーマとオルタナティブなサウンドに共鳴する作品。
- Marshmello – Joytime III (2019)
- フューチャーベースの要素が多く、The Chainsmokersの新しいスタイルに近い楽曲が多い。
- Kygo – Golden Hour (2020)
- エモーショナルなポップとエレクトロの融合が特徴で、「This Feeling」のような楽曲が好きなリスナーにおすすめ。
- Illenium – Ascend (2019)
- メロディックなエレクトロニック・ミュージックと感情的なボーカルが特徴。The Chainsmokersの新しいスタイルと親和性が高い。
- Zedd – True Colors (2015)
- ポップ寄りのエレクトロサウンドで、The Chainsmokersのメロディアスな楽曲との共通点が多い。
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- ポップ寄りのエレクトロサウンドで、The Chainsmokersのメロディアスな楽曲との共通点が多い。
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