Shame the Devil by Robin Trower(1975)楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Shame the Devil(シェイム・ザ・デビル)」は、イギリスのブルース・ロック・ギタリスト Robin Trower(ロビン・トロワー) が1975年にリリースしたアルバム『For Earth Below』に収録された楽曲であり、重厚なグルーヴとスピリチュアルなテーマが交錯する、トロワーらしい深遠なロック・ナンバーである。

タイトルの「Shame the Devil(悪魔に恥をかかせろ)」とは、イギリスに伝わる諺「Tell the truth and shame the devil(真実を語れ、そうすれば悪魔が恥じる)」に基づく言葉。
このフレーズが示す通り、曲の根底には真実、信念、正しさを貫こうとする内なる叫びがある。

語り手は“悪魔”と対峙しながら、自らの選択、生き方、そして過去の行動を振り返りながら、善と悪、光と影の狭間に立ち尽くしている
その言葉には怒りよりもむしろ、後悔や苦悩、しかしそれでも“まっすぐに立とうとする意志”が滲んでいる

2. 歌詞のバックグラウンド

「Shame the Devil」は、1975年発表の3rdアルバム『For Earth Below』に収録されている。このアルバムは、Trowerのブルース・ロック路線の深化を象徴する作品であり、前作『Bridge of Sighs』の成功を経て、自信と挑戦が同居したサウンドが印象的だ。

ヴォーカルは引き続き James Dewar(ジェイムズ・デュワー) が担当しており、そのディープでソウルフルな声が、楽曲の宗教的・哲学的なニュアンスをより立体的に浮かび上がらせている

演奏面では、トロワーの中域に粘り気のあるギター・トーン、ワウを駆使したエモーショナルなフレージング、そして沈黙を生かした間の取り方が非常に印象的。楽曲はブルージーでありながら、どこかオカルト的、儀式的な空気すら漂わせており、“悪魔と向き合うための内なる儀式”のような雰囲気を纏っている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

You better shame the devil
Tell the truth and shame the devil
Stand up and say what you feel
The devil has no deal

悪魔に恥をかかせるんだ
真実を語り 偽りを暴け
自分の感情に正直になれ
悪魔に取引は通用しない

No more lies, no more games
Don’t be a pawn in the devil’s game

もう嘘はやめろ もう駆け引きは終わりだ
悪魔のゲームに加担するな

引用元:Genius 歌詞ページ

歌詞のトーンは、直接的かつ厳粛で、心の奥にある正義感や誠実さに訴えかけてくる力を持っている
“真実を語れ”という命題は、現実社会にも通じる、普遍的なメッセージである。

4. 歌詞の考察

「Shame the Devil」は、Robin Trowerの作品の中でも珍しく、道徳的、宗教的な倫理観を全面に押し出した楽曲である。

「Tell the truth and shame the devil」という格言的なリフレインは、ただの口先の美徳ではなく、真実を語ることのリスクや痛みを知ったうえで、それでもなお正直であり続ける覚悟を求めているように響く。
この曲における“悪魔”は、宗教的な実在ではなく、嘘、偽り、欺瞞、自分自身の弱さ――つまり内なる敵そのものを指しているのかもしれない。

また、Dewarの歌い方は、怒りに満ちた咆哮ではなく、どこか苦悩をにじませた“内なる告白”のようであり、聴く者に自分自身のなかの“悪魔”と向き合うよう促す
一方でトロワーのギターは、言葉で語りきれない焦燥や怒り、沈黙の痛みを訴えるように鳴り響き、この楽曲を“祈り”にまで高めている

サウンドの上では、楽曲はミッドテンポながら、常にどこか張り詰めた緊張感を保っており、それが**“決して軽くは扱えない主題”であることを示している**。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • The Prophet’s Song by Queen
    黙示録的なメッセージと構成美が共鳴する、ロックの預言詩。

  • Presence of the Lord by Blind Faith
    スピリチュアルな気づきと魂の救済を描いた、クラプトンの神聖な名作。

  • No Quarter by Led Zeppelin
    闇と対峙する旅路、静と動が共鳴する神秘的ロック・トラック。

  • Sinner by Judas Priest
    善と悪のせめぎ合いをメタルで描く、重厚なスピリチュアル寓話。

  • Bridge of Sighs by Robin Trower
    苦悩と超越、黙示録的風景を描く、ギターによる“沈黙の詩”。

6. 真実を語ることの、強さと痛み

「Shame the Devil」は、Robin Trowerのキャリアのなかでも特異な倫理的メッセージを帯びた“告白と覚醒”の歌である。

それは怒りに満ちた曲ではなく、
静かで、誠実で、
しかしどこまでも鋭い問いかけだ。

「あなたは真実を語れるか?」
「自分の中の“悪魔”と向き合う覚悟はあるか?」

この曲は、その問いに耳を澄ませ、
目を背けずに、自分自身に対して答えようとする者たちのための音楽である。

そして、答えを出すにはまだ時間がかかるとしても、
その一歩を踏み出す勇気のために、この曲は静かに力を貸してくれる

ギターの轟きと、歌声の痛み――
それは、沈黙を破り、悪魔を恥じさせるための、魂の小さな革命なのだ。

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