アルバムレビュー：Se Dice Bisonte, No Búfalo by Omar Rodríguez-López

アルバムレビュー

2025.03.09

発売日: 2007年5月29日
ジャンル: エクスペリメンタル・ロック、プログレッシブ・ロック、ジャズフュージョン、ラテンロック

ジャンルを超越する音の奔流——Omar Rodríguez-Lópezの自由な創造性が炸裂する
全曲レビュー
総評
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ジャンルを超越する音の奔流——Omar Rodríguez-Lópezの自由な創造性が炸裂する

2007年にリリースされたSe Dice Bisonte, No Búfaloは、Omar Rodríguez-Lópezのソロキャリアにおける最も実験的で多彩な作品の一つであり、彼の音楽的な探求心と独自のサウンドが詰まったアルバムである。本作は、The Mars VoltaのAmputechture（2006年）の制作と並行して録音されたこともあり、The Mars Voltaの影響を色濃く受けながらも、よりフリーフォームなジャズフュージョンやラテンミュージックの要素が加わった作品となっている。

アルバムには、The Mars VoltaのメンバーであるCedric Bixler-Zavala（ヴォーカル）、Juan Alderete（ベース）、Adrián Terrazas-González（フルート／サックス）、そしてMarcel Rodríguez-López（パーカッション／キーボード）が参加しており、バンドの延長線上にあるようなサウンドながらも、より即興的で実験的なアプローチが際立つ作品となっている。

全曲レビュー

1. The Lukewarm

アルバムの幕開けを飾るトラックで、アグレッシブなギターとジャズフュージョン的なドラムが印象的。Cedric Bixler-Zavalaのヴォーカルが登場し、The Mars Voltaに通じるダイナミックなサウンドを展開する。

2. Luxury of Restraint

不規則なリズムとフリージャズ的なブラスが特徴の楽曲。ギターのエフェクトが多用され、カオティックな展開が続く。複雑なリズムセクションがスリリングな印象を与える。

3. Rapid Fire Tollbooth

Cedricのヴォーカルが再び登場し、The Mars Voltaのようなプログレッシブな楽曲。しかし、リズムの変化が激しく、より実験的な要素が強調されている。

4. Thermometer Drinking the Bussness of Turnstiles

タイトル通りのカオティックな構成を持つ楽曲。ギターのディストーションと電子音が交錯し、即興的なジャズの要素も感じられる。

5. Se Dice Bisonte, No Búfalo

アルバムのタイトル曲であり、最も異彩を放つ楽曲。ラテン音楽の要素が強く、パーカッションとホーンセクションが印象的。曲全体がフリーフォームなセッションのような雰囲気を持ち、Omarの即興的なギタープレイが際立つ。

6. If Gravity Lulls, I Can Hear the World Pant

静寂とノイズが交錯するアンビエントな楽曲。エフェクトを多用したギターと、ミニマルなリズムが不穏な雰囲気を作り出している。

7. Please Heat This Eventually

10分以上にわたる長尺の楽曲で、ジャズフュージョンとプログレッシブ・ロックが融合した壮大なトラック。Omarのギターが暴れまわりながらも、ベースとドラムのリズムがグルーヴ感を生み出している。後半には、ラテンのリズムも加わり、まさにジャンルを超越した楽曲となっている。

8. Lurking About in a Cold Sweat (Held Together by Venom)

カオティックなギターと、実験的なドラムが組み合わさる即興的な楽曲。ノイズとメロディが交錯し、リスナーを混沌の世界へと引き込む。

9. Boiling Death Request a Body to Rest Its Head On

スローなテンポで進行しながらも、徐々にノイズとカオスが増していく構成。映画のサウンドトラックのような雰囲気を持ち、ダークで幻想的な世界観を演出している。

10. La Tirania de la Tradición

アルバムのラストを飾る楽曲で、スペイン語のタイトルが示すように、ラテン音楽の要素が色濃く表れている。パーカッションとブラスが前面に出たアレンジが特徴的で、ジャズとロックの境界を曖昧にするような自由な演奏が続く。

総評

Se Dice Bisonte, No Búfaloは、Omar Rodríguez-Lópezの音楽的な探求心と自由な創造性が詰まったアルバムであり、ジャズ、ラテン、プログレッシブ・ロック、ノイズ、フリーインプロヴィゼーションなど、さまざまなジャンルの要素が交錯する作品である。

The Mars Voltaの影響を強く感じさせる瞬間もあるが、それ以上にOmar自身の個性が色濃く反映されており、より実験的で即興的なアプローチが強調された作品となっている。特に、タイトル曲「Se Dice Bisonte, No Búfalo」や「Please Heat This Eventually」では、ラテンやジャズの影響が色濃く、Omarの音楽の幅広さが存分に発揮されている。

このアルバムは、一般的なロックやプログレッシブ・ロックの枠を超えた作品であり、リスナーを選ぶ部分もあるが、Omar Rodríguez-Lópezの実験的な音楽性に興味があるリスナーや、The Mars Voltaのファンにはぜひ聴いてほしい一枚である。