
発売日: 2021年9月24日
ジャンル: インディー・ロック、オルタナティブ・ロック、ピアノ・ロック
14年ぶりの帰還——成熟したAir Trafficのエモーショナルな再会
2007年のデビューアルバムFractured Lifeで、エモーショナルなピアノ・ロックとエネルギッシュなギターサウンドを融合させたサウンドで注目を集めたAir Traffic。しかし、デビュー後まもなく活動を休止し、長い沈黙を経てリリースされたのが、本作Reunionである。
14年ぶりのセカンドアルバムとなる本作は、当時のインディー・ロックの熱気を残しつつも、より成熟したアレンジと深みのある楽曲が特徴。デビュー作の疾走感とエネルギーはそのままに、より洗練されたサウンドとパーソナルな歌詞が際立っている。
アルバムタイトルReunion(再会)が示す通り、ファンとの再会、メンバー同士の再結束、そして自分たちの音楽との再確認をテーマにした作品であり、懐かしさと新しさが交差するアルバムとなっている。
全曲レビュー
1. Never Even Told Me Her Name (Reprise)
2007年のデビューアルバム収録曲「Never Even Told Me Her Name」を再解釈したイントロ的な楽曲。ピアノとストリングスが美しく絡み合い、静かに幕を開ける。
2. Reunion
アルバムのタイトル曲であり、再始動を象徴する楽曲。過去と現在をつなぐような感傷的なメロディと、壮大なサウンドが印象的。ピアノのアルペジオが美しく、Chris Wallのエモーショナルなボーカルが際立つ。
3. Sticks & Stones
本作のリードシングル。キャッチーなメロディとアップテンポなビートが特徴的で、デビュー作のエネルギーをそのままに復活を告げるナンバー。バンドのダイナミズムを強く感じさせる一曲。
4. Every Little Light
ノスタルジックな雰囲気を持つミディアムテンポの楽曲。過去の記憶や失われたものをテーマにした歌詞が、穏やかなサウンドと相まって心に響く。
5. Be My Enemy
歪んだギターとピアノが絡み合う、エモーショナルかつ力強いトラック。かつての恋愛や友情に対する複雑な感情を描いている。
6. Keep the Car Running
ドライビング・ソング的な疾走感のある楽曲。ColdplayやSnow Patrolの影響を感じさせる広がりのあるサウンドが特徴的。
7. Home
ピアノとストリングスを主体としたバラード。静かながらも心に深く響く歌詞とメロディが特徴で、アルバムの感傷的な側面を象徴する楽曲。
8. Ghosts
ダークなムードを持つミステリアスな楽曲。エレクトロニカ的なアプローチも取り入れられ、バンドの新たな方向性を示唆する。
9. Late Night Calls
シンプルなアコースティックギターとボーカルが主体の楽曲。まるで深夜に語り合うような、親密で温かみのある雰囲気を持つ。
10. See You Again
アルバムのラストを飾る、希望に満ちた壮大な楽曲。長い別れを経て再会を果たしたバンドの感情が凝縮された一曲で、サビの高揚感が特に印象的。
総評
Reunionは、Air Trafficが14年の時を経て、自分たちの音楽と再び向き合ったアルバムである。
2000年代後半のUKインディー・ロックシーンの熱狂を知るファンにとって、本作は懐かしさとともに、彼らが今なお進化し続けていることを証明する作品となっている。
特に「Reunion」「Sticks & Stones」「See You Again」などは、デビュー作のエネルギーを継承しつつ、より成熟した楽曲へと昇華されている。一方で、「Home」や「Ghosts」のような楽曲では、バンドの新たな表現が試みられており、彼らがただのノスタルジーにとどまらず、次のステップへと進もうとしていることが伺える。
一方で、楽曲の構成やアレンジがシンプルになりすぎた部分もあり、デビュー作のような勢いを期待するとやや物足りなさを感じるかもしれない。しかし、それもまたバンドの成長と時間の流れを感じさせる要素であり、単なる再結成アルバムに終わらない、しっかりとした音楽的な進化が見られる。
長い沈黙を経て生まれた本作は、Air Trafficにとっても、ファンにとっても、まさに”Reunion”(再会)の象徴となるアルバムである。
おすすめアルバム
- Keane – Strangeland (2012)
ピアノ・ロックの叙情性と、成熟したバンドサウンドが共通する。 - Snow Patrol – Wildness (2018)
長い沈黙を経てリリースされたアルバムで、再生と希望のテーマが本作と重なる。 - Coldplay – Viva La Vida or Death and All His Friends (2008)
壮大なメロディと、エモーショナルな歌詞のスタイルが似ている。 - Athlete – Black Swan (2009)
UKインディー・ロックの叙情的なサウンドが本作と共通点を持つ。 - Travis – Everything at Once (2016)
シンプルながらも深みのあるメロディと歌詞が、本作と同じ方向性を持つ。
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