
発売日: 1998年11月16日(UK)
ジャンル: ダンス・ポップ、R&B、ヒップホップ・ポップ、アーバン・ソウル
概要
『Resurrection』は、イギリスのボーイバンド East 17 が改名後の E-17 名義で1998年にリリースした再出発アルバムであり、
トニー・モーティマー脱退後、ブライアン・ハーヴィーを中心とした新体制による“音楽的再生(Resurrection)”を象徴する作品である。
前作『Up All Night』(1995)で感情的なポップ・バラード路線を深めたEast 17は、
その後のメンバー間の確執やメディア騒動を経て活動休止。
満を持してリスタートを切った本作では、グループ名を“E-17”に変更し、よりストリート/R&B色を強めた都会的かつ洗練されたサウンドへとシフトしている。
サウンド面では、90年代後半のUKガラージ、US型R&B、エレクトロニック・ポップを融合し、
East 17らしいソウルフルなボーカルとリズムの強度はそのままに、時代に即したアップデートを感じさせる一作である。
ただし商業的にはグループ名変更や世代交代の影響もあり、セールスは振るわず、
結果的にこの作品が**East 17=E-17の“90年代最後のアルバム”**となった。
全曲レビュー
1. Each Time
リードシングルにして、本作最大のヒット曲。
洗練されたR&Bポップに乗せて、過去の恋への未練と再生を描いたミディアムナンバー。
切なさと滑らかさが同居した、E-17流の大人の愛。
2. Betcha Can’t Wait
2ndシングル。よりファンキーなトラックとラップの絡みが特徴的。
ダンサブルでクラブ向けのエネルギーを放ちながらも、どこかメロウなムードを保つ。
3. Ain’t No Stoppin’
アルバムタイトルと呼応する“再生の誓い”を歌ったアッパーな自己肯定トラック。
前向きなリリックとタイトなビートが好印象。
4. Sleeping in My Head
幻想と現実の狭間を描いた内省的なミディアム・ポップ。
夜の静けさを想起させる、リリカルな雰囲気が漂う。
5. Tell Me What You Want
甘いR&Bチューン。ブライアン・ハーヴィーのソウルフルなボーカルが存分に活かされた一曲。
恋人へのストレートな問いかけが胸に迫る。
6. Secret of My Life
“君こそが人生の秘密”という少しセンチメンタルなラブソング。
サビでの広がりが印象的で、バラード寄りのアレンジが心地よい。
7. Thunder(New Version)
East 17時代の人気曲のリミックス再録。ラップやリズムセクションが強化され、
クラブ向けに生まれ変わった“夜のアンセム”。
8. Coming Home
自分のルーツに立ち返るような、ややトライバルなリズムとスピリチュアルなボーカル。
リユニオンの心情を暗喩的に描いているようにも感じられる。
9. I’m Here
ミッドテンポのR&Bポップで、友情や仲間への誓いを歌った楽曲。
East 17時代の“団結感”の延長線上にある一曲。
10. Rescue Me
緊迫感あるビートに乗せて、救いを求める心情を吐露するラブソング。
ドラマティックなアレンジが印象的で、アルバム中でもひときわエモーショナル。
11. I Want You
どこか90s US R&B風の流れを感じさせる、スムーズでセクシーなナンバー。
コーラスワークとリズムの絡みが心地よい。
12. Each Time(Sunship Remix)
UKガラージを代表するリミキサー、Sunshipによるリワーク。
軽快な2ステップビートで、原曲のロマンチックさがダンスフロア仕様に変貌。
総評
『Resurrection』は、East 17改めE-17の“リブランド戦略”の試金石として制作されたアルバムであり、
従来のストリート・ソウル×ポップの軸はそのままに、
1998年の音楽トレンドに寄り添ったクールでモダンなR&Bポップ作品として高く評価できる。
しかしながら、East 17時代の“やんちゃな不良少年たち”というイメージと、
『Resurrection』の“スーツを着た都会派ラヴァーたち”という新しい姿の間には、
ファンとの間で“イメージの断絶”が生まれてしまったのも事実である。
それでも本作には、
時代に抗いながらも前へ進もうとしたE-17の誠実な軌跡が、しっかりと刻まれている。
おすすめアルバム(5枚)
- Blue『All Rise』
E-17以降のUKボーイズグループによるR&B志向のデビュー作。『Resurrection』と同系統。 - Damage『Forever』
East 17と同時代のUKソウル系ボーイズバンド。感性と音楽性の親和性が高い。 - Five『Invincible』
ポップ×ラップのミックススタイルで、E-17の後継的な位置付け。 - Another Level『From the Heart』
よりアーバンでR&B色を強めたUKボーイバンド。『Resurrection』とのジャンル的接点が濃い。 - 911『There It Is』
ポップス寄りだが、90年代後期のUKボーイズグループとしての文脈が共通。
後続作品とのつながり
『Resurrection』を最後に、グループは一時解散。
以後、East 17名義での再結成やラインナップ変更を繰り返すことになるが、
オリジナルメンバーが揃い、“真のEast 17”として放ったラストアルバムといえるのがこの『Resurrection』である。
その意味で本作は、**名実ともにEast 17の“魂のリザレクション(復活)”**を記録した貴重な作品なのだ。
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