
発売日: 2017年8月11日
ジャンル: ポップ、カントリーロック、グラムロック
- 痛みを乗り越えた先の光—Keshaの新たな旅立ち
- 全曲レビュー
- 1. Bastards
- 2. Let ‘Em Talk (feat. Eagles of Death Metal)
- 3. Woman (feat. The Dap-Kings Horns)
- 4. Hymn
- 5. Praying
- 6. Learn to Let Go
- 7. Finding You
- 8. Rainbow
- 9. Hunt You Down
- 10. Boogie Feet (feat. Eagles of Death Metal)
- 11. Boots
- 12. Old Flames (Can’t Hold a Candle to You) (feat. Dolly Parton)
- 13. Godzilla
- 14. Spaceship
- 総評
- おすすめアルバム
痛みを乗り越えた先の光—Keshaの新たな旅立ち
2017年、KeshaはアルバムRainbowで劇的な音楽的転換を遂げた。本作は、彼女が長年の法的闘争を経てDr. Lukeのプロデュース体制を離れ、自らのクリエイティブ・コントロールを取り戻した記念すべき作品である。これまでのエレクトロポップ主体のサウンドから一変し、カントリー、ロック、バラードといった要素を取り入れ、よりパーソナルで感情的な楽曲が並ぶ。
リードシングル「Praying」は、彼女の痛みと再生を象徴するパワフルなバラードであり、これまでのオートチューンを多用したスタイルとは異なり、彼女の生の歌声が強調されている。また、Dolly Partonとのコラボレーションや、グラムロックの影響を受けたトラックも収録されており、Keshaの音楽的ルーツが色濃く表れたアルバムとなっている。
全曲レビュー
1. Bastards
アコースティックギターが主体のカントリー調のオープニング曲。「クソ野郎たちに負けるな」と歌うリリックは、彼女自身の闘争の歴史を反映しており、力強いメッセージソングとなっている。
2. Let ‘Em Talk (feat. Eagles of Death Metal)
ガレージロック調の疾走感あふれる楽曲。これまでのKeshaにはなかったロックンロールなサウンドが新鮮で、彼女の自由な精神が表現されている。
3. Woman (feat. The Dap-Kings Horns)
ファンクとロックが融合したパワフルなフェミニズム・アンセム。「私は自立した女だ」と高らかに宣言するこの曲は、Tik Tok時代の彼女とは異なる成熟したアティチュードを感じさせる。
4. Hymn
シンセポップの要素を取り入れた、ミッドテンポのアンセム。「居場所のない者たちのための賛歌」として、Keshaはアウトサイダーに寄り添う姿勢を示している。
5. Praying
アルバムの中核をなすエモーショナルなバラード。彼女の高音のロングトーンが圧倒的なインパクトを与え、彼女が経験した苦しみと、それを乗り越えた強さが込められた楽曲。Keshaのキャリアの中でも最も重要な曲のひとつ。
6. Learn to Let Go
ポップロック調の軽快な楽曲で、「過去の傷を乗り越えること」がテーマ。アルバム全体のテーマにもつながるポジティブなメッセージが込められている。
7. Finding You
カントリーの影響を感じさせるラブソング。サウンド的にはDolly PartonやFleetwood Macの影響を彷彿とさせる。
8. Rainbow
アルバムのタイトル曲で、壮大なピアノバラード。再生と希望をテーマにした楽曲で、Keshaの感情がダイレクトに伝わる。
9. Hunt You Down
カントリーロック調の曲で、ジョニー・キャッシュ的なアウトローミュージックの雰囲気を持つ。Keshaのルーツへのオマージュとも言える。
10. Boogie Feet (feat. Eagles of Death Metal)
グラムロックの影響が強いパーティーチューン。カラフルで遊び心に満ちた楽曲で、アルバムの中でも異色の存在。
11. Boots
カントリーとエレクトロポップを融合させたユニークな楽曲。これまでのKeshaのスタイルともリンクしながら、新しい方向性も見せる。
12. Old Flames (Can’t Hold a Candle to You) (feat. Dolly Parton)
Dolly Partonとのデュエットで、Keshaの母Pebe Sebertが作詞した楽曲のカバー。カントリー音楽への深い愛情が感じられる。
13. Godzilla
遊び心に満ちたフォークソング。怪獣ゴジラとの恋愛を描くユーモラスな楽曲で、アルバムの中で異彩を放っている。
14. Spaceship
アルバムのラストを飾るドリーミーな楽曲。Keshaの「地球を超えた旅」のようなテーマが感じられ、アルバムを締めくくるにふさわしい。
総評
Rainbowは、Keshaにとって単なるアルバムではなく、彼女自身の再生の証である。本作では、彼女が抱えてきた痛み、そしてそれを乗り越えた強さが色濃く反映されており、彼女のアーティストとしての深みが増したことが感じられる。
サウンド面でも、カントリーやロックを取り入れることで、新たな表現を模索しており、単なる「パーティー・クイーン」ではない、成熟したKeshaの姿が浮かび上がる。特に「Praying」は、彼女のキャリアを象徴する楽曲のひとつとして長く語り継がれるだろう。
また、アルバム全体を通して「希望」や「自由」といったテーマが貫かれており、リスナーに強いメッセージを投げかける作品となっている。RainbowはKeshaにとっての「第二のデビュー作」とも言える重要なアルバムであり、彼女の音楽的な成長とアーティスティックな自由を存分に感じることができる。
おすすめアルバム
-
Demi Lovato – Tell Me You Love Me (2017)
強いメッセージ性を持つバラードとパワフルなボーカルが共通点。 -
Miley Cyrus – Younger Now (2017)
カントリーとポップを融合させたスタイルが、Keshaの新しい方向性と類似。 -
Florence + The Machine – High as Hope (2018)
エモーショナルなボーカルと壮大なサウンドが共通するアルバム。 -
Dolly Parton – Jolene (1974)
Keshaが影響を受けたカントリーのレジェンドの代表作。
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