発売日: 2017年4月28日
ジャンル: インディーフォーク、アートポップ、オルタナティブロック
Feistの5作目となるスタジオアルバムPleasureは、これまでの彼女の音楽とは一線を画す、より生々しく、内省的でミニマルな作品だ。Metalsで見せたダイナミックなアレンジから一転し、より削ぎ落とされたサウンドアプローチを採用している。タイトルの「Pleasure(喜び)」とは裏腹に、アルバム全体を通して、孤独や痛み、自己の内面を探るテーマが描かれている。
Feistはこのアルバムを、自分の弱さや未完成な部分をあえてさらけ出すような「不完全さを抱きしめる作品」と語っており、その意図はシンプルで荒削りなサウンド、そして彼女の感情的なボーカルからも感じ取れる。ギターやパーカッションを中心にした控えめなアレンジが、歌詞とボーカルに焦点を当てたアルバムとなっている。
各曲ごとの解説
1. Pleasure
アルバムのタイトル曲であり、オープニングを飾るこの曲は、繰り返されるギターリフと静かながらも力強いボーカルが特徴。喜びと痛みが混ざり合うようなテーマが、アルバム全体のトーンを設定している。
2. I Wish I Didn’t Miss You
シンプルなアコースティックギターとFeistの切ないボーカルが印象的なバラード。失ったものへの思いを歌う歌詞が胸に迫る。
3. Get Not High, Get Not Low
ミニマルなビートと控えめなアレンジが心地よいトラック。感情の揺れ動きをテーマにした歌詞が、Feistの親密なボーカルで語られる。
4. Lost Dreams
内省的でメランコリックなトラック。Feistの囁くようなボーカルが、夢や希望を失うことへの深い思いを伝えている。
5. Any Party
抑えめな始まりから徐々に盛り上がる構成が特徴的。歌詞には、誰と一緒にいるかがパーティーの価値を決めるというメッセージが込められている。
6. A Man Is Not His Song
シンプルなメロディとFeistのボーカルが際立つトラック。タイトル通り、音楽がすべてを表すわけではないというメタ的なメッセージが込められている。
7. The Wind
静かで詩的な楽曲。自然と人間の感情を結びつける歌詞が美しく、アルバムの中でも特に印象的な一曲。
8. Century (feat. Jarvis Cocker)
Jarvis Cocker(元Pulpのボーカリスト)をフィーチャーしたアップテンポなトラック。時間と記憶をテーマにした歌詞と、ユニークなアレンジが目を引く。Cockerの語り部分が楽曲にアクセントを加えている。
9. Baby Be Simple
アコースティックギターとFeistのボーカルが主役の静謐な一曲。シンプルな生活や愛を求める気持ちが歌われている。
10. I’m Not Running Away
リズム感のあるギターと軽快なビートが心地よいトラック。タイトルとは裏腹に、不安や逃げ出したい気持ちを表現している歌詞が印象的。
11. Young Up
アルバムのラストを飾る楽曲で、希望と再生をテーマにした歌詞が心に響く。控えめなアレンジが、余韻のある締めくくりにふさわしい。
フリーテーマ:大胆な「不完全さ」を受け入れるアプローチ
Pleasureは、これまでのFeistのアルバムとは異なり、あえて粗削りな部分や未完成な印象を残すことを選択した作品だ。その結果、生々しい感情や本質に迫る音楽が生み出されている。このアルバムでは、派手なアレンジや過剰なプロダクションが一切排除され、シンプルさの中にある力強さが際立つ。
アルバム総評
Pleasureは、Feistがこれまで築いてきた音楽の枠を壊し、新しい地平を切り開いた挑戦的な作品である。シンプルで内省的なアプローチは、リスナーに深い感情的なつながりを提供し、彼女の音楽がいかに進化し続けているかを証明している。華やかさは少ないものの、その分一つ一つの音と言葉がダイレクトに心に響く。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Metals by Feist
内省的でダイナミックなアレンジが共通する、Feistの前作。
For Emma, Forever Ago by Bon Iver
削ぎ落とされたアコースティックサウンドと感情的な歌詞が響く作品。
Carrie & Lowell by Sufjan Stevens
シンプルで親密なアレンジが、Pleasureと共通する感覚を持つ一枚。
The Idler Wheel… by Fiona Apple
粗削りなサウンドと深い感情が特徴の作品。
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