発売日: 1990年11月27日
ジャンル: マッドチェスター、ダンスロック、アシッドハウス、ファンク
「Pills ‘n’ Thrills and Bellyaches」は、Happy Mondaysの3枚目のスタジオアルバムで、マッドチェスター・ムーブメントの頂点を象徴する作品の一つである。このアルバムは、バンドが持つファンクとダンスロックの融合がさらに進化し、アシッドハウスの要素を大胆に取り入れることで、クラブシーンに直結したサウンドを作り上げた。プロデューサーのPaul OakenfoldとSteve Osborneによる革新的なプロダクションが際立っており、アルバム全体に漂うトリッピーなムードが、90年代のレイブ文化やナイトクラブシーンを反映している。Shaun Ryderの風刺的でユーモアのあるリリックと、Mark “Bez” Berryの象徴的なパフォーマンスが、バンドの特徴的な個性を一層強調している。
各曲ごとの解説:
- Kinky Afro
「Kinky Afro」は、アルバムの中でも特にヒットした楽曲で、ファンキーなギターリフとキャッチーなコーラスが印象的。Shaun Ryderの開放的でユーモアあふれるリリックが、ファミリードラマを皮肉った内容で、ベースラインと軽快なリズムがダンスフロアを盛り上げる。 - God’s Cop
「God’s Cop」は、ダークでミステリアスなトラックで、マンチェスターの警察署長James Andertonを皮肉る内容。ギターリフとベースラインが重厚に絡み合い、Ryderの挑発的なボーカルが楽曲に反抗的なムードを与えている。 - Donovan
「Donovan」は、ファンクとダンスビートが融合した軽快なトラックで、Mark DayのギターとPaul Ryderのベースが楽曲を引き立てている。歌詞はトリッピーで、マンチェスターのクラブシーンを反映した、サイケデリックな雰囲気が漂う。 - Grandbag’s Funeral
「Grandbag’s Funeral」は、繰り返されるリフとリズムが特徴のファンキーなトラック。Shaun Ryderのボーカルが不思議でカラフルなリリックを展開し、ファンクとポップが巧みに融合している。 - Loose Fit
「Loose Fit」は、シンプルで中毒性のあるリズムが特徴的なトラックで、ベースラインが楽曲の骨格を支える。Ryderのリリックは、社会の規範からの解放と自由をテーマにしており、Bezのシグネチャー的なダンスパフォーマンスとも相まって、ライブでも人気の高い一曲。 - Dennis and Lois
「Dennis and Lois」は、ギターとベースが軽快に絡み合う楽曲で、ニューヨークのパンクロックシーンのアイコンであるDennisとLoisをテーマにしている。明るいサウンドが特徴的で、Happy Mondaysの陽気な一面が強調されている。 - Bob’s Yer Uncle
「Bob’s Yer Uncle」は、トリッピーなサウンドと挑発的な歌詞が特徴の楽曲。ミッドテンポで進行し、Ryderの気だるいボーカルとシンプルなベースラインが、浮遊感のあるトラックを作り上げている。セクシャルなテーマが大胆に表現された曲で、バンドのダークな一面が垣間見える。 - Step On
アルバムの中でも最も有名な曲の一つである「Step On」は、John Kongosのカバーであり、ピアノリフが印象的なダンスロックの名曲。軽快でキャッチーなリズムがダンスフロアを席巻し、Shaun Ryderのボーカルが楽曲全体を引き締めている。アルバム全体の中でも特にポップでダンサブルな一曲だ。 - Holiday
「Holiday」は、シンセサイザーのメロディが目立つトラックで、浮遊感のあるサウンドがリスナーを引き込む。明るいメロディの中にも、Ryderの独特なユーモアが反映された歌詞が散りばめられている。 - Harmony
アルバムのラストを飾る「Harmony」は、サイケデリックでドリーミーなトラックで、静かなリズムがゆったりと流れる。アルバム全体を締めくくるにふさわしい、リラックスした雰囲気が漂い、バンドの多面的な音楽性を感じさせる。
アルバム総評:
「Pills ‘n’ Thrills and Bellyaches」は、Happy Mondaysがファンク、ダンス、ポップ、サイケデリックの要素を大胆に融合させ、マッドチェスター・シーンの頂点に立った作品である。Paul OakenfoldとSteve Osborneのプロデュースによって、アルバム全体に漂うトリッピーでダンサブルなムードが完成され、Shaun Ryderの風刺的でユーモラスな歌詞が絶妙にサウンドとマッチしている。「Step On」や「Kinky Afro」などのヒット曲は、バンドの代表曲として今なお愛されており、90年代初頭のクラブシーンとレイブ文化を象徴する楽曲となっている。アルバム全体を通して、自由奔放でエネルギッシュなサウンドが支配しており、Happy Mondaysの音楽的なピークを記録した作品と言える。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Screamadelica by Primal Scream
Happy Mondaysと同時期にリリースされ、ダンスミュージックとロックを融合させた名作。アシッドハウスとサイケデリックな要素が、Happy Mondaysのファンにも響く。 - The Stone Roses by The Stone Roses
マッドチェスターシーンのもう一つの代表作。ポップなメロディとファンキーなリズムが、「Pills ‘n’ Thrills and Bellyaches」に共通する。 - Movement by New Order
ポストパンクからダンスミュージックへと進化を遂げた初期のNew Order作品。ハウスやエレクトロニカの要素がHappy Mondaysのサウンドと共鳴する。 - Groovy, Laidback and Nasty by Cabaret Voltaire
ダンスミュージックと実験的なサウンドが融合したアルバム。Happy Mondaysのダンサブルなエネルギーを好む人におすすめ。 - Behaviour by Pet Shop Boys
エレクトロポップの名作で、ダンスビートとメロディアスなサウンドが融合した作品。Happy Mondaysのポップサイドが好きな人にぴったり。
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