発売日: 2015年9月11日
ジャンル: シンセポップ、ニューウェーブ、エレクトロ・ファンク
- 成熟と冒険の間で揺れるポップの神々——Duran Duranの現在地
- 全曲レビュー
- 1. Paper Gods (feat. Mr Hudson)
- 2. Last Night in the City (feat. Kiesza)
- 3. You Kill Me With Silence
- 4. Pressure Off (feat. Janelle Monáe and Nile Rodgers)
- 5. Face for Today
- 6. Danceophobia (feat. Lindsay Lohan)
- 7. What Are the Chances?
- 8. Sunset Garage
- 9. Change the Skyline (feat. Jonas Bjerre)
- 10. Butterfly Girl (feat. Janelle Monáe)
- 11. Only in Dreams
- 12. The Universe Alone
- 総評
- おすすめアルバム
成熟と冒険の間で揺れるポップの神々——Duran Duranの現在地
80年代に華々しい成功を収めたDuran Duranが、2015年にリリースした14作目のスタジオ・アルバムPaper Godsは、彼らの長いキャリアの中でも特に実験的かつ野心的な作品である。
バンドの持ち味である洗練されたポップセンスと、現代的なエレクトロやファンクの要素が交錯し、まさに“紙の神々”というタイトルにふさわしい、儚くも煌びやかな音世界を描き出している。
本作ではプロデューサーにMark Ronson、Mr Hudson、Nile Rodgersらを迎え、Janelle MonáeやLindsay Lohan、Kieszaといった異なる世代・ジャンルのアーティストとのコラボレーションにも挑戦。
Duran Duranが単なる懐古的存在ではなく、現代においても「変わり続けること」を選び続けていることを証明する一枚となっている。
全曲レビュー
1. Paper Gods (feat. Mr Hudson)
宗教的なコーラスと共に幕を開ける、荘厳かつ挑戦的なタイトル曲。
消費社会や虚構の価値観を“紙の神々”になぞらえた歌詞は、Duran Duranらしい知性と皮肉に満ちている。
2. Last Night in the City (feat. Kiesza)
夜の都市を駆け抜けるようなエレクトロ・ダンスナンバー。
刹那的な快楽とその背後に潜む孤独が、煌めくビートの中に滲んでいる。
3. You Kill Me With Silence
スロウでアンビエントな導入から、鋭利なギターが切り込んでくる異色作。
「沈黙で殺される」という比喩的な表現が、愛と疎外の境界を描いている。
4. Pressure Off (feat. Janelle Monáe and Nile Rodgers)
Nile Rodgersらしい跳ねるファンク・グルーヴに、Monáeのボーカルが鮮やかに映える。
ダンサブルでありながら、ストレスからの解放をテーマに据えたポジティブな楽曲。
5. Face for Today
軽やかで透明感あるサウンドと、内省的なメロディが融合する佳曲。
表面の笑顔の裏にある不安を描いた、現代人のポートレートともいえる。
6. Danceophobia (feat. Lindsay Lohan)
Lohanの語りが印象的な異色のディスコ・トラック。
ダンスという行為に対する恐れと解放の両面をコミカルに表現している。
7. What Are the Chances?
壮麗なストリングスとスローな展開で聴かせるバラード。
偶然と運命をめぐる歌詞が、人生の儚さを静かに照らす。
8. Sunset Garage
レトロなソウル風味を取り入れた温かみのあるナンバー。
都会の片隅にあるガレージのような、ノスタルジックな逃避空間を描く。
9. Change the Skyline (feat. Jonas Bjerre)
MewのBjerreによるドリーミーな声と電子音が交差する、未来志向の一曲。
“スカイラインを変える”というイメージが、希望と再構築の象徴として響く。
10. Butterfly Girl (feat. Janelle Monáe)
ギターのカッティングが光るファンク・ナンバー。
Monáeとの再共演が、自由奔放な女性像を生き生きと描き出す。
11. Only in Dreams
7分に及ぶ大作で、シンセとギターの交錯が美しいサイケデリックな世界観を創出。
夢と現実の境界を揺らがせる、エピックなトリップトラックである。
12. The Universe Alone
静謐なピアノから始まり、壮大なクライマックスへと突き進むラストナンバー。
“ひとりきりの宇宙”という終末的なテーマは、死と再生の神話を感じさせる。
総評
Paper Godsは、Duran Duranの音楽的変遷の集大成であると同時に、彼らがいかに“現在”に生きるバンドであるかを示す作品である。
80年代の華やかさ、90年代の実験性、そして2010年代の洗練されたエレクトロポップが交差することで、本作は単なるノスタルジアではなく、未来への架け橋として機能しているのだ。
歌詞に込められた皮肉や批評性、そして各曲のジャンル横断的なアプローチは、リスナーに知的な刺激と感覚的な快楽を同時に与える。
Duran Duranが“過去の栄光に甘んじない存在”であることを再確認できる、堂々たる一枚である。
このアルバムは、彼らの初期の作品に親しんだリスナーにとっては新たな驚きとなり、現代のポップスに興味を持つ若い世代にとっても十分に魅力的だろう。
おすすめアルバム
-
Random Access Memories / Daft Punk
現代的なディスコ・サウンドと豪華コラボが魅力の傑作。 -
Rio / Duran Duran
彼らの代表作。80年代ポップの象徴的存在。 -
Uptown Special / Mark Ronson
Paper Godsのプロデューサーが手がけたファンク回帰作。 -
Electric Lady / Janelle Monáe
Monáeが提示する未来的R&Bとサイバーパンクな世界観。 -
Black Tie White Noise / David Bowie
ジャンルを越えた実験性とスタイリッシュさを併せ持つ作品。
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