アルバムレビュー:N.B. by Natasha Bedingfield

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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発売日: 2007年4月30日(UK)
ジャンル: ポップ、R&B、ダンス・ポップ、アーバン・ソウル


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概要

『N.B.』は、ナターシャ・ベディングフィールドが2007年に英国で発表した2枚目のスタジオ・アルバムであり、デビュー作『Unwritten』の成功を受けて制作された“内省と開放”が交差する作品である。

前作では、ポジティブで希望に満ちたエンパワーメント・ポップが中心であったが、本作『N.B.』ではより多面的な女性像を描き出すことに挑戦。
恋愛、欲望、孤独、自己の揺らぎ――そうした“人間らしさ”を包み隠さず、音楽として昇華している点で、ナターシャの表現者としての深化が明確に感じられる。

音楽的には、ポップスの骨格を保ちながら、エレクトロやファンク、トラディショナルなR&B、グランジ風ギターなど多様な要素を取り入れており、2000年代後半のUKアーバン・ポップの空気を色濃く映し出している。

なお、アメリカでは大幅に曲順と選曲を変更した『Pocketful of Sunshine』というタイトルで翌年リリースされており、本作『N.B.』は“UKでしか聴けないナターシャの顔”として貴重な位置づけを持っている。


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全曲レビュー

1. How Do You Do?
ファンキーなギターとベースが跳ねるグルーヴィーなオープニング・トラック。
一聴すると軽快なポップだが、“人とどう向き合うか”という核心をついた歌詞が奥深い。
挨拶という日常の行為の裏にある心理的距離を描いた楽曲。

2. I Wanna Have Your Babies
リードシングルにして、最も賛否を呼んだ楽曲。
タイトルのストレートさと、恋する女性の衝動的な感情を赤裸々に描くことで話題に。
軽やかなサウンドとは裏腹に、“女性の欲望”というタブーをポップに描いた問題作とも言える。

3. Soulmate
“運命の人は本当に存在するの?”という疑問を抱く内省的なバラード。
弦楽アレンジと繊細なヴォーカルが、孤独の深さと希望のかすかな光を同時に伝えてくる。
ナターシャのバラードの中でも、特に心に残る一曲。

4. Who Knows
人生の予測不可能性をテーマにした、前向きでスウィンギーなナンバー。
軽やかなリズムの中に、「未来はコントロールできないからこそ美しい」という哲学が込められている。

5. Say It Again
アコースティックギター主体のラブソング。
「その言葉をもう一度言ってほしい」という願望が、シンプルな構成と相まって感情を引き立てる。
柔らかさと真剣さが同居する佳曲。

6. Pirate Bones
“富と名声を得ても、魂を失ったら意味がない”という強烈なメッセージが込められた曲。
海賊の骨というユニークなメタファーを用い、業界批判的な視点も内包している。

7. Backyard
愛と記憶の“私的な風景”を描いたノスタルジックな一曲。
過去と現在を行き来するようなリリックと、控えめなビートが絶妙なバランス。

8. Tricky Angel
恋愛における“したたかさ”をテーマにしたダンサブルなポップ。
善悪が入り混じる人間像を、ユーモラスに、しかし深く描いている。

9. When You Know You Know
直感的な愛の瞬間を、ジャジーなコードとともに描写。
情景が浮かぶような描写力が高く、アルバム中でも異色のムードを持つ。

10. Not Givin’ Up
“諦めない”というシンプルなフレーズに込められた粘り強さ。
アップビートなリズムが背中を押すようなモチベーション・ソングで、ライブでも人気の高い曲。

11. Still Here
過去の恋愛を乗り越えた後の静かな心情を描いた終盤のバラード。
“もう終わったはずなのに、まだ心のどこかにいる”というリアリズムが胸に迫る。

12. Smell the Roses
アルバムのラストを飾るにふさわしいメッセージソング。
「立ち止まってバラの香りを嗅いでごらん」という、人生の速度を緩めることへの優しい促し。
癒しと余韻に満ちたクロージング。


総評

『N.B.』は、ナターシャ・ベディングフィールドがポップスターとしての“安全圏”から一歩踏み出し、“人間の複雑さ”を真正面から描いた意欲作である。

“恋したいけど怖い”“運命を信じたいけど疑ってしまう”“成功しても心が空っぽ”――そんな矛盾や葛藤を正直に表現したこのアルバムは、デビュー作のポジティブさに対するアンチテーゼであり、成熟への第一歩でもある。

音楽的にも実験性が増しており、バラード、エレクトロ、ファンク、アコースティックといった多彩なジャンルを縦横に行き来しながらも、ナターシャの芯の通ったヴォーカルと歌詞が作品全体を強く引き締めている。

また、“女らしさ”や“恋愛観”をめぐる価値観の揺らぎをそのまま表現した点で、後のLordeやFlorence Welch、Siaといったアーティストの文脈にもつながる“女性的自己表現の探求”の先駆けとも言えるだろう。

『N.B.』は、必ずしも万人受けするアルバムではない。
しかし、その“ありのままの揺らぎ”こそが、本作を今日でも聴き返す価値のある作品にしているのである。


おすすめアルバム(5枚)

  1. KT Tunstall『Drastic Fantastic』
    ポップとロックの間で揺れ動く女性像を描いた作品。ナターシャの多面的な表現と重なる。

  2. Duffy『Rockferry』
    レトロ・ソウル的アプローチと感情の表出が共通点。

  3. Sara Bareilles『Kaleidoscope Heart』
    女性の繊細な内面を力強く歌い上げたポップ・バラードの名盤。

  4. Natasha Bedingfield『Pocketful of Sunshine』
    本作のアメリカ版。選曲や構成が異なり、異なる魅力が引き出されている。

  5. Jessie J『Who You Are』
    自己肯定と心の揺らぎを併せ持つ女性ポップ・アルバム。『Soulmate』と共鳴する感情がある。

歌詞の深読みと文化的背景

『N.B.』の歌詞は、2000年代中盤における女性のライフスタイルや恋愛観の“変化の兆し”を明確に映している。

「I Wanna Have Your Babies」では、結婚や出産といった価値観に対する“衝動と葛藤”が、そのまま歌詞として提示されており、従来のラブソングとは異なるリアリティが宿っている。

また、「Soulmate」や「Pirate Bones」では、“恋愛の万能性”や“成功の虚しさ”といった近代的価値観への疑問が投げかけられており、当時のポップスにおける主流とは一線を画している。

ナターシャは、決して答えを与えない。
むしろ「迷ってもいい」「割り切れなくてもいい」という余白を残すことで、聴き手に自分自身の感情を照らし返させるような歌詞世界を築いている。

『N.B.』は、そんな“未整理な心”をそのままポップとして成立させた、稀有で勇敢なアルバムなのである。

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