発売日: 1981年11月11日
ジャンル: ポストパンク、ニューウェーブ
Movementは、Joy Divisionのフロントマンであるイアン・カーティスの死による突然の終焉から誕生したNew Orderのデビューアルバムである。本作では、Joy Divisionの持つポストパンクの暗さと冷たさを受け継ぎつつ、後にNew Orderの象徴となるエレクトロサウンドの萌芽も見られる。しかしながら、アルバム全体は未だイアンの影が色濃く残り、Joy Divisionの延長線上にあるかのような感傷的で内向的なトーンが漂っている。プロデューサーは、Joy Division時代からの盟友であるマーティン・ハネットが担当し、重厚で冷ややかなサウンドがさらに強調されている。
このアルバムには、後に世界的に影響を与えるNew Orderのダンス・エレクトロニック要素が部分的に垣間見られるものの、全体的にはポストパンク的なスタイルが支配的である。ベーナード・サムナーが新たにリードボーカルを担当し、彼がフロントマンとしての役割を模索する過程が感じられる作品でもある。収録曲の中には、「Dreams Never End」や「Truth」など、Joy Divisionからの影響が顕著な曲が多く、New Orderとしての確固たるアイデンティティが確立されるまでの過渡期を象徴するアルバムである。
トラックごとの解説
1. Dreams Never End
アルバムの幕開けを飾る、ベースラインが印象的なナンバー。ポストパンクの影響が色濃く出ており、内向的でありながらも力強いエネルギーを感じさせる一曲。
2. Truth
シンセサイザーとギターが重なり合う幻想的なトラックで、冷たさとメランコリックな雰囲気が漂う。Joy Divisionの影響が色濃く反映されている。
3. Senses
リズミカルでテンポのある楽曲で、少しずつエレクトロニックな要素が前面に出てくる。Bernard Sumnerの感傷的なボーカルが曲に独特の雰囲気を与えている。
4. Chosen Time
ダンサブルなリズムが特徴的で、後のNew Orderのエレクトロサウンドへの発展を感じさせる楽曲。軽快なビートが全体の重苦しいトーンに一抹の明るさを加えている。
5. ICB
スローテンポでミステリアスなムードが漂う一曲。ポストパンクの冷たさが際立ち、暗い雰囲気がアルバムのトーンを強調している。
6. The Him
暗く重厚なトラックで、イアン・カーティスを彷彿とさせるメランコリックなメロディが印象的。Joy Divisionの影響が色濃く表れた、エモーショナルな楽曲。
7. Doubts Even Here
エレクトロニクスとギターが交錯する、ポストパンクの真髄とも言える一曲。重い雰囲気が漂い、アルバム全体のダークなテーマに一層の深みを加えている。
8. Denial
力強いビートが特徴のアルバムのラストトラック。冷たさの中に希望の光を感じさせ、New Orderの新しい未来を示唆するエンディングとなっている。
アルバム総評
Movementは、Joy DivisionからNew Orderへと進化する過程で生まれた、バンドの歴史において特別な位置を占めるアルバムである。アルバム全体にはポストパンク特有の陰鬱さと冷たさが漂い、イアン・カーティスの影が色濃く残っているが、それが逆にアルバムの神秘的な魅力を引き出している。Bernard Sumnerのボーカルもまだ試行錯誤の段階にあるが、その不安定さが曲に独特の味わいを与えている。本作ではNew Orderのエレクトロポップとしての完成には至っていないものの、後に世界的な影響を与える彼らのサウンドがこの時期から芽生えていることが感じられる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Closer by Joy Division
ポストパンクの名盤で、陰鬱で冷たい雰囲気が共通する。イアン・カーティスの影響を色濃く感じられる作品。
Seventeen Seconds by The Cure
ポストパンク特有のメランコリックなトーンが特徴で、Movementのダークで内向的な雰囲気が好きな人におすすめ。
Faith by The Cure
深いメランコリーが漂うポストパンクの名作。Movementの冷たさや暗さが好きなリスナーに響く一枚。
Script of the Bridge by The Chameleons
メロディックでドラマティックなポストパンクアルバムで、陰鬱さと叙情性がNew Orderの初期作品と共通する。
The Pleasure Principle by Gary Numan
エレクトロニックな要素が多用された作品で、New Orderのエレクトロサウンドへの移行が好きなリスナーにぴったりの一枚。
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