アルバムレビュー:Mirrored by Battles

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2007年5月14日

ジャンル:マス・ロック、エクスペリメンタル・ロック、ポスト・ロック、アヴァン・ロック、エレクトロニック・ロック、ノイズ・ロック、プログレッシヴ・ロック、インストゥルメンタル・ロック

概要

Battlesのデビュー・アルバム『Mirrored』は、2000年代の実験的ロックにおいて特に重要な作品であり、マス・ロック、ポスト・ロック、エレクトロニック・ミュージック、ミニマル・ミュージック、プログレッシヴ・ロックの要素を、非常に独自の形で結びつけたアルバムである。Battlesは、Ian Williams、David Konopka、John Stanier、Tyondai Braxtonの4人によって構成されたバンドであり、それぞれがすでに別の音楽的背景を持っていた。Don Caballero、Helmet、Lynx、Storm & Stressなどの文脈を背負ったメンバーたちが集まったことで、Battlesは結成当初から単なるロック・バンドではなく、実験的な演奏集団として注目された。

『Mirrored』が特異なのは、複雑で技巧的な音楽でありながら、難解さだけに閉じこもらない点である。変拍子、ループ、反復、ギターの加工、エレクトロニックな処理、機械的なリズム、奇妙なヴォーカル処理が多用されているにもかかわらず、アルバム全体には強い身体性とポップな快感がある。これは、マス・ロックがしばしば陥りがちな技術の誇示とは異なる。Battlesは複雑さを、聴き手を遠ざけるためではなく、奇妙なダンス感覚と音響的な遊びへ変換している。

アルバム・タイトルの『Mirrored』は、「鏡に映された」「反射された」という意味を持つ。この言葉は、本作の音楽性を非常によく表している。Battlesの楽曲では、ギター、ベース、キーボード、ドラム、声が互いに反射し合い、同じフレーズが少しずつ形を変えながら反復される。音は直線的に進むというより、鏡の間で増殖するように展開する。リフは演奏されるだけでなく、ループされ、加工され、反射し、組み替えられる。そのため本作のサウンドは、ロック・バンドの生演奏でありながら、同時に電子音楽のような構築性を持っている。

2000年代半ばのロック・シーンにおいて、『Mirrored』は非常に新鮮だった。ポスト・ロックはすでに静と動の大きなダイナミクスを発展させ、マス・ロックは複雑なリズムと技巧を追求していた。一方、エレクトロニック・ミュージックやIDMは、リズムの解体と音響処理を進めていた。Battlesはこれらを別々のものとして扱わず、ロック・バンドの演奏力を保ったまま、電子音楽的な反復と加工を取り入れた。結果として『Mirrored』は、人間が演奏しているのに機械のようで、機械的なのに妙に肉体的な音楽になっている。

本作の象徴的な楽曲は「Atlas」である。奇妙に加工された声、重量感のあるドラム、ミニマルなリフ、巨大な反復構造によって、「Atlas」は2000年代実験ロックのアンセムとなった。Tyondai Braxtonの声は、通常の意味で歌詞を伝えるヴォーカルではない。ピッチを変えられ、加工され、まるで架空のキャラクターや機械の合唱のように響く。このヴォーカル処理によって、Battlesはロックの歌を解体し、声をリズムやテクスチャーの一部として使っている。

John Stanierのドラムも、本作の中核である。彼の演奏は非常に正確で、力強く、機械的でありながら、人間の身体性を失っていない。Helmetでの経験から来る硬質なパワーと、Battlesの複雑な構成に対応する精密さが組み合わさり、アルバム全体を推進する。ドラムは単なるリズムの支えではなく、曲の建築構造を決定する要素である。特に「Race: In」や「Atlas」では、Stanierのドラムが楽曲の骨格を支配している。

Ian WilliamsとDavid Konopkaのギター、キーボード、ベース、電子処理は、ロックの伝統的な役割を大きく変えている。ギターはコードを鳴らす楽器というより、短いフレーズを反復し、ループ化し、音色として配置する装置になっている。時にギターはシンセサイザーのように響き、時にパーカッションのように機能する。ベースも低音の土台だけでなく、リズムとメロディの中間に位置する要素として動く。

Tyondai Braxtonの役割は、ヴォーカル、ギター、キーボード、サンプラー、音響処理を横断するものであり、本作の奇妙なポップ性に大きく貢献している。彼の声は、意味を伝えるよりも、音楽の中にキャラクター性を持ち込む。これにより『Mirrored』は、完全なインストゥルメンタル作品ではなく、しかし通常の歌ものでもない、独自の位置に立っている。

歌詞の内容を伝統的に解釈することは、本作ではあまり重要ではない。むしろ、声がどのように加工され、どのように反復され、どのように楽器群と絡むかが重要である。言葉の意味より、声の形、音程、リズム、質感が優先される。これは、ロックにおけるヴォーカルの役割を再定義する試みでもある。Battlesにとって声は、自己表現の中心というより、音響構築の素材である。

『Mirrored』は、知的な構造と遊び心が共存する作品である。複雑な拍子や反復構造を分析的に聴くこともできるが、それだけでは本作の魅力を十分に捉えられない。重要なのは、その複雑さが最終的に奇妙な楽しさや身体的な高揚へ変わる点である。聴き手は、拍子を数えなくても、巨大な機械が踊っているような感覚に巻き込まれる。そこに『Mirrored』の独自性がある。

日本のリスナーにとって本作は、マス・ロックやポスト・ロックを理解するうえで非常に有効な入口である。ただし、従来のギター・ロックや歌ものを期待すると、最初は奇妙に聴こえる可能性がある。メロディはあるが、一般的なポップ・ソングのようには進まない。リズムは強いが、単純なロック・ビートではない。歌声はあるが、歌詞の物語を伝えるためには使われない。『Mirrored』は、ロック・バンドが2000年代にどこまで抽象的で、構築的で、同時に楽しくなれるかを示した作品である。

全曲レビュー

1. Race: In

「Race: In」は、アルバムの冒頭を飾る楽曲であり、『Mirrored』の構造的な美学を一気に提示する。タイトルには競走の開始、あるいは何かへ突入する感覚がある。実際、曲は徐々に組み立てられ、リズムとフレーズが増殖するように展開していく。聴き手は、通常のロック・ソングの入り口ではなく、精密な機械が作動し始める瞬間に立ち会うことになる。

サウンドは、細かなギター/キーボードの反復、強力なドラム、電子的な処理が組み合わされている。John Stanierのドラムは非常に重要で、曲全体を巨大な推進装置のように動かす。ドラムの力強さがあるからこそ、複雑なフレーズの反復が頭だけの音楽にならず、身体的な勢いを持つ。

この曲では、メロディが明確な歌として提示されるのではなく、短い音型が積み上がることで全体の形が作られる。Battlesの音楽は、リフの連続というより、音のパーツが建築されていく感覚に近い。「Race: In」では、その建築的な手つきが非常に鮮やかである。

アルバムのオープニングとして、この曲は完璧に機能している。『Mirrored』が、人間の演奏と機械的な反復、ロックのエネルギーと電子音楽の構築性を結びつける作品であることを最初に示している。

2. Atlas

「Atlas」は、『Mirrored』最大の代表曲であり、Battlesの名を広く知らしめた楽曲である。重く弾むドラム、反復されるリフ、そして加工された奇妙なヴォーカルが一体となり、ロックでもダンス・ミュージックでもない独自のアンセムを作り出している。2000年代実験ロックの象徴的な一曲である。

この曲の最大の特徴は、声の使い方である。Tyondai Braxtonのヴォーカルは、通常の歌声としてではなく、ピッチを変えられたキャラクターのように響く。歌詞の意味を明確に伝えるというより、声そのものがリズムとフックを作る。まるで機械仕掛けの合唱団が歌っているようでもあり、子どもの遊び歌が巨大な工場で増幅されているようでもある。

John Stanierのドラムは圧倒的である。規則的で、力強く、非常に身体的なビートが、曲の奇妙な電子的要素を地面につなぎとめている。このドラムがあるからこそ、「Atlas」は抽象的な実験音楽ではなく、身体を動かすロックとして機能する。

歌詞は断片的で、意味を追うよりも、声の反復と響きとして聴くべきである。「Atlas」というタイトルは、世界を背負う巨人を連想させるが、曲全体にも巨大な構造物が歩いているような重量感がある。反復される声とリフが、何か巨大な存在を立ち上げていく。

「Atlas」は、Battlesの美学を最も分かりやすく凝縮した曲である。複雑でありながら踊れる。奇妙でありながらキャッチーである。実験的でありながらアンセムとして成立している。『Mirrored』を代表するだけでなく、2000年代ロックの重要曲である。

3. Ddiamondd

「Ddiamondd」は、タイトルの綴りからして通常の言語感覚を少しずらした楽曲である。音楽的にも、リズム、音色、声の断片が奇妙に配置され、Battlesらしい遊び心と構築性が表れている。曲は短めながら、アルバムの中で強いアクセントを作っている。

サウンドは、反復されるフレーズと変則的なリズムを中心に進む。ギターや電子音は、通常のコード進行を作るというより、細かなパーツとして配置されている。音は硬質で、光を反射するような質感を持つ。タイトルの「diamond」を連想させる鋭さやきらめきが、音響にも反映されている。

ヴォーカルはここでも意味を明確に伝えるものではなく、音響的な要素として使われる。声は楽器の一部となり、リズムの中に組み込まれる。Battlesの音楽では、人間の声すらも機械的な反復の素材になるが、それによって逆に奇妙なユーモアと生命感が生まれる。

「Ddiamondd」は、『Mirrored』の中で、短く凝縮された実験性を示す曲である。大きな代表曲ではないが、アルバム全体の奇妙な質感を強める重要な楽曲である。

4. Tonto

「Tonto」は、アルバムの中でも特に構築的で、徐々に展開していく楽曲である。Battlesの音楽が持つミニマルな反復と、ポスト・ロック的な広がりがよく表れている。曲は一気に爆発するのではなく、細かなパターンが重なりながら、時間をかけて形を変えていく。

サウンドは、ギターとキーボードの反復が中心で、そこにドラムが精密に絡む。John Stanierのドラムは、単純なビートではなく、曲の構造を少しずつ押し広げる役割を果たしている。リズムは複雑だが、聴き手を迷子にするのではなく、反復によって徐々に身体へ浸透していく。

この曲では、Battlesの「変化する反復」が重要である。同じようなフレーズが繰り返されているようで、音色や配置、リズムの感覚が少しずつ変わる。その微細な変化が、曲全体に緊張感を生む。ミニマル・ミュージック的な手法が、ロック・バンドの編成の中で生かされている。

「Tonto」は、『Mirrored』の中でも非常に完成度の高い楽曲である。派手なヴォーカル・フックを持つ「Atlas」とは異なり、こちらはアンサンブルと構成の妙で聴かせる。Battlesの知的な側面と身体的なグルーヴが高い水準で結びついた曲である。

5. Leyendecker

「Leyendecker」は、アルバムの中でも比較的ポップな印象を持つ楽曲である。ただし、ここでのポップさは一般的な歌ものの分かりやすさではなく、反復されるフレーズや加工された声が作る奇妙な親しみやすさである。Battlesの音楽が持つユーモアがよく表れている。

サウンドは、跳ねるようなリズムと、明るさを含んだ音色が中心である。ギターやキーボードのフレーズは細かく反復され、曲全体に軽快な動きを与える。ドラムは力強いが、重すぎず、曲に弾力を与えている。

ヴォーカルはやはり加工され、言葉の意味よりも音の形が強調される。声はまるで漫画的なキャラクターのように響き、曲に独特の非現実感を加える。タイトルがアメリカのイラストレーターJ. C. Leyendeckerを連想させることもあり、どこか視覚的で、ポップ・アート的な感覚がある。

「Leyendecker」は、『Mirrored』の中で軽やかな面を担う曲である。複雑な構造を持ちながら、音の表情は遊び心に満ちている。Battlesが単なる技巧派バンドではなく、ユーモラスでカラフルな音楽を作るバンドであることを示している。

6. Rainbow

「Rainbow」は、タイトル通り、アルバムの中で色彩感のある楽曲である。Battlesの音楽は硬質で機械的に語られがちだが、この曲には比較的明るく、開けた印象がある。ただし、その明るさは直線的なポップではなく、屈折した構造の中から現れる。

サウンドは、反復するギターや電子音、揺れるリズムによって構成される。曲は少しずつ形を変え、単純な展開には進まない。虹というタイトルにふさわしく、複数の音色が層になり、互いに反射し合うように配置されている。

この曲でも、Battlesのアンサンブルは非常に緻密である。各パートが単独で目立つというより、全体の構造の中で機能している。ギターはリフであり、同時にリズムであり、音響素材でもある。ドラムは曲の推進力であり、構造の中心でもある。

「Rainbow」は、『Mirrored』の中で、比較的開放的な空気をもたらす曲である。重く奇妙な楽曲が並ぶ中で、色彩感と広がりを与える役割を果たしている。Battlesの音楽が、無機質な構築だけでなく、音の鮮やかさも持っていることを示す楽曲である。

7. Bad Trails

「Bad Trails」は、アルバム中盤でやや不穏な空気を作る楽曲である。タイトルは「悪い道」「よくない痕跡」といった意味を連想させ、曲全体にも少し歪んだ移動感がある。Battlesの音楽にある奇妙な冒険性がよく出ている。

サウンドは、細かなリズムとギター/キーボードの反復によって構成される。曲は直線的に進むというより、曲がりくねった道を進むように展開する。拍子やフレーズの配置が少しずつずれることで、聴き手は安定した足場を失う。

この不安定さは、マス・ロック的な魅力の一つである。ただしBattlesの場合、複雑さが硬い計算だけにならず、どこかコミカルで、奇妙な生き物の動きのように感じられる。音楽が数学的でありながら、同時に漫画的でもある。この二面性が彼らの独自性である。

「Bad Trails」は、アルバムの中で目立つ代表曲ではないが、『Mirrored』の迷宮的な性格を支える楽曲である。聴き手をまっすぐな道ではなく、歪んだ音の通路へ連れていく曲である。

8. Prismism

「Prismism」は、タイトルに「prism」を含むように、音が屈折し、分光されるような感覚を持つ楽曲である。『Mirrored』というアルバム・タイトルとも深く響き合う曲であり、音の反射、屈折、増殖がテーマのように感じられる。

サウンドは、細かく配置されたフレーズが互いに反応し合う構造を持つ。ギターや電子音は、単一の旋律を作るのではなく、プリズムを通した光のように分裂し、複数の方向へ広がる。リズムも複雑で、曲全体に多面体のような印象を与える。

この曲では、Battlesの音響的な設計力がよく分かる。各楽器は伝統的なロックの役割から解放され、音のパターンとして配置される。ギターはギターらしく響く瞬間もあるが、多くの場合、シンセやサンプルのように扱われる。声も楽器的に使われ、曲の表面に奇妙な光沢を加える。

「Prismism」は、アルバムのコンセプトを補強する重要な楽曲である。『Mirrored』という作品が、音を鏡やプリズムのように反射・屈折させながら構築されていることを、非常によく示している。

9. Snare Hangar

「Snare Hangar」は、タイトルからして打楽器的な意識が強い楽曲である。「snare」はスネア・ドラム、「hangar」は格納庫を意味し、巨大な空間の中で打撃音が反響するようなイメージを持つ。Battlesのリズムへの関心が前面に出た曲である。

サウンドは、パーカッシヴな要素が強く、ドラムと反復フレーズが曲を支配する。John Stanierのドラムは、ここでも非常に正確でありながら、単なる機械ではない。打撃の強さ、間の取り方、フィルの入り方が、曲に緊張感を与える。

ギターや電子音は、ドラムの周囲を動くパーツとして機能する。音は短く切られ、リズムの一部として配置される。Battlesの音楽では、メロディとリズムの境界がしばしば曖昧になるが、この曲では特にその傾向が強い。

「Snare Hangar」は、アルバムの中でリズムの実験性を強調する曲である。派手なメロディやヴォーカル・フックは少ないが、Battlesの音楽を支える打撃的な構造を理解するうえで重要な楽曲である。

10. Tij

「Tij」は、短いながらも、Battlesの抽象的な音響感覚が表れた楽曲である。タイトルの意味は明確ではないが、その曖昧さも含めて、音そのものを楽しむタイプの曲である。アルバムの中では、次の大きな展開へ向かう前の奇妙な接続部として機能する。

サウンドは、断片的なフレーズや電子的な質感を中心に構成される。曲は明確な起承転結を持つというより、短い音の実験として現れる。Battlesの音楽には、大きな構築物としての曲と、こうした音響的な断片が共存している。

この曲では、音の質感そのものが重要である。ギター、シンセ、サンプラー的な処理が混ざり、どの音がどの楽器から出ているのか判然としない場面もある。ロック・バンドでありながら、音響の抽象性へ接近している点がBattlesらしい。

「Tij」は、アルバム全体の流れの中で小品的な役割を持つ。単独の代表曲ではないが、『Mirrored』の音響的な実験性を細部で支えている。

11. Race: Out

「Race: Out」は、冒頭曲「Race: In」と対になる楽曲であり、アルバムの終盤で構造的な回帰を作る。タイトル通り、開始された競走がここで出口へ向かうような感覚がある。『Mirrored』は反射と反復のアルバムであり、この曲の配置はその構造を強調している。

サウンドは、「Race: In」と同じく、反復とリズムの構築が中心である。ただし、こちらはアルバムを終盤へ導く役割を持つため、聴こえ方には回収や再配置の印象がある。最初に提示された要素が、長い音の迷宮を経て再び別の形で戻ってくるように感じられる。

Battlesの音楽では、曲名や構造にも建築的な意識がある。「In」と「Out」は単なるタイトルではなく、アルバム全体を一つのシステムとして捉えるための入口と出口である。聴き手はこの曲で、アルバムの中を一周したような感覚を得る。

「Race: Out」は、単なるエンディング前の曲ではなく、『Mirrored』の構成意識を明確に示す楽曲である。アルバムが曲の集合ではなく、音の回路として設計されていることを感じさせる。

12. All Tomorrow’s Parties

『Mirrored』の一部エディションや関連音源で語られることのある「All Tomorrow’s Parties」は、The Velvet Undergroundの名曲と同じタイトルを持つが、Battlesの文脈では、タイトルの参照性そのものが重要になる。The Velvet Undergroundが1960年代のアンダーグラウンド、反復、都市的な退廃を象徴する存在だとすれば、Battlesはその反復性を2000年代のデジタル/マス・ロック的な構造へ変換したバンドとして位置づけられる。

Battlesの音楽には、Velvet Underground的な反復の美学が直接的ではないにせよ、別の形で受け継がれている。単純なコードを延々と繰り返すのではなく、複雑な音型を機械的に反復し、そこに少しずつ変化を加える。つまり、反復は陶酔であると同時に、構造の実験でもある。

このタイトルが持つ「明日のすべてのパーティー」という言葉は、Battlesの音楽にもよく合う。『Mirrored』の楽曲は、未来的なパーティー・ミュージックのようでもある。ただし、それは通常のクラブ・ミュージックではなく、変拍子のロボットたちが踊るような、奇妙で知的な祝祭である。

この文脈を踏まえると、『Mirrored』はロックの過去を単純に継承するのではなく、反復、実験、身体性という要素を未来的に再配置した作品として理解できる。

総評

『Mirrored』は、2000年代の実験的ロックを代表する傑作であり、Battlesがマス・ロック、ポスト・ロック、エレクトロニック・ミュージック、ミニマル・ミュージックを独自に統合したアルバムである。複雑な構造を持ちながら、聴き手に知的な負担だけを与えるのではなく、奇妙な楽しさ、身体的なグルーヴ、ポップなフックを生み出している点が非常に重要である。

本作の最大の魅力は、人間の演奏と機械的な反復の中間にある感覚である。Battlesの音楽は、完全な電子音楽ではない。John Stanierのドラムは肉体的で、各メンバーの演奏にはバンドとしての緊張感がある。しかし同時に、ギターや声はループされ、加工され、機械のように配置される。この人間性と機械性の共存が、『Mirrored』の独自の質感を作っている。

「Atlas」はその象徴である。加工された声、重いドラム、反復されるリフが、奇妙で巨大なアンセムを形成する。この曲は、実験的でありながら非常にキャッチーで、Battlesの音楽が一部の専門的なリスナーだけでなく、広い層に届く可能性を持っていたことを示した。「Atlas」がなければ、『Mirrored』はより純粋な実験作として受け止められたかもしれない。しかしこの曲があることで、本作は実験とポップの境界を突破した。

一方で、「Tonto」「Race: In」「Race: Out」「Prismism」などでは、Battlesの構築的な側面がより強く表れる。短い音型が積み重なり、リズムが複雑に絡み、曲全体が精密な建築物のように立ち上がる。マス・ロック的な複雑さはあるが、単なる技巧の誇示ではない。すべての複雑さが、音楽の運動と質感を作るために使われている。

John Stanierのドラムは、本作において特に重要である。彼の演奏は非常に正確で、硬質で、強い。だが同時に、人間の腕が叩いているという肉体性がある。このドラムがあるからこそ、Battlesの音楽は電子的な抽象性へ行きすぎず、ロック・バンドとしての力を保っている。ドラムは本作の心臓であり、同時に巨大な機械のエンジンでもある。

Tyondai Braxtonの声の使い方も、本作の革新性を支えている。『Mirrored』では、声は歌詞を伝えるための媒体ではなく、音響素材として扱われる。ピッチを変えられ、ループされ、楽器のように組み込まれることで、声は人間的でありながら非人間的な存在になる。この処理が、アルバム全体に奇妙なキャラクター性を与えている。

ギターやベース、キーボードの使い方も、伝統的なロックとは大きく異なる。コード進行で曲を支えるというより、短いフレーズを反復し、音色を変化させ、構造を作る。これは、ロック・バンドの楽器編成を使いながら、電子音楽やミニマル・ミュージックに近い方法で作曲しているということである。Battlesは、ロックの形式を保ちながら、その内部の役割を組み替えている。

『Mirrored』の弱点を挙げるなら、通常の歌ものや感情的なロックを期待するリスナーには、距離を感じさせる可能性がある点である。歌詞の物語やヴォーカルの感情表現は中心ではなく、曲構成も一般的なポップ・ソングとは異なる。また、複雑なリズムや反復が多いため、最初は無機質に感じられるかもしれない。しかし、聴き込むほどに、その無機質さの中に奇妙なユーモアと身体性があることが見えてくる。

本作は、2000年代のロックがどのように電子音楽以後の感覚を取り込んだかを示す重要な作品である。90年代のポスト・ロックやマス・ロックが築いた複雑なアンサンブルの土台に、Battlesはデジタルなループ感覚とポップな奇妙さを加えた。これにより『Mirrored』は、知的な実験作でありながら、非常に現代的なダンス性を持つ作品になった。

日本のリスナーにとって『Mirrored』は、toeやLITEなどの日本のマス・ロック/ポスト・ロック文脈と比較して聴くこともできる。ただし、Battlesはより電子的で、より人工的で、よりユーモラスである。緻密な演奏の美しさだけでなく、音が変な形に歪み、機械のように踊り出す感覚がある。この点が、Battlesを他のマス・ロック・バンドと大きく分けている。

『Mirrored』は、ロック・バンドの可能性を大きく拡張したアルバムである。ギター、ベース、ドラム、声という伝統的な要素を使いながら、それらをループ、反復、加工、構築の素材として再配置した。結果として生まれた音楽は、難解でありながら楽しく、機械的でありながら身体的で、実験的でありながら奇妙にポップである。2000年代実験ロックの金字塔であり、今なお新鮮な響きを持つ作品である。

おすすめアルバム

1. Gloss Drop by Battles

2011年発表の2作目。Tyondai Braxton脱退後に制作され、複数のゲスト・ヴォーカルを迎えた作品である。『Mirrored』の緻密な構造を引き継ぎながら、よりカラフルで開放的なサウンドへ進んでいる。Battlesの変化を理解するうえで重要である。

2. American Don by Don Caballero

2000年発表のマス・ロック重要作。Ian Williamsが在籍したDon Caballeroの代表作であり、複雑なギター・パターンと変拍子、精密なアンサンブルが特徴である。『Mirrored』の背景にあるマス・ロックの源流を知るために有効な一枚である。

3. Hold Your Horse Is by Hella

2002年発表の作品。ギターとドラムによる超絶的なマス・ロックであり、複雑なリズムと高速の演奏が特徴である。Battlesよりも荒々しく、技巧の緊張感が前面に出ており、2000年代マス・ロックの別方向を理解できる。

4. Millions Now Living Will Never Die by Tortoise

1996年発表のポスト・ロック重要作。反復、ミニマルな構成、ジャズ、ダブ、エレクトロニックな感覚をロック・バンドの編成で再構築した作品である。『Mirrored』の構築的な反復やジャンル横断性を理解するうえで関連性が高い。

5. LP5 by Autechre

1998年発表のIDM重要作。複雑なリズム、抽象的な電子音、機械的な構造美を持つ作品であり、『Mirrored』の電子音楽的な側面を別の角度から理解できる。Battlesがロック・バンドとして行った構築性と、電子音楽における構築性を比較するうえで有効である。

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