
発売日: 2017年4月7日
ジャンル: エレクトロポップ、フューチャーベース
The Chainsmokersの進化と挑戦が詰まったデビューアルバム
Memories…Do Not Openは、The Chainsmokersにとって初のフルアルバムであり、2016年に「Closer」「Don’t Let Me Down」といった大ヒットを生み出した彼らが、EDMプロデューサー・デュオからアーティストへと進化を遂げた作品である。
本作では、エレクトロポップとフューチャーベースを融合させたサウンドを軸にしながらも、Andrew Taggartのボーカルを前面に出し、よりパーソナルで感傷的な楽曲が多く収録されている。歌詞のテーマは、若さ、恋愛、喪失、孤独といった普遍的なものが多く、The Chainsmokersが持つエモーショナルな側面を強く打ち出している。
「Paris」や「Something Just Like This(feat. Coldplay)」などのヒット曲を含むこのアルバムは、ポップとEDMの境界を曖昧にし、リスナーが感情移入しやすい楽曲が揃った作品となっている。
全曲レビュー
- The One
- アルバムのオープニングを飾るバラード調のエレクトロポップ。
- シンプルなピアノとTaggartの繊細なボーカルが印象的で、感情的な歌詞が際立つ。
- Break Up Every Night
- ポップロックの要素を取り入れたアップテンポな楽曲。
- The Chainsmokersにしては珍しくギターが前面に出ており、ライブ映えするサウンド。
- Bloodstream
- ミニマルなシンセとエモーショナルなボーカルが特徴的なミッドテンポの楽曲。
- 過去の恋愛と現在の自己の間で揺れ動く感情を表現している。
- Don’t Say (feat. Emily Warren)
- フューチャーベースを取り入れたドラマチックな楽曲。
- Emily Warrenの透き通ったボーカルとThe Chainsmokersのプロダクションが見事にマッチしている。
- Something Just Like This (with Coldplay)
- My Type (feat. Emily Warren)
- ミッドテンポのエレクトロポップで、心地よいビートとメロディが印象的。
- Emily Warrenのボーカルが楽曲に温かみを加えている。
- It Won’t Kill Ya (feat. Louane)
- フランスのシンガーLouaneを迎えたダンサブルなナンバー。
- ムーディーなサウンドとセクシーな雰囲気が特徴。
- Paris
- 「Closer」に続くエモーショナルなヒット曲。
- メロディアスなシンセとミニマルなドロップが印象的で、都会の孤独を描いた歌詞が共感を呼ぶ。
- Honest
- Andrew Taggartのボーカルが際立つ、内省的なエレクトロポップ。
- シンプルなビートとシンセが、感傷的な雰囲気を強調している。
- Wake Up Alone (feat. Jhené Aiko)
- R&Bの要素を取り入れたスローテンポの楽曲。
- Jhené Aikoのスムーズなボーカルが心地よく、幻想的な雰囲気を演出している。
- Young
- 切ない歌詞とシンプルなアレンジが印象的なナンバー。
- 青春の甘酸っぱい思い出をテーマにした楽曲で、アルバムの中でも特にパーソナルな曲の一つ。
- Last Day Alive (feat. Florida Georgia Line)
- カントリーとエレクトロポップの融合。
- Florida Georgia Lineのボーカルが、The Chainsmokersのエモーショナルなサウンドと意外な化学反応を見せる。
総評
Memories…Do Not Openは、The Chainsmokersが単なるEDMプロデューサーから、アーティストとしての幅を広げた作品であり、ポップ・ミュージックのフィールドで確固たる地位を築いたアルバムとなった。
アルバム全体を通して、シンプルなメロディとエモーショナルな歌詞を重視した楽曲が多く、リスナーの共感を誘うようなストーリー性が感じられる。EDM的なドロップを前面に押し出すのではなく、ポップとフューチャーベースの要素をバランスよく融合させたことで、The Chainsmokersならではの音楽スタイルを確立した作品となっている。
「Something Just Like This」や「Paris」などのヒット曲はもちろん、アルバム全体を通して、リスナーが自身の経験と重ねやすいテーマが描かれており、単なるダンスミュージックにとどまらない魅力がある。
一方で、アルバムの全体的な雰囲気が似通っているため、楽曲ごとのバリエーションが少なく感じる部分もあり、賛否が分かれる点もある。しかし、それを補うほどのキャッチーなメロディと感情的なサウンドが本作の最大の強みであり、The Chainsmokersの方向性を決定づけたアルバムと言える。
おすすめアルバム
- The Chainsmokers – Sick Boy (2018)
- Memories…Do Not Openの路線をさらに深化させた作品。ダークで内省的なテーマが多い。
- Zedd – True Colors (2015)
- メロディックなEDMとポップの融合が特徴。The Chainsmokersのサウンドと共通点が多い。
- Kygo – Kids in Love (2017)
- トロピカル・ハウスとポップの要素を組み合わせた作品。
- Marshmello – Joytime III (2019)
- フューチャーベースを主体としたエモーショナルなEDM作品。
- Illenium – Ascend (2019)
- メロディックなサウンドと感傷的なボーカルが際立つ、エモーショナルEDMの傑作。
“`
- メロディックなサウンドと感傷的なボーカルが際立つ、エモーショナルEDMの傑作。
コメント