Maybe California by The Snuts(2019)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Maybe California」は、スコットランド出身のインディーロック・バンド The Snuts(ザ・スナッツ)が2019年にリリースしたシングルで、バンド初期の代表曲のひとつとして多くのファンに愛されている楽曲である。軽快なギターポップのリズムと、青春のきらめきや逃避願望を織り交ぜたリリックが融合した、開放感あふれるサマー・アンセム的作品として人気を集めた。

タイトルにある「Maybe California(たぶんカリフォルニア)」は、文字通りの地名であると同時に、語り手にとっての理想郷、現実からの逃避先、恋愛と自由の象徴でもある。歌詞は、愛する人との関係のなかで感じる微妙な距離感と、そこから抜け出すための“ふたりだけの逃避行”を夢想するように展開される。

「君が望むなら、カリフォルニアへ行こうか」という誘いには、現実への失望と、それでもなお誰かと生きたいという希望が込められており、シンプルでありながら普遍的な若者の感情を鮮やかに描いている。

2. 歌詞のバックグラウンド

The Snutsは2019年の時点で、すでにライブ活動やインディーリリースによって注目を集めていたが、「Maybe California」のリリースによって一気に知名度を拡大させた。この曲はBBC Radio 1でも積極的にオンエアされ、バンドのメロディセンスと親しみやすいサウンドが広く受け入れられるきっかけとなった。

スコットランドという曇りがちな風土に生まれ育ちながらも、ここで描かれる「カリフォルニア」は太陽、開放感、そして期待に満ちた非現実的な場所として機能しており、それがかえって**“現実では叶わない自由”への憧れ**をより強調している。
この構図は、古くはビートルズの「Back in the U.S.S.R.」や、パルプの「Common People」など、ローカルな場所から遠く離れた理想への妄想を歌うブリットポップの伝統的手法にも通じている。

また、バンドはこの楽曲を「一種のラブソングだが、それ以上に逃避ソング」とも述べており、現代の若者たちが抱える不安や閉塞感を、夢の中でだけ解放しようとする衝動が色濃く反映されている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Maybe California
たぶん、カリフォルニアに行こうか

タイトルにもなっているこのフレーズは、夢想と希望が交差する瞬間の象徴であり、物理的な場所というよりも、語り手の心が求めている“抜け道”を意味している。

We could run away
ふたりで逃げ出すこともできるさ

ここでは、単なる旅行や冒険ではなく、人生そのものから逃げ出すような大胆さと、その裏にある“いまのままではダメだ”という切実さがにじむ。

If it’s all the same to you
君がそれで構わないなら

この控えめな言い方に、語り手の不安定さと恋人への遠慮が表れている。一方的な誘いではなく、同意を求める優しさと揺れが感じられる。

I could be your Hollywood star
君のハリウッドスターになってあげるよ

この比喩は、現実にはなれないかもしれない“何者か”への願望をユーモラスに、そして愛情深く示している。

※引用元:Genius – Maybe California

4. 歌詞の考察

「Maybe California」の最大の魅力は、その軽快さの裏に潜む若者特有の切実な願いと不安である。語り手は、愛する人との関係において決して満たされきってはいないし、現実の暮らしに対してもどこか退屈や不満を感じている。

だからこそ、「カリフォルニア」は逃げ場所になる。“たぶん”という曖昧な表現が付け加えられていることで、その計画が現実味のない夢であることが暗に示されるが、その“非現実”にこそ意味があるのだ。

本曲は、都市や社会に居場所を感じられず、どこかへ行きたいと願う若者たちの**“心のロードムービー”**として描かれており、恋人との絆とともに、“別の世界への道”を模索している様子が伝わってくる。

その一方で、語り手はすべてを捨てて逃げようとしているわけではなく、「もし君もそう思うなら」という慎重で誠実な姿勢が全編に通底している。それゆえこの曲は、ロマンティックでありながら、極めて人間らしく、共感性の高いラブソングに仕上がっている。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Are You Bored Yet? by Wallows feat. Clairo
    恋人との微妙な距離感を繊細に描いた、現代的な逃避ラブソング。

  • Undercover Martyn by Two Door Cinema Club
    ポップでありながら、内側にある焦燥を表現したインディーロック。
  • Sedona by Houndmouth
    アメリカの架空の理想郷への憧れを、旅情豊かに描いた一曲。

  • I Wanna Go by Summer Heart
    現実から逃れてどこか遠くへ行きたいという感情をサイケポップで表現。

  • Girls by The 1975
    自由であることへの欲望と、それに伴う不安を軽妙に描いたバンド初期の代表曲。

6. “たぶん、カリフォルニア”――それは希望か、現実逃避か

「Maybe California」は、The Snutsの音楽が持つ普遍性とローカル感の交差点に立つ楽曲である。
スコットランドという小さな場所から、遠く離れたアメリカ西海岸を夢想する――その構図は、**誰もが心に抱く“逃避と希望の地図”**を象徴している。

たとえそこへたどり着けなくても、その想像こそが人を前へ進ませる。
そして、その旅に誰かが一緒にいてくれるなら、それはもう十分に“本物”の愛なのだ。

この曲は、行き場を探す若者の心にそっと寄り添う、小さな自由の歌である。
“たぶん”という曖昧な希望の言葉に、私たちは安心し、そして少しだけ前を向けるのかもしれない。

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