アルバムレビュー:Love Goes by Sam Smith

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2020年10月30日

ジャンル:ポップ、R&B、ソウル、ダンス・ポップ、エレクトロポップ、バラード

概要

Sam Smithの3作目『Love Goes』は、これまでの失恋バラード中心の作風を保ちながらも、より広いポップ・サウンドへ踏み出した転換点的なアルバムである。2014年のデビュー作『In the Lonely Hour』では、「Stay with Me」「I’m Not the Only One」「Lay Me Down」などを通じて、片思い、孤独、報われない愛をクラシックなソウル・ポップとして表現した。2017年の『The Thrill of It All』では、ゴスペルやバラードの重厚さを強め、「Too Good at Goodbyes」「Pray」「HIM」などで、愛、信仰、自己認識、クィアなアイデンティティをより深く掘り下げた。

それに対して『Love Goes』は、Sam Smithが悲しみを歌うシンガーとしてのイメージを保ちながら、ダンス・ポップ、エレクトロポップ、R&B、クラブ・ミュージック、現代的なラジオ・ポップへ大きく接近した作品である。アルバムには「Diamonds」「How Do You Sleep?」「Dancing with a Stranger」「Promises」など、従来のピアノ・バラードだけではない、ビート主体の楽曲が多く含まれている。一方で、「Young」「For the Lover That I Lost」「Love Goes」「Kids Again」などでは、Sam Smithらしい繊細なヴォーカルと失恋の叙情性が中心に置かれる。

当初、本作は『To Die For』というタイトルで発表される予定だった。しかし、世界的な不安が広がる時期にそのタイトルは重すぎると判断され、最終的に『Love Goes』へ変更された。この変更は、アルバムの受け止め方にも大きく関わっている。『To Die For』が、愛にすべてを捧げる悲劇性を強調するタイトルだとすれば、『Love Goes』は、愛が去っていくこと、愛が続いていくこと、愛が形を変えて流れていくことを示す。つまり本作は、愛にしがみつくアルバムではなく、愛が過ぎ去った後の自分をどう受け入れるかを描くアルバムである。

Sam Smithのキャリアにおいて、本作は自己像の更新を示している。初期の彼らは、報われない愛を切々と歌うバラード・シンガーとして強く印象づけられた。しかし『Love Goes』では、悲しみの中にとどまるだけではなく、踊ること、欲望を認めること、軽さを取り入れること、ポップ・スターとしての身体性を表現することにも意識が向けられている。これは、単にサウンドが明るくなったということではない。傷ついた人間が、痛みを抱えたままクラブへ行き、誰かと出会い、自分の欲望や孤独を見つめ直す。そのような現代的な失恋の姿が描かれている。

音楽的には、これまでのSam Smith作品よりもプロダクションの幅が広い。ピアノとストリングスを中心としたバラードだけでなく、シンセ・ベース、電子的なドラム、トロピカルな質感、ディスコ的なグルーヴ、R&B的なメロディ処理が目立つ。Calvin Harrisとの「Promises」ではクラブ・ミュージックに接近し、Normaniとの「Dancing with a Stranger」では官能的なR&Bポップを展開する。「How Do You Sleep?」では、失恋の痛みをダークなエレクトロポップとして提示し、「Diamonds」では裏切られた愛を硬質なビートで切り出している。

しかし、サウンドが広がっても、アルバムの中心にあるのはやはりSam Smithの声である。彼らの声は、悲しみを直接的に伝えるだけでなく、曲によっては軽さ、皮肉、誘惑、諦め、再生を表現する。特に本作では、従来の大きく張り上げるバラード歌唱だけでなく、ビートの上で抑制された歌い方や、より親密なトーンも増えている。これはSam Smithが、単なるバラードの名手から、より多面的なポップ・ヴォーカリストへ移行しようとしていることを示している。

歌詞のテーマは、失恋、欲望、自己破壊、未練、別れの後の解放、若さへの後悔、相手への怒り、そして愛の記憶である。『In the Lonely Hour』では「愛されない自分」の痛みが中心だったが、『Love Goes』では、愛が終わった後も人生は続くという視点が強い。相手を失った後、まだ相手を思い出し、時には踊り、時には新しい誰かを求め、時には若かった頃の自分を振り返る。そこには、悲劇だけではなく、時間の経過と成熟がある。

『Love Goes』は、Sam Smithの作品の中でも評価が分かれやすいアルバムである。バラード中心の初期作を好むリスナーには、ダンス・ポップやシングル曲の多さが散漫に感じられる可能性がある。一方で、Sam Smithが自分の音楽性を広げ、失恋の表現をクラブ、R&B、エレクトロポップへ接続した作品として見ると、本作は重要な挑戦である。愛が終わった後の痛みを、泣くだけでなく踊ることでも表現する。そこに本作の現代性がある。

全曲レビュー

1. Young

「Young」は、アルバムの冒頭を飾る短いアカペラ的な楽曲であり、『Love Goes』のテーマを静かに提示する。Sam Smithの声だけが前面に置かれ、余計な装飾はほとんどない。ここで歌われるのは、若さ、過ち、自由、判断されることへの抵抗である。

歌詞では、若い時に失敗すること、愛すること、間違えること、傷つくことを許してほしいという感情が描かれる。これはSam Smith自身のキャリアや私生活への視線にも重なる。成功したアーティストは常に他者から評価され、行動や恋愛も見られる存在になる。その中で「若くあること」を許されたいという願いは、非常に切実である。

サウンドが極めて簡素であるため、声の揺れがそのまま曲の意味になる。アルバム全体にはダンス・ポップや電子的な音も多いが、冒頭にこのような裸の声を置くことで、Sam Smithの核心があくまで歌にあることが示される。「Young」は、華やかなポップの前に置かれた静かな告白である。

2. Diamonds

「Diamonds」は、本作の代表曲の一つであり、失恋と裏切りを硬質なダンス・ポップへ変換した楽曲である。タイトルの「ダイヤモンド」は、価値、富、きらびやかさ、そして冷たさを象徴する。歌詞では、相手が愛ではなく物質的な価値を求めていたことへの怒りと失望が描かれる。

サウンドは非常に洗練されており、鋭いビートとシンセ・ベースが曲を引っ張る。Sam Smithの声は、従来のバラードのように泣き崩れるのではなく、相手を見切った後の冷たさを持って響く。サビではメロディが強く開き、失恋の痛みが同時に解放感へ変わる。

歌詞の中心にあるのは、愛が取引のように扱われたことへの怒りである。相手は心ではなく「diamonds」を選んだ。つまり、関係の中にあったはずの親密さが、物質的な欲望や自己中心性によって壊されたということになる。この曲は、悲しみをただ内側に抱えるのではなく、鋭いポップ・ソングとして相手へ投げ返している。

3. Another One

「Another One」は、別れた相手が新しい誰かといることを知った時の痛みを描く楽曲である。タイトルは「また別の人」「もう一人」という意味を持ち、自分の代わりが現れたことへの寂しさと屈辱が込められている。Sam Smithの失恋表現の中でも、かなり現代的でリアルな感情を扱っている。

サウンドは抑制されたポップ・R&Bで、ビートは控えめながらも現代的である。Samのヴォーカルは、怒りよりも呆然とした悲しみを帯びている。相手が先へ進んでいることを知りながら、自分はまだ感情を整理できていない。その温度差が曲全体に漂う。

歌詞では、別れた後に相手が誰かと関係を持つことへの痛みが描かれる。愛が終わったことは理解していても、相手が自分以外の誰かを選んだ事実は心に残る。「Another One」は、恋愛の終わりそのものよりも、相手が自分なしで生きていることを知る残酷さを表現した楽曲である。

4. My Oasis feat. Burna Boy

「My Oasis」は、Burna Boyを迎えた楽曲であり、アルバムの中でもトロピカルで官能的な質感を持つ。タイトルの「オアシス」は、乾いた場所にある救いの水場を意味し、愛する相手が自分にとっての避難所であることを示している。しかし、この曲における愛は完全な安心ではなく、手に入りそうで手に入らないものとして描かれる。

サウンドは柔らかく、アフロポップやR&Bの要素を含んでいる。Burna Boyの声が入ることで、曲に温度とリズムの広がりが加わる。Sam Smithの繊細な声とBurna Boyの低く滑らかな声が対比を作り、楽曲に異なる感情の層を与えている。

歌詞では、相手を求める気持ちと、その相手に完全には届かない感覚が描かれる。オアシスは救いであると同時に、砂漠の中で遠くに見える幻のようでもある。この曲は、欲望と渇望を、明るすぎない温かなグルーヴの中で表現している。

5. So Serious

「So Serious」は、自己不安や心の重さをテーマにした楽曲である。タイトルは「なぜそんなに深刻なのか」という問いを含んでおり、外から見れば大げさに見える感情でも、本人にとっては抜け出せないものだということが示される。

サウンドは比較的軽やかだが、歌詞には不安や自己批判がにじむ。この対比が曲の魅力である。Sam Smithはここで、深いバラードの形式ではなく、ややポップな質感の中で心の不安定さを歌う。悲しみは常に壮大なピアノ・バラードとして現れるわけではなく、日常の中に軽く混ざり込むこともある。

歌詞では、自分が物事を深刻に受け止めすぎてしまうこと、心が重くなってしまうことへの自覚が描かれる。これはSam Smithの作品に繰り返し登場する、愛されたい気持ちと自己否定の感覚にもつながる。「So Serious」は、アルバムの中で精神的な揺らぎを比較的軽いポップ・ソングとして表現した曲である。

6. Dance (‘Til You Love Someone Else)

「Dance (‘Til You Love Someone Else)」は、失恋後の回復を「踊ること」に託した楽曲である。タイトルは「誰か別の人を愛するまで踊る」という意味で、痛みを忘れるためではなく、痛みを抱えたまま身体を動かし続ける姿勢を示している。『Love Goes』のダンス・ポップ的なテーマを象徴する曲の一つである。

サウンドはクラブ寄りで、ビートがはっきりしている。Sam Smithの声は、悲しみを含みながらも、曲全体は停滞せずに前へ進む。これは、失恋を静かに泣くものとしてだけでなく、夜のフロアで身体を通して処理するものとして描いている点で重要である。

歌詞では、相手を忘れられないまま、それでも踊ることで時間を進めようとする姿が描かれる。誰か新しい人を愛せるようになるまで、身体だけでも先へ進める。この曲は、現代的な失恋の処方箋としてのダンスを提示している。悲しみとビートが共存する、本作らしい楽曲である。

7. For the Lover That I Lost

「For the Lover That I Lost」は、本作の中でも特にクラシックなバラードに近い楽曲である。タイトルは「失った恋人へ」という意味を持ち、過去の愛に対する追悼のような響きがある。失恋を怒りや解放としてではなく、静かな喪失として描く曲である。

サウンドはピアノとストリングスを中心にしたシンプルな構成で、Sam Smithの声が深く響く。楽曲の焦点は完全に歌に置かれている。彼らの声は、相手を責めるのではなく、失われた愛を丁寧に思い返すように響く。そこには成熟した悲しみがある。

歌詞では、関係が終わった後に残る記憶や、相手への思いが描かれる。愛が終わっても、その人を愛した事実は消えない。この曲は、失恋を失敗としてだけではなく、喪失した大切なものへの祈りとして扱っている。Sam Smithのバラード・シンガーとしての強みが最も正統的に表れた一曲である。

8. Breaking Hearts

「Breaking Hearts」は、自分が傷つけられるだけでなく、自分もまた誰かを傷つける可能性を見つめる楽曲である。タイトルは「心を壊すこと」を意味し、失恋の加害性と被害性が交差する。Sam Smithの作品では、自分が傷つく側として描かれることが多いが、この曲ではより複雑な視点がある。

サウンドはミドルテンポで、ポップとR&Bの中間にある。メロディは滑らかで、Samの声はやや諦めを帯びている。曲全体には、恋愛の繰り返しの中で人が互いに傷つけ合うことへの疲れが漂う。

歌詞では、恋愛が美しいだけではなく、誰かの心を壊す行為にもなり得ることが示される。愛を求めることは純粋な行為に見えるが、その過程で他者を傷つけることもある。「Breaking Hearts」は、恋愛をロマンティックな理想だけでなく、痛みを生む現実として見つめた楽曲である。

9. Forgive Myself

「Forgive Myself」は、タイトル通り、自分自身を許すことをテーマにした楽曲である。Sam Smithの失恋ソングでは、相手への未練や怒りが多く描かれるが、この曲では焦点が内側へ向かう。相手を許すこと以上に、自分を許すことが難しいという感情が中心にある。

サウンドはバラード寄りで、穏やかなピアノとストリングスが感情を支える。Samのヴォーカルは非常に繊細で、罪悪感や後悔を静かに表現している。大きく叫ぶのではなく、自分に語りかけるような歌い方が印象的である。

歌詞では、過去の恋愛での失敗、自分の弱さ、相手を傷つけた可能性を受け入れながら、そこから回復しようとする姿が描かれる。失恋から立ち直るためには、相手との関係だけでなく、自分自身との関係を修復しなければならない。この曲は、その過程を丁寧に描いている。

10. Love Goes feat. Labrinth

表題曲「Love Goes」は、Labrinthを迎えた壮大なバラードであり、本作の感情的な中心に位置する楽曲である。タイトルは「愛は去っていく」「愛は進んでいく」といった複数の意味を持ち、アルバム全体のテーマを象徴している。

サウンドは非常にドラマティックで、ピアノから始まり、徐々にオーケストラ的な広がりへ向かう。Labrinthの参加によって、曲には幻想的で映画的な質感が加わっている。Sam Smithの声は、愛が終わったことを認めながらも、その愛の大きさを忘れられない人物として響く。

歌詞では、愛が終わることの避けられなさが描かれる。どれだけ強く愛しても、すべての関係が続くわけではない。しかし、愛が去ることは、愛が無意味だったことを意味しない。この曲は、失恋を単なる終わりではなく、人生の中を流れていく大きな力として捉えている。アルバム・タイトル曲として非常に重要な楽曲である。

11. Kids Again

「Kids Again」は、アルバム本編の終盤を飾る、若さと過去への郷愁を描いた楽曲である。タイトルは「もう一度子どもに戻る」という意味を持ち、過ぎ去った時間への切なさが中心にある。恋愛の終わりだけではなく、若かった頃の自分や、かつての純粋な関係が戻らないことへの悲しみが歌われる。

サウンドは穏やかで、フォーク・ポップにも近い温かさを持つ。Samの声は、懐かしさと諦めを含みながら、静かにメロディを運ぶ。大きなクライマックスではなく、過去を振り返るような柔らかな終わり方が印象的である。

歌詞では、昔のようには戻れないこと、若かった頃の無邪気さが失われたことが描かれる。愛が終わるだけでなく、時間そのものが人を変えてしまう。この曲は、恋愛の喪失をより広い人生の喪失感へ広げている。『Love Goes』の終盤に置かれることで、アルバムは単なる失恋から、成長と時間の物語へと広がる。

12. Dancing with a Stranger with Normani

「Dancing with a Stranger」は、Normaniとのデュエット曲であり、『Love Goes』の中でも最も洗練されたR&Bポップの一つである。別れた相手を忘れるために、知らない誰かと踊るというテーマは、本作の現代的な失恋像と深く結びついている。

サウンドはミニマルで官能的であり、ビートは抑えられながらも強いグルーヴを持つ。Sam SmithとNormaniの声は対照的で、Samの繊細さとNormaniのクールな滑らかさが曲に立体感を与えている。デュエットであることによって、孤独が一人だけのものではなく、複数の人物に共有される感情として表れる。

歌詞では、失恋の痛みを完全に癒やすのではなく、一時的に忘れるために誰かと踊る姿が描かれる。これは愛の代替ではなく、孤独をやり過ごすための行為である。「Dancing with a Stranger」は、Sam Smithが従来のバラード表現から、より都会的で身体的なポップへ踏み出した代表曲である。

13. How Do You Sleep?

「How Do You Sleep?」は、裏切りへの怒りと疑問をダークなエレクトロポップとして表現した楽曲である。タイトルは「どうして眠れるのか」という意味で、相手が自分を傷つけたにもかかわらず平然としていることへの不信が込められている。

サウンドは非常に現代的で、電子的なビート、シンセ、抑制されたヴォーカル処理が印象的である。Sam Smithの声は、ここでは悲しみを前面に出すというより、相手への冷たい問いかけとして響く。サビでは感情が広がるが、全体にはダークで張り詰めた空気がある。

歌詞では、相手の嘘や裏切りが明らかになった後の怒りが描かれる。傷ついた側は眠れないのに、傷つけた側は平気でいられる。その不均衡がこの曲の核心である。「How Do You Sleep?」は、Sam Smithのバラード的な悲しみを、より鋭くダンサブルな形へ変換した成功例である。

14. To Die For

「To Die For」は、もともとアルバム・タイトルになる予定だった楽曲であり、孤独と愛への渇望をテーマにした重要曲である。タイトルは「命を懸けるほどのもの」「それほど欲しいもの」という意味を持ち、ここでは誰かに愛されることへの切実な願いとして響く。

サウンドはバラード寄りで、ピアノと柔らかなプロダクションがSamの声を支える。曲は派手ではないが、感情の焦点が非常に明確である。Samのヴォーカルは、孤独を隠さず、むしろそのまま差し出すように響く。

歌詞では、街で幸せそうなカップルを見ながら、自分にも命を懸けられるほどの愛がほしいと願う姿が描かれる。これはSam Smithの初期作品にも通じる孤独のテーマだが、本作ではより成熟した形で表現されている。「To Die For」は、『Love Goes』の中心にある愛への渇望を象徴する曲である。

15. I’m Ready with Demi Lovato

「I’m Ready」は、Demi Lovatoとのデュエットによる力強いポップ・ソングである。タイトルは「準備はできている」という意味で、愛を受け入れる準備、自分を開く準備、そして強い感情に向かう姿勢が歌われる。アルバムの中でも、特に大きなポップ・アンセムとして作られている。

サウンドは壮大で、リズムも力強い。Sam SmithとDemi Lovatoの声はどちらも表現力が強く、互いに張り合うように高揚感を生む。ゴスペル的なコーラスも加わり、曲全体に祝祭的なスケールがある。

歌詞では、愛を求めることへの前向きな姿勢が描かれる。失恋や孤独を経験した後でも、もう一度愛を受け入れる準備ができているという宣言である。アルバム全体の中では、悲しみから回復し、再び愛へ向かう力を示す楽曲として機能している。

16. Fire on Fire

「Fire on Fire」は、ドラマティックなバラードであり、愛の激しさを炎にたとえた楽曲である。タイトルは「炎の上の炎」といった意味で、二人の強い感情がぶつかり合い、燃え上がる関係を示している。Sam Smithのロマンティックなバラード表現がよく出た曲である。

サウンドは大きく、ストリングスとピアノが感情を支える。Samのヴォーカルは非常に伸びやかで、愛の危うさと美しさを同時に表現している。曲全体には映画的なスケールがあり、アルバムの中でもクラシックなバラードとして際立つ。

歌詞では、二人の関係が強すぎるがゆえに危険であり、同時に抗えないものとして描かれる。炎は温かさであると同時に破壊でもある。この曲は、愛の激しさを肯定しながらも、その危うさを感じさせる。Sam Smithの得意とする大きな感情のバラードである。

17. Promises with Calvin Harris

「Promises」は、Calvin Harrisとのコラボレーションによるダンス・ポップ曲であり、Sam Smithのキャリアにおけるクラブ・ミュージックへの接近を象徴する楽曲である。タイトルは「約束」を意味するが、歌詞では重い約束よりも、その場の欲望と一時的な関係が中心に置かれている。

サウンドはハウス/ディスコの影響を持ち、軽快なビートとベースラインが曲を牽引する。Sam Smithの声は、ここでは悲劇的なバラードの歌い手ではなく、ダンスフロアの中で欲望を歌う存在として響く。この変化は、彼らの表現の幅を大きく広げた。

歌詞では、永遠を誓う必要はなく、今夜だけの親密さでいいという感覚が描かれる。これはSam Smithの従来の「深く愛されたい」というテーマとは対照的であり、より身体的で軽やかな愛の形を示す。「Promises」は、『Love Goes』における解放感を象徴するダンス・トラックである。

総評

『Love Goes』は、Sam Smithが失恋バラードのシンガーというイメージを更新し、より広いポップ・フィールドへ踏み出したアルバムである。これまでの作品では、ピアノ、ストリングス、ゴスペル・コーラスを中心に、報われない愛や孤独を壮大なバラードとして描くことが多かった。しかし本作では、その感情がクラブ、R&B、エレクトロポップ、トロピカルなビートへ拡張されている。

本作の重要な点は、悲しみが必ずしも静かなバラードだけで表現されていないことである。「Dance (‘Til You Love Someone Else)」「Dancing with a Stranger」「How Do You Sleep?」「Promises」では、失恋や孤独がビートと結びついている。人は失恋した時、部屋で泣くだけではない。外へ出て、踊り、誰かと出会い、自分を忘れようとし、また傷つく。その現代的な感情の流れが、本作には描かれている。

一方で、Sam Smithの本質であるバラード表現も失われていない。「For the Lover That I Lost」「Forgive Myself」「Love Goes」「To Die For」「Fire on Fire」では、彼らの声が持つ繊細さと深い感情表現がしっかり前面に出ている。特に「Love Goes」は、アルバムのタイトル曲として、愛が終わることの悲しみと、それでも愛が人生の中で流れ続けることを美しく表現している。

『Love Goes』は、アルバムとしてはやや散漫な印象もある。バラード、ダンス・ポップ、R&B、コラボレーション曲、既発シングルが多く並ぶため、初期作のような統一された孤独のムードは薄い。しかし、その散漫さは、Sam Smithが過渡期にいたことの証拠でもある。彼らはここで、一つのイメージに閉じ込められることを拒み、悲しみ、欲望、クラブ、孤独、自己受容を同時に鳴らそうとしている。

歌詞の面では、過去作よりも愛の終わりを受け入れる視点が強い。『In the Lonely Hour』では、愛されない苦しみが中心だった。『The Thrill of It All』では、その苦しみが祈りやゴスペル的な告白へ深まった。『Love Goes』では、愛は終わるものとして描かれる。相手は去り、自分も変わり、時間は戻らない。それでも人は踊り、歌い、また愛を求める。この成熟した諦めが、本作の核である。

Sam Smithのヴォーカルは、本作でも非常に強い存在感を持つ。バラードでは当然ながら、ダンス・ポップでも彼らの声は個性を失わない。高音の美しさ、声の震え、言葉の端に宿る悲しみは、電子的なビートの中でもはっきり聴こえる。これは、Sam Smithがジャンルを広げても、中心にある表現がぶれないことを示している。

また、本作はSam Smithのクィアなポップ・スターとしての自己像の変化とも関係している。初期の作品では、クィアな愛は主に痛みや孤独として表現されることが多かった。しかし『Love Goes』では、欲望、ダンス、身体性、自由もより前に出てくる。悲しみだけでなく、楽しむこと、踊ること、誰かを求めることも表現される。この変化は、彼らのキャリアにおいて重要である。

本作のタイトル『Love Goes』は、非常に象徴的である。愛は去る。愛は進む。愛は流れる。愛は終わっても、完全に消えるわけではない。過去の恋人、失った時間、若かった自分、傷ついた記憶。それらは形を変えて残り続ける。アルバム全体は、その流れを追っている。悲しみから怒りへ、怒りからダンスへ、ダンスから孤独へ、孤独から自己受容へ。愛は固定されたものではなく、常に動いている。

日本のリスナーにとって本作は、Sam Smithのバラードを好む場合にはやや意外な部分もあるが、彼らのポップ・アーティストとしての広がりを知るうえで重要なアルバムである。「Too Good at Goodbyes」や「Stay with Me」のような純粋なバラードだけでなく、「Diamonds」「How Do You Sleep?」「Dancing with a Stranger」「Promises」のような楽曲を通じて、Sam Smithが現代的なポップの文脈でも強い表現力を持つことが分かる。

『Love Goes』は、完璧に統一された名盤ではない。しかし、Sam Smithが失恋の歌い手から、より自由で多面的なポップ・アーティストへ変わろうとした過程を記録した重要作である。泣くこと、踊ること、許すこと、忘れられないこと、もう一度愛を求めること。そのすべてを含めて、愛は進んでいく。本作は、その痛みと解放を同時に描いたアルバムである。

おすすめアルバム

1. In the Lonely Hour by Sam Smith

Sam Smithのデビュー作であり、「Stay with Me」「I’m Not the Only One」「Lay Me Down」などを収録した代表作である。報われない愛、孤独、片思いを中心にしたバラード集であり、『Love Goes』の出発点を理解するうえで欠かせない。

2. The Thrill of It All by Sam Smith

2作目にあたる作品で、ゴスペル、ソウル、バラードの重厚さをさらに深めたアルバムである。「Too Good at Goodbyes」「Pray」「HIM」などを通じて、愛、信仰、自己認識を深く掘り下げている。『Love Goes』の前段階として重要である。

3. Dua Lipa by Dua Lipa

2010年代後半のダンス・ポップ/エレクトロポップを代表するデビュー作であり、失恋や欲望をクラブ向きのビートへ変換する感覚が『Love Goes』と関連する。Sam Smithがダンス・ポップへ接近した文脈を理解するうえで有効な作品である。

4. Future Nostalgia by Dua Lipa

ディスコ、ファンク、ダンス・ポップを現代的に再構成したアルバムであり、2020年前後のポップにおけるクラブ・サウンドの復権を象徴する作品である。『Love Goes』における「Promises」や「Dancing with a Stranger」のダンサブルな側面と比較できる。

5. 25 by Adele

失恋、過去への後悔、成熟したバラード表現を中心にした作品であり、Sam Smithの感情表現と強い関連性を持つ。『Love Goes』のバラード曲にある喪失感や、時間が戻らないことへの悲しみを理解するうえで近い作品である。

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