1. 歌詞の概要
「Long Blond Animal」はGolden Earringが1980年に発表したアルバム『Prisoner of the Night』に収録された楽曲で、アルバム冒頭を飾るナンバーである。タイトルの「ロング・ブロンド・アニマル（長い金髪の獣）」は、セクシーで危険な魅力を持つ女性を比喩的に表現している。
歌詞は、金髪の女性に翻弄される主人公の視点で進行し、彼女の肉体的魅力と野性的な存在感に圧倒される様子を描き出している。理性では抑えられない欲望、コントロールできない関係、そして快楽と危険が入り混じった恋愛の緊張感が核となっている。軽快なロックのリズムにのせて「抗えない衝動」を描いた、80年代的な直截的ロック・ナンバーである。
2. 歌詞のバックグラウンド
Golden Earringは1973年の「Radar Love」、1982年の「Twilight Zone」で世界的な成功を収めているが、その間の1980年にリリースされた『Prisoner of the Night』は、70年代のハードロック的作風を引き継ぎつつも、80年代のよりストレートでコンパクトなロック・サウンドへ移行する過渡期のアルバムだった。
「Long Blond Animal」はその象徴的な楽曲であり、リズム主体の骨太なギター・リフと、Barry Hayのパワフルなヴォーカルによって構築されている。歌詞に深遠な哲学性はなく、むしろ肉体的で衝動的なテーマを前面に出すことで、アリーナ・ロック時代の高揚感と親和性を強めた。
シングルとしてもリリースされ、オランダを中心にヒット。後のライブでも定番曲として演奏され、観客を盛り上げるアッパーなロック・チューンとして愛され続けている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「Long Blond Animal」の一部を抜粋し、英語歌詞と和訳を併記する。
（歌詞引用：Genius）
She’s a long blond animal
彼女は長い金髪の獣
She’s got the style, she’s got the moves
彼女にはスタイルもあるし、動きもある
She drives me wild, she makes me lose
彼女は僕を狂わせ、理性を失わせる
She’s a long blond animal
彼女は金髪の獣
And I just can’t get enough
そして僕はもう抑えきれない
歌詞は非常に直接的で、女性の魅力に翻弄される主人公の視点をそのまま描いている。
4. 歌詞の考察
「Long Blond Animal」は、セクシュアルな魅力と欲望をストレートに表現した楽曲である。女性を「獣」に例えることで、彼女が理性を超えた本能的な存在であることを強調している。主人公にとって彼女は快楽の象徴であり、同時に破滅をもたらすかもしれない「危険な存在」でもある。
このような「抗えない女性像」は、80年代初頭のロックの典型的なモチーフでもある。バンドがプログレッシブな幻想や寓話から離れ、より直接的な欲望や肉体性を歌うようになった流れと重なる。またGolden Earringの場合、この楽曲によって「国際的ロック・バンド」としてのアリーナ対応力を強化し、ライブで観客を即座に熱狂させる武器を手に入れたともいえる。
歌詞の単純さは批判もありうるが、それこそが狙いであり、直情的なリフレインがバンドの演奏力と相まって強烈なインパクトを生んでいる。深遠な解釈を求める曲ではなく、「衝動の爆発」をそのまま体現したナンバーなのだ。
（歌詞引用：Genius）
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Radar Love by Golden Earring
同じくドライヴ感と欲望をテーマにした代表曲。 - Twilight Zone by Golden Earring
緊張感と衝動性を描いた80年代初頭の代表作。 - She’s in Love with Rock ’n’ Roll by Golden Earring
同じ時期のアルバム曲で、女性を題材にした直截的なロック。 - Hot Blooded by Foreigner
セクシュアルな衝動を歌ったアリーナ・ロックの定番。 - Cherry Pie by Warrant
90年代初頭のハードロックにおける「女性＝欲望の象徴」の直球表現。
6. Golden Earringにとっての意義
「Long Blond Animal」は、Golden Earringが70年代のプログレッシブ性を脱ぎ捨て、80年代的なアリーナ・ロックの時代へと移行したことを示す重要な曲である。歌詞はシンプルだが、ライブでの爆発力と観客を巻き込むキャッチーさを兼ね備えており、バンドが新しい時代を生き抜く武器となった。
この曲は「Radar Love」「Twilight Zone」と並ぶ世界的知名度はないものの、Golden Earringのキャリアにおいては「80年代的バンド像」を確立した記念碑的楽曲といえる。今なおライブ映像で聴くと、その豪快さと熱量が強烈に伝わる、骨太のロック・アンセムである。
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