発売日: 1970年11月27日
ジャンル: ロック、フォーク・ロック、ハード・ロック
ザ・キンクスの8枚目のスタジオアルバム『Lola Versus Powerman and the Moneygoround, Part One』は、音楽業界に対する痛烈な風刺と、バンドの新たな音楽的冒険が詰まった作品だ。アルバムタイトルが示す通り、この作品は音楽業界におけるアーティストの苦悩や成功の代償をテーマにしており、商業的成功を追求しながらも、その裏にある問題を皮肉たっぷりに描いている。
1960年代後半から続いたザ・キンクスの商業的低迷を打破したこのアルバムは、代表曲「Lola」の大ヒットを筆頭に、バンドの再起を象徴する重要な作品となった。「Lola」は性別やアイデンティティのテーマを大胆に扱った楽曲で、歌詞の内容とキャッチーなメロディが話題を呼び、世界中で高い評価を得た。
音楽的には、アコースティックとエレクトリックの融合が特徴的で、フォーク・ロック、ハード・ロック、カントリー調の要素がバランスよく組み込まれている。レイ・デイヴィスの詩的で風刺的な作詞と、デイヴ・デイヴィスのギターがアルバム全体を通して強い存在感を放っている。
以下、各曲の詳細を解説する。
1. The Contenders
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、野心と自己表現の探求をテーマにしている。カントリー調のアコースティックギターから始まり、徐々にロックのダイナミズムを増していく構成が秀逸。バンドの決意を感じさせる力強いナンバーだ。
2. Strangers
デイヴ・デイヴィスがリードボーカルを担当するこの曲は、友情と孤独をテーマにした感動的なバラード。メロディはシンプルながらも美しく、歌詞には深い哲学的なメッセージが込められている。
3. Denmark Street
音楽出版業界を皮肉った楽曲。軽快なピアノとユーモア溢れる歌詞が特徴で、シアトリカルな要素が際立つ一曲。業界の裏事情を軽妙に描写している。
4. Get Back in Line
音楽業界の不条理とアーティストの不安を描いたこの曲は、メランコリックなメロディとレイ・デイヴィスの感情的なボーカルが印象的。控えめな楽器編成が歌詞の内容を引き立てている。
5. Lola
アルバムを代表する大ヒット曲で、性別やアイデンティティをテーマにした大胆な内容が話題を呼んだ。アコースティックギターとエレクトリックサウンドが調和したキャッチーなメロディが魅力で、ザ・キンクスのキャリアを象徴する楽曲の一つ。
6. Top of the Pops
音楽業界での成功の虚しさをテーマにした楽曲。リズミカルなギターとダイナミックなアレンジが特徴で、風刺的な歌詞が痛烈なメッセージを伝えている。
7. The Moneygoround
アルバムのテーマを凝縮した曲で、業界内の金銭的な問題を皮肉たっぷりに描写している。シンプルなアコースティックアレンジが歌詞を際立たせている。
8. This Time Tomorrow
自由への憧れと自己解放をテーマにしたこの曲は、広がりのあるメロディとノスタルジックな雰囲気が魅力的。アコースティックギターとストリングスのアレンジが心地よい一曲。
9. A Long Way from Home
シンプルなピアノバラードで、過去と現在の自己のギャップを描いた感傷的な楽曲。レイ・デイヴィスの繊細な歌声が心に響く。
10. Rats
デイヴ・デイヴィスがリードボーカルを務めるハードロック調の楽曲。力強いギターリフと荒々しいエネルギーが特徴で、アルバムの中で最も攻撃的なトラック。
11. Apeman
軽快なカリプソ調のリズムが印象的な楽曲で、都会生活から自然への回帰をテーマにしている。キャッチーで親しみやすいメロディと皮肉の効いた歌詞が魅力。
12. Powerman
音楽業界の権力者を揶揄したこの曲は、激しいギターリフとエネルギッシュなアレンジが特徴的。歌詞には反抗的なスピリットが込められている。
13. Got to Be Free
アルバムの締めくくりを飾る楽曲で、自由と自己表現をテーマにしたポジティブな内容が印象的。軽快なリズムとシンプルなメッセージが、アルバム全体を力強くまとめている。
アルバム総評
『Lola Versus Powerman and the Moneygoround, Part One』は、ザ・キンクスが音楽業界への批判を通じてアーティストとしての自由を表現した作品である。時代を超えて聴き継がれる「Lola」を筆頭に、風刺と感情が巧みに融合した楽曲群が揃っている。音楽的にも多彩で、ロック、フォーク、カリプソといったジャンルを自由に行き来するサウンドは、聴く者を飽きさせない。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Arthur (Or the Decline and Fall of the British Empire) by The Kinks
アルバム全体でテーマ性を持つストーリーテリング的な作品。『Lola』の前作であり、ザ・キンクスの円熟味が感じられる。
Tommy by The Who
コンセプトアルバムの名作で、音楽業界の内面を描くストーリー性が共通点として挙げられる。
Tapestry by Carole King
感情豊かな歌詞と多彩なサウンドが特徴で、『Lola』のファンに響く要素が多い。
Exile on Main St. by The Rolling Stones
多様なジャンルを取り入れたロックの名盤。ザ・キンクスの音楽的冒険を楽しめた人におすすめ。
Band on the Run by Paul McCartney & Wings
ポップとロックの融合が美しい作品で、自由や冒険心を感じられる点が『Lola』に通じる。
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