発売日: 2023年3月3日
ジャンル: ライブアルバム、オルタナティブR&B、ポップ、エレクトロポップ
概要
『Live at SoFi Stadium』は、The Weekndが2022年のワールドツアーの一環として行ったロサンゼルス公演を記録したライブ・アルバムであり、キャリア全体を総括する壮大なライブ体験をそのままパッケージ化した作品である。
収録はカリフォルニア州イングルウッドにあるSoFiスタジアムで行われ、同会場にて2夜連続で実施された公演のうちの一夜が音源化されている。映像版はHBO Maxでも配信され話題を呼んだ。
セットリストは、初期三部作から『After Hours』『Dawn FM』に至るまでの代表曲を網羅しており、過去と現在を繋ぐ構成が強く意識されている。
さらに、アリーナサイズに最適化された壮大なアレンジ、観客とのコール＆レスポンス、そして一貫した世界観が融合し、スタジオ録音とは異なる新たな魅力が浮かび上がる。
The Weekndの歌唱力と演出力が最大限に発揮された、まさに“ライブという形のベストアルバム”と呼ぶにふさわしい一作である。
全曲レビュー（抜粋）
1. Alone Again
静寂の中に響くイントロが、開演の高揚と孤独の狭間を演出する。
観客のざわめきとともに、The Weekndの歌声が夜の儀式の幕開けを告げる。
3. Sacrifice
『Dawn FM』からの代表曲。ライブではシンセがより鋭利に響き、観客のクラップと一体化することでスタジオ版以上の熱量が生まれる。
5. How Do I Make You Love Me?
ダンサブルなリズムが強調され、会場全体がクラブと化す瞬間。
The Weekndのボーカルは冷静でありながらも、観衆の熱狂を巧みに操っている。
9. Can’t Feel My Face
初期のヒット曲も、2020年代仕様のアレンジに刷新されており、ライブならではの再発見がある。
サビでの大合唱は、まさにThe Weekndがポップスターとして世界を掌握していることの証左だ。
13. Starboy
イントロの重低音が鳴り響いた瞬間、会場のボルテージは最高潮へ。
照明演出と同期し、まるで宇宙空間を漂うような没入感が生まれる。
16. Wicked Games
ミックステープ時代からの名曲も、観客の熱狂と共に昇華される。
暗闇と快楽、献身と破壊といった彼の世界観が、ライブという形式を通じてさらに深く浸透していく。
20. Blinding Lights
スタジアム全体が一体となって踊り出す圧巻の瞬間。
もはやポップ・アンセムと化したこの楽曲は、The Weekndの物語のひとつの到達点を象徴している。
総評
『Live at SoFi Stadium』は、The Weekndのキャリア10年以上におよぶ進化と拡張を、ライブという形で集約したドキュメントである。
単なるベスト・セレクションではなく、それぞれの楽曲が新たな文脈で再構築されており、ライブ演出、観客とのインタラクション、アリーナ・スケールのアレンジによって、別次元の魅力を引き出している。
また、MCや間奏に余計な要素がなく、音楽そのものが語りかける構成となっているのも特徴であり、まるで一夜限りのオペラのような統一感がある。
The Weekndのヴォーカルは、スタジオ録音以上に人間味を帯び、揺らぎや感情がリアルタイムで伝わる。
だからこそ、観客の歓声や拍手が生の反応として呼応し、音楽と人間が“その瞬間”を共有していることの奇跡が、強く刻まれるのだ。
ポップミュージックがアートにも宗教にもなりうる現代において、The Weekndはその媒介者であり、このアルバムはその証明でもある。
おすすめアルバム（5枚）
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After Hours / The Weeknd
ライブのハイライトの多くを占める作品。ダークな世界観とメロドラマ的展開が、ライブでも効果的に再現されている。 -
Dawn FM / The Weeknd
最新のサウンド志向を示す意欲作。『Live at SoFi Stadium』における構成美の源流。 -
Trilogy / The Weeknd
初期の音楽性を総括した3作。ライブでは『Wicked Games』などが新たな命を得て登場している。 -
Coachella 2022 Performance / The Weeknd x Swedish House Mafia
同じく大規模フェスでのライブ音源。The Weekndのライブ力とスケール感を別角度から体感できる。 -
Homecoming: The Live Album / Beyoncé
ライブパフォーマンスの精度とコンセプトの構築力という点で、比較対象にふさわしい傑作ライブ・アルバム。
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